巫女長との雑談
メリナと言われていた巫女さんが続いて喋る。
「私からもお願いします。それが倉庫に御座いましたら、スードワット様もご安心されます。なければ、燃やすようにとも伝えられているのです」
メリナさんが言い終えてから、ちらっと俺たちを見る巫女長さん。
何を?何を燃やすの?もしかして、俺たち?口調と合わない、過激な事をおっしゃることだ。
ちょっと背筋が冷えちゃったよ。
「分かった。なるべく焼かれないように探すとしよう」
ダンが巫女長に答える。
その返答だと『犯人は俺だ』と言ってるのと同じだけどな。
お互いにもう分かった状況で話をしているのだとは思うが、もう少し誤魔化そうぜ。
「はい、よろしくお願いします。本当、スードワット様もご自分で探されたらいいのに。お忙しいのね」
ほんとに茶目っ気のある言い方だ。
聖竜を信仰しているが心酔はしていない、そんな感じかな。
「それでは、行きましょうか」
簡単にそう言うが、探している大切な物が無ければ焼き殺されるんだぞ。俺達が無実で無力な一般市民だったら、死刑宣告に近いお言葉を簡単に口に出すなよ。それとも、何か俺たちが盗んだという確信があるのか。
メリナさんが巫女長に一礼してから歩き始めた。それに続く俺たち。
池の方はまだ水面が割れていた。それを他の参観者達が地面に伏して敬っているのが見える。
巫女長さん、まだやっていたのね。
俺は巫女長さんに別れを伝えるために立ち止まる。カレンちゃんも釣られて俺の横で止まった。
「凄いですね、その魔法。竜の尾の一閃、そのものの威力ですよ。なかなかお目に掛かれない威力でした。それでは、掃除が終わった後にお会いできればと思います」
街中で魔法禁止なことは言及しなかった。この人、支配階級側の人なんだしな。
巫女長さん、ちょっと間を開けてから答える。
「あら?さっきの魔法の名前を聞いたことあるの?」
竜の何たらの事か?さっき自分で唱えてただろ。
って言いたかったが偉い人だからな。ちょっと控えてしまう。
ダンとかティナなんかだと偉いはずなのにそれを感じないから簡単に言えるのにな。
「今までに聞いたことはないですよ」
「あら、じゃぁ、今のが初めてなのね」
巫女長の言葉の真意が分からない。
ただ、ちょっと気になることを俺が言ってしまったようだ。
困ったぞ。どうリアクションすればいいんだ。
「ナベ、行こうよ。みんな、先に行ってるよ。置いてかれちゃうよ」
カレンちゃんに救われた。これ幸いと、この場を去ろう。
巫女長にカレンちゃんが手を振ってから、俺の服を引っ張る。
しかし、結構な力だな。俺にその気がなくとも、無理やり連れて行かれたな。こんな小さい体にどこにそんな力が隠されているんだ。
倉庫に向かう皆に追い付くため、少し早歩きで巫女長の元を去った。
しばらくしたら、後ろでザッパーンと池の水が元に戻る音がして、少し驚いた。




