新しい依頼
俺は目を潤ませて笑っているローリィに言う。
「ティナの言う通りかな。俺も慣れないといけないしな。次のお薦めはどの依頼書なんだ、ローリィ?」
「ローリィさんです」
この状況でもそう言えるのか。外だけでなく街の中にも他のギルドがあるだろうと予想してるんだぜ。まぁ、いいか。
「ローリィさん、よろしく教えて」
ローリィは依頼書の貼ってある壁に向かう。そこから1枚の紙を持ってきた。
「これですね。竜神殿の倉庫のお掃除」
それ、本当のお掃除なんじゃないのか。
「なんで、お薦めなの?」
「昨日依頼が着たのに期限が明日までなんです。助けて下さい」
お薦めというか、押し付けか。
「他の冒険者に頼んだら?っていうか、昨日の段階で誰かに頼んでおかなかったのか?」
「うー、うちはギリギリの人員なんです。登録者は他のギルドの仕事しちゃうし、新しい人は入ってこないし。このままじゃ、受付要らないってリストラされちゃうんです」
無茶な依頼を引き受けてしまったんだな。その辺の管理はどうなっているのだろう。
「今の状態だと、ここのギルド自体が潰れるんじゃないのか?」
「このギルドは潰れないです。キックバックあるし、街中の仕事を取って来て、外のギルドに回せば、中抜き出来るし。でも、それって受付嬢要らないんです。私、営業にされちゃう。枕させられちゃいますぅ」
枕営業前提かよ。どんな熾烈なノルマがあるんだよ。
「今でも受付要らないんじゃないか?」
「なっ!思っていても言ってはダメですよ。みんな、薄々気付いているんですから」
薄々っていうか、あれだけ業務時間中に熟睡していれば皆思うだろ。
「ということで、依頼を受け付けました」
あっ!嘆きながら、手は動いていた。俺たちのカードに何か情報を入れやがった。
「期限は明日までです。過ぎたら肉体的制裁です。とりあえず、生意気なあなたは、一日中、私の椅子にしてあげます」
俺は絶対に嫌だが、人によっちゃ、ご褒美みたいな罰だな。
「ねぇ、カレンは?」
「えっ、あなた?えーと、雑巾掛けです。そこのテーブルを雑巾掛けの刑です。子供には大変なお仕事です」
俺との落差が凄いな。
「こちらが詳細ですよ。依頼完了したら、向こうの担当者から『任務完了。問題無し』っていう書類を貰って下さいね。竜神殿ですから、粗相のないようにお願いします。特に小生意気なお前な」
指で差されて俺が注意された。話が長くなりそうなので無視だ。
ローリィから紙っぺらを手渡された後、じいさんがまた馬車を表に付けたので俺たちは宿屋に戻った。




