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【書籍化】魔王を討伐した豪腕勇者、商人に転職す -アイテムボックスで行商はじめました-  作者: 柊遊馬


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第99話、忍び寄る影?


 冒険者ギルド一階フロアでの爆発は、居合わせた冒険者ら複数人を負傷させた。


 だが幸いなことに、爆発の中心と思われる謎の冒険者以外に死者がでなかった。間近にいたカエデも、間一髪、回避して命は助かった。


 しかし、ポーションなどで治療が必要な怪我を負ってしまったが。


「助かったのはよかった」


 ソウヤは眉をひそめた。


「これは、偶然か?」


 カエデを訪ねてきて、彼女のそばで爆発。あまりに普通とは思えない事態。ソウヤは先ほどガルモーニと、カエデの所属していたというカリュプスという暗殺組織と、それに敵対するウェヌスという暗殺組織が抗争を繰り広げているらしいという話を聞いた。


「明らかに、カエデを狙った自爆攻撃だ」


 ガルモーニがいきり立っている。自分の管轄であるギルド内で爆発など、ギルドマスターである彼が怒りに震えていてもおかしくはない。


「自爆……なのかなぁ」


 ソウヤは半信半疑だった。


「ウェヌスってのは、そういう攻撃をしてくる連中なのか?」

「さあ、俺が知るわけないだろう!」


 ガルモーニは声を荒げた。まずは落ち着け、と言いたい。ここまで感情を露わにするギルド長も珍しい。


「暗殺組織の抗争だとしても、自爆以外にも手はあるだろう。そもそも、カエデはカリュプスの一員じゃないんだろう? むしろ狙われる理由がわからない」


 ウェヌスは元構成員まで探って仕掛けるような連中だというのか?


「もしかしたら、カエデを狙ったのではなく、その爆発した男が狙われた可能性はないか? カエデは偶然巻き込まれただけかもしれない」

「だとしても、だ」


 ガルモーニは気分を落ち着けようと努力しながら言った。


「その爆発した男は、カエデを訪ねてここに来たんだぞ? まったく無関係ではないだろう」

「確かに」


 だが、暗殺組織の抗争に巻き込まれた、という確たる証拠は今のところない。


「吹っ飛んだ男が、何者かわからないかな?」

「王都ギルドから来た、と言っていたんだったか」


 ガルモーニは、受付嬢の説明を思い出す。


「受付が初めてみる、と言うなら、おそらくこのギルドで知っている奴はいないんじゃないか? まあ、いたとしても名前もわからんし、今となっては顔もわからない」


 お手上げか。ソウヤは難しい顔になる。


「一応、聞くが、暗殺組織以外で、カエデが狙われるような理由とかあるか? 彼女が誰かに恨まれていたとか?」

「他の冒険者とは、あまり積極的に付き合いがなかったからな」


 ガルモーニは首を横に振った。


「人に恨みを買うようなことはなかったとは思う。もちろん、俺も彼女のことを全て把握しているわけじゃない」


 ――それもそうだ。全部把握してたら関係を疑うところだ。たとえば、ストーカーとかな。


「爆発した男は謎。カエデに用があったと言うが、味方だったのか敵だったのかもわからない。が、仮に暗殺組織絡みの巻き添えか、あるいは標的とされているとしたら……また彼女は狙われるか?」

「ただの巻き添えならば手は出してこんが、標的となっているなら、また仕掛けてくるだろうな。何せ、彼女はまだ生きている」

「今回の爆発事件の顛末がどうあれ、可能性があるなら、しばらくカエデは護衛したほうがよくないか?」


 ソウヤの意見に、ガルモーニは頷いた。


「そのつもりだ。俺には彼女の亡き両親との約束がある。カエデを殺させん!」


 こんなギルド長の態度を見ると、ただのギルド構成員というだけでなく、家族ぐるみの付き合いがあるようにも思える。親戚とか家族的な何かだ。


「そこで提案だ。彼女が狙われているのかはっきりさせるためにも、囮を置いて出方を窺うべきだ。それで襲われるようなら黒、何もなければ白だ」

「囮か。その間、本物のカエデは匿わないといけないな」

「心当たりはあるかい?」

「ギルドが何カ所か緊急避難所を用意している。しばらくそこで匿おう」


 隠れ場所があるなら、ガルモーニに任せよう。万が一、隠れ家のひとつもないなら、ソウヤは自身の秘密を一部明かしてでも、アイテムボックスへの避難を提案するところだった。


 それにしても、この爆発事件、いったい何なのだろうか。ソウヤは考えたが結論は出なかった。



  ・  ・  ・



 暗殺組織同士の抗争なんて話を聞いたせいで、ソウヤの気分は晴れなかった。


 爆発事件が、すぐ近くで起きたせいだ。直接関係ないと言えばそれまでだが、実際にあった惨劇は、気を滅入らせるに充分だった。


「……」


 エイブルの町、中央の道を逸れて、視界のよろしくない路地裏へと入る。アイテムボックスハウスは、入ろうと思えばいつでも入れるのだが、人の目のあるところでは入らないようにしている。目撃されると、当然騒ぎになるからだ。


「……」


 視線を感じる。何者かが、ソウヤの後をつけてきている。

 足音はしない。だが気配はある。


 ――これはプロだな。


 ソウヤは尾行者に対して、気づかないふりをしつつ警戒をする。


 ――目的は何だ?


 追いかけられる理由については、さっぱり心当たりがない。冒険者ギルドで聞いた話のおかげで、自分も暗殺組織の抗争に巻き込まれているのでは、と思ったりする。


 どうしたものか。正体を探るべきか、あるいは尾行を巻くか。


 ――追われるほうとしては気になっちまうんだよなぁ。


 何ともきな臭い事件ばかりが続いていて、面白くない。


 ――さあ、誰だ?


 例の暗殺組織絡みか。はたまた別の何かか。


 ソウヤは、すぐにアイテムボックスハウスへ入らず、しばらく尾行者を引っ張ることにした。


 路地裏とはいえ、時々、人が通ったり、休んでいたりする。極力、人の気配がないほうへ移動するのだ。

 そこでふと、気配が感じとれなくなった。こちらが尾行に気づいていることを、相手に悟らせたか? 


 それまで追ってきていた気配が風のように消えてしまった。


 尾行をやめたのか。それとも、仕掛けるためにさらに注意深く気配を消したのかもしれない。


 ソウヤは立ち止まり、油断なく周囲を確認する。だが、まったくそれを確認できなくなった。

 完全に姿を消した。


 ――いったい何だってんだ……?


 ソウヤは念のため、さらに進んで完全に人の気配がない場所まで進んでから、アイテムボックスハウスへと帰還した。

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