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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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第178話、船の修理状況


 わざと敵を逃がすことで、アジトの位置を突き止める。


 害虫は巣ごと退治する、とはよく言ったものだ。


 ――盗賊を害虫とか、どこかの悪者みたいな言い回しで嫌だな……。


 ともあれ、逃げた盗賊がお仲間のもとにご案内し、そこをソウヤたちは襲撃した。


『お前らが今まで散々やってきたことだ! お返しされる気分はどうだ?』


 因果応報である。


 月下の盗賊団が最大勢力だっただけあって、バッサン街道北部の盗賊は小規模なものだった。


 捕虜にした盗賊の話では、この北側にも月下の盗賊団が勢力を伸ばしていたらしく、有力な連中は、そこに取り込まれて、取るに足らない雑魚しか残っていなかったようだ。


 釣り上げて拠点を割り出して殲滅という作戦があまりに上手くいってしまい、ソウヤは少々困惑気味だった。


 こんな雑魚ばかりなら、ソウヤたちでなくても鎮圧するのも難しくなかったのではないか? 


 盗賊のアジトに踏み込めば、蓄え的なものはほとんどなく、かなりカツカツの生活を送っていた。護衛が複数いる隊商には手を出さず、旅人や単独の商人ばかりを狙っていたらしい。


 だから、護衛がひとりで単独馬車である囮のソウヤたちの前に、盗賊はホイホイ釣られて出てきたわけだ。


 月下の盗賊団という大規模盗賊のせいで過大評価されているが、北側の盗賊連中は、きちんと護衛さえつけば守れたのだ。


 それから数日かけて、盗賊の釣り出しと制圧を繰り返した結果、街道北部から盗賊の姿は消えた。


 タイミングが合わなくて、まだ近くに潜伏している盗賊団があるのではないか。だが、捕虜連中の証言によると、ソウヤたちはあらかた狩り尽くしてしまったようだった。


 バッサン男爵やバッサンの町ギルドから感謝と共に報酬をいただいた。


 またそのうち、食い扶持に困った連中が盗賊化したり、金になる遺跡発掘品を狙った奴らがやってくるだろうが、それはそれ、である。



  ・  ・  ・



 商業ギルドでは、浮遊バイクが順調に進んでいた。


 量産に向けての試作品が完成。ギルドのほうで調整することになったが、試乗希望者が殺到しているらしい。……皆、バイクに乗りたいようだ。


 ジンによる第一段階の指導が終わったので、ソウヤはそろそろ、ドワーフ集落への移動の頃合いかと判断した。


 ライヤーからは、早く飛空艇の機械部分の修理がしたいと小言をもらっていた。


 なおその飛空艇は、かなり綺麗になっていた。フィーアが清掃を進め、商業ギルドから木材を調達して、デッキや船体の腐った部分を新品と張り替えたのだ。


 テキパキ清掃をこなし、料理や洗濯もできる。無言で黙々と仕事する様は、ファンタジーや創作にありがちな、スーパーメイドを連想させた。機械人形だけあって、少女ながら重機並みのパワーで力仕事も平然とこなす。


「凄えだろ?」


 何故か、ライヤーが自慢げだった。凄いのは認めるソウヤである。


「……フィーアにはメイド服が似合いそうだ」

「君の趣味かね?」


 そう言ったのはジンだった。見た目はかなり、それらしくなってきた飛空艇を見上げる。


「悪くない」

「ジイさん、それは船のほうか? フィーアのメイド服のことか?」

「ミストやソフィアには着せないのか、メイド服は?」

「そっちかよ!」

「で、どうなんだ、ソウヤ?」


 メイド服――ジャパニーズ・メイドコスチューム姿のミストやソフィアを想像する。


「見てぇ!」


 正直だった。三十になってしまったが、まともな恋愛話はないソウヤである。いや、ないからこそ、欲望に素直な時もあるのだ。


「それはさておき」


 ジンは話を変えた。


「飛空艇は、やはり中か?」

「外装の修理自体は、パーツの素材が調達できるから可能だが」


 ライヤーは腕を組んだ。


「だが機械のパーツは、やっぱここじゃ無理だわ。あと、肝心の飛行石をどうにかしないとな」


 問題は山積みのようだ。ソウヤは『外装』と聞いて、ふと疑問に思った。


「なあ、外も腐った部分あっただろう?」

「ああ、新品に換えたがな」

「中は大丈夫なのか?」

「いや、だからそれを心配して――」

「機械とか飛行石のことじゃなくて、船ってやつは竜骨とか、人間でいうところの体を支える骨の部分があるだろ? そういうのが腐ってたら、外だけ直して意味がないんじゃないか?」

「そっちか」


 ライヤーは頷いた。


「さすがは古代文明の飛空艇って言うべきか。キールや梁とかは魔法木や魔法金属素材が使われててな。どれもピンシャンしてたし、もちろん腐ってなかったぜ」

「つまり船体強度の面は大丈夫ってことか?」

「そうなるぜ。まるで新品のように……」


 言いかけて、ライヤーが口を閉じた。顎に手を当て、考えるポーズ。


「どうした、ライヤー?」

「……なあ、ジイさん。ひょっとして、あんたが直した?」


 ライヤーの問い。ソウヤも、ジンに視線を向けた。老魔術師は、いつからか顔を逸らしていた。


「まあ、なんだ。ライヤーが来るまで、あの船を診ていたのは私だからね。工事をするにしても、まずは『土台』からやらないといけない」


 真っ先に船体を支える重要部分に手を加えていたジン。ライヤーは口元を笑みの形に歪めた。


「さすがはジイさんだぜ。魔法金属とか魔法木とか、知識はあってもどう手をつけていいかわからなかったからな。魔法使いの先生がいてくれて助かったぜ」

「てっきり、怒ると思っていた」

「何でだ?」

「君が、飛空艇に入れ込んでいるからね。人の仕事は気分がよくないかな、と思って」

「ははっ、ジイさん、おれは職人じゃない。早くこいつを飛ばして冒険したいだけなんだよ。それさえできれば、誰が修理したかは関係ない。もちろん以後のメンテは愛情を持ってやるがな!」


 ライヤーは快活だった。


「というか、ドンドン手伝ってくれよ。人手が足りねえんだ」

「なら、修復したゴーレムを貸そう」


 それって――ソウヤは首を傾げた。


「遺跡から回収したゴーレムのことか? あれ直したのか?」

「ようやくひとつだな。バイクの件がひと段落したから、本格的に直していこうと思ってる」

「凄えな爺さん」


 ソウヤが感心すれば、老魔術師は苦笑した。


「魔法は私の領分だ。それをこなせないようでは、いる意味がないだろう?」

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