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他の冒険者ギルド

 笑顔で固まるローリィの前でカレンちゃんが口を開く。


「カレン知ってるよ。さっき門に入る広場より手前の道にいっぱい冒険者ギルド見えたよ。宿屋とかもあったよ。人もいっぱいだったよ」


 俺は馬車の外を見てなかったから気付かなかったが、カレンちゃんは電車に載った幼稚園児みたいに席に膝立ちして窓から風景を見ていたからな。


 よくよく考えたらそうだ。

 街中に入るのに一々持物検査されたり、武具を封印されるくらいなら街の外で暮らした方が効率が良い。

 特に冒険者として腕に自身があるなら別に外壁に守ってもらう必要もない。冒険に出たら野宿も多いだろうし。

 なら、ギルドも外にあった方が効率が良いな。

 逆に街中のギルドには寄る必要がないんじゃないか。


 カレンちゃんの言葉に反応してローリィが動きだす。


「うちは由緒正しいんです!街の人たちも近いからいっぱい依頼をくれるんですよ。外のギルドなんて、暴れん坊しかいないんですっ!職員もぼったくりしかいないんですよ!」


 ぼったくりはお前もだろうけどな。


「だいたい依頼はほぼ共通ですよ。9割方、草取るか何かを運ぶか、ですよ。どこでも一緒です!」


「モンスター退治は?」


「この街の鼠退治など、どうでしょうか?」


 それ、本当の鼠なんじゃないか。本職の鼠取りとか笛吹に頼めよ。



「もう登録しましたからね。登録しましたもん。他のギルドの仕事しても、うちにいくらかキックバック入りますもんね。はい、残念。貴方達は、もうこのギルドの一員です。二重登録はご法度ですからね。よーく覚えておいて下さいね」


 すげー早口で言う。


「まぁ、いいよ。いつまでもシャールにいるとも限らないしな」


 俺の言葉にローリィが直ぐ様反応する。


「どういうことですか!?もっと溜まった依頼を処理して欲しいんです!壁の外の連中にバカにされるのは嫌なんですっ!ほら、これ、この依頼なんてどうでふか!?」


どうでふか、って。慌てすぎだろ。ローリィが奥の棚から書きかけの依頼書を見せる。


「ほら、薬草5種を取ってくる簡単な奴ですよ。ナベさん一人でも出来ますよ。ご自慢のナイフでズバンズバン刈っていいんですよ」


 そんなナイフ使いは理想じゃないし、それ、少し擬音がおかしくないか。そもそもナイフ使いじゃない。


 やり取りに飽きたのかティナが後ろから声を掛ける。


「ナベ、ここでいいんじゃないの?ギルドを変える必要はないわ。カレンちゃんが慣れるには調度いいわよ」


「貴族様ぁ、私はその寛大なお胸に感謝致しますぅ」


「胸は関係ないでしょ」


 ローリィは慎ましいお胸だから、どうしても気になるのだよ、ティナよ。

 しかし、まぁ、俺たちの宿は壁の中だから他のギルドに行くのも手間だ。あの宿屋はベッドが良くて寝やすいし。

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