石の報酬
受付で石の分の報酬も貰う。
銀貨3枚だ。ギルド報酬は基本銅貨ってダンが精霊から聞いていたから、特別に美味しい仕事っていうローリィの言葉は本当だったんだな。
採掘場で石代の相場が銀貨一枚ってガインじいさんが言ってたから、普通に依頼をこなしたら差引き2枚の儲けか。
しかし、ここまでの整理だけでも伝聞だらけで、この世界の情報が足りなさすぎるのを実感するな。
で、確か、銀貨1枚が2万円だから4万円。キラムまで往復4日だから、仮にアンドーさん一人でしたなら一日一万円になるのか。
収納して運ぶだけなんだから良い仕事だな。
ん?パンドー草は銅貨156枚で、1枚200~300円位だからこっちも同じくらいの収入になるのか。
冒険者じゃなくても採集で生計が成り立つんじゃないか。
採集するのは『冒険者の独占権です』とかあるのかな。
「ありがとうございました。スーナヤ石運搬は銀貨でのお仕事になります。では、今回のポイントがパンドー草が156ポイント、石が1200ポイントです」
石、凄いな。石運び職人になっても良い気がするぞ。収納魔法前提だけど。
「ポイントの配分はどうされますか?」
「均等に割ってくれ」
カレンちゃんに経験を積ませるのが目的だ。
ただ単にランクを上げるくらいなら、最初からそういったランクを取りやすい仕事を受けている。正直、今回はカレンちゃんの練習にはならなかったがな。
ローリィは俺の返事を聞いてから皆のカードを回収して、カウンターの脇にあった箱の上に順番に載せる。その前に、何かが書いてある金属板を箱の横にある穴に挿し入れていた。
「何してるの?」
「依頼達成内容の登録です」
ICカードみたいだな。
街への入門もこれを使えよ。治安上の理由で、一々、人の顔を見る必要があるのか。
「どこの街のギルドでも共通ですから、これを最初に見せたらどんな経歴か分かるんですよ」
ローリィはそう言いながらカードを俺の目の前に突き付ける。
近くて邪魔だ。俺は手で払い除けた。
「ちなみに不正はできませんからね。すごく難しい術式で守られてるんですよ。通報されちゃいますから絶対に何かしようと思ってはダメです」
そうなのか。
でも、俺の後ろに控える神様連中なら簡単に書き換えると思うぞ。
しかし、これ、冒険者の数だけあるのにそんなに作れる奴がいるんだな。魔道具だとしても凄い労力だぞ。神様レベルの技術かもしれないな。
いや、後ろで暇そうにしてる三人はもっと凄いのか。
ここで、ローリィはカウンター下から紙を出して喋る。
「一度に受けられる依頼は5件までです。でも、受けてなくても依頼を見て手持ちの中から出すのはOKですので、他の依頼も覚えておいて損はないはずです。依頼には期限があるものがあります。期限を越えると罰則があります。ランクが落ちたり、冒険者として登録抹消もあり得ますのでご注意ください。なお、ギルドの信用にも関わるので、期限越えした奴は肉体的制裁を許す。2回越えた奴は他のシャールのギルドに追い出せ。読むなよ。……あっ、まただ。ここに書かないでよ」
いや、読む前に内容を確認しとけよ。しかし、気になるワードがあったな。
「シャールに他にも冒険者ギルドがあるのか?」
俺の何気無い質問にローリィは笑顔で返す。
何も返答はない。
これ、誤魔化すやつだな。前もギルドの中は人気が無かったし、今日も俺たちしかいないし。
「ここ、もしかして流行ってないギルド?」
やっぱりローリィは黙って笑顔だ。
少し顔に汗が浮き出てるような気もする。




