方針決定
「ん?最深部に入る通路がないぞ。転移以外で行けないじゃない?」
俺はダンジョン構造を確認している中で気付いた。複雑で中の方が見にくいんだよな。
「うむ。この部屋からの通路を辿っても他の通路に繋がっていないな。スイッチや謎解きなどの条件で通路が出るタイプと見て良かろう」
「それは、めんどくさいでーす。ここが一番近いのでここをぶち抜いて繋げまーす」
本当に適当だな。もうボス前に飛ぶだけでいいんじゃないか。そこで殺すなり交渉するなりで良いだろ。
「敵の種類」
アンドーさんがティナに言う。知りたいということだろうな。
「こちらになりまーす」
紙が出てきた。
俺には字が読めないと思ったら、日本語で出てきた。
気を利かせてくれたのか。
少ないな。10匹か。
「これは十歳時のナベと同程度以上の知能を持つものをピックアップしていまーす」
なんで小さい俺が基準なんだよ。人間の子供と言えよ。
「このドラゴンがボスでいいんだな、みんな」
「うむ。他は雑魚にもならんな。この竜も雑魚だがな」
「このドラゴンが野良なら、作戦変更でーす。即で首を落としまーす」
「了解」
野良のドラゴンって何だよ。ペットみたいに飼われているのが前提かよ。
「次にルートの確認でーす。垂直移動箇所は浮遊魔法で対処しまーす。転移は最初だけでーす」
立体図に赤線が走る。関係ない箇所の色が薄くなる。
それでも曲がりくねっていて、これ覚えられないぞ。
「この立体図はナベ用に持っていきまーす。迷子になったら入口に戻って下さーい」
まぁ、それは大丈夫だ。
「俺はカレンちゃんの所で待機してるよ。ここでもいいよ」
三人とも黙って俺を見つめる。
「情けないぞ、ナベ。カレンの仇を取りたくないのか?」
カレン、無事じゃん。仇も何もないぞ。
「死ぬぞ、俺。犬や団子虫も倒せない俺がいきなりドラゴンの目の前に立つんだぞ」
「ふむ、それも確かだな」
だろ。俺は遠くから皆を応援してるぞ。
「いい考えがありまーす。相手にも希望を与えたいと思いまーす。私たちの内誰かが死んだら敗けを認めると提案することを提案しまーす」
ん?提案が二回出てきて分かりにくかったぞ。
「なるほど、絶望の中に希望を与え、更に絶望に落とすわけか。さすがだ、ティナ。天性のセンスだな」
「採用」
「どういうことだ?」
「ナベの死が敵方の希望になりまーす」
つまり、付いてこいってことか。マジか。
たぶん、拒否権なし。
「守れよ、絶対に俺を守れよ。痛いのも嫌だぞ」
「大丈夫でーす」
その口調で言われても不安が高まるんだが。本当に守れよ。不幸な人間を更に増やすなよ。




