依頼の達成報告
俺たちはギルドの中に入っている。
御者のじいさんは馬車で待機だ。馬の暴走と盗難防止、それから邪魔になった時にすぐに動かせるようにらしい。
受付のローリィは、また低い台に顔を付けて、ぐっすり寝ていた。最初にここに来た時と同じだ。仕事しろよ。
埃を落とすとか、やることあるだろ。いくら暇でも日中に堂々と業務時間中に寝るなよ。
俺とダンがまた、その気持ち良さそうに寝息も立てているローリィの前に座る。
「すまないが、起きてくれないか」
ダンが少し大きめに声を掛ける。
そして、体をビクッとさせてから顔を上げる受付。
「いらっしゃいませ。あっ、お帰りなさい」
何事もなく笑顔で言い放つ根性が、逆に晴れ晴れとしてるな。
「依頼の物はどうですか?」
「あぁ、馬車に載せているよ」
「では、確認させて貰いますね。依頼の札を下さい」
ダンが背負い鞄から札を出す。
それを受け取って、ローリィが札に書いてある依頼内容を確認する。
「パンドー草の常駐依頼ですね。こんなの失敗する奴は人間として失格ですよね。で、草はどこに?」
もし失敗していたら大変な雰囲気になる言葉を簡単に言うんじゃない。
俺たちは馬車の外に案内する。こんもり山になった草がよく見える。盗賊の頭の臭いが移ったりしてないだろうな。あいつ、脱糞しやがったからな。
「屋根から下ろした方がいいかな?」
「……この量はアホですか?もう冒険者というより専門業者みたいになってるじゃないですか」
「いや、まあ、量の指定はなかったし。あと、これも」
行商人から貰った瓶入りのパンドー草の粉末をダンから受け取り、ローリィに見せる。
それを見るなり、彼女は言う。
「アホでした。加工品を作るために原料を仕入れたいのに、その加工品を持ってくるなんて意味ないでしょうが。それ、そこの店で売ってますよ」
ローリィは数件先の雑貨屋を指差す。
そうだよな。俺も貰った時にそう思ったんだよ。危惧した通りの反応だ。
「とはいえ、依頼の中で草の状態に限るとは書いてないんで良しとします。今回だけですよ。でも、常識で考えてください。次はダメですよ」
「おい、ローリィ。裏の倉庫に運んでくで」
ローリィの返事を待たずに御者のじいさんが馬車を動かした。
俺たちはローリィに促されてギルド内に戻る。
溜め息を付きながらローリィはカウンター向こうの自分の席に付く。見えなかったが、動作的には偉そうに足を組んだようだ。
「貴族様ってのは遠慮しないんですね。それが貴族様の貴族様たる所以ですか」
それ、人を選んで喋らないと殺されるぞ。って、ローリィは人を見た上で言葉を選んでるな。
つまり、俺たちは手を出さないと判断してるか。
「草がアホみたいにあるので清算が大変です。報酬は後で渡しますね。ギルド登録を先にします」
それから、ローリィはカウンター下から書類を出す。




