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奴隷について

 カレンちゃんとの会話はまだ続く。だって、まだ街に入れないんだもん。入り口をもっと増やせよと思う。



「ところで、カレンちゃんの村はだいぶ遠いところにあったけど、よく一人で歩いて来れたな」


「お父さんがいなくなってからたくさん歩いたよ。ご飯がないから森に入って草を採ったり……。死ななくて良かったよ」


 お食事好きのカレンちゃんには本当に辛そうだな。


「森の中なら食べ物はあったのか?」


「探すの大変だった。あっ、カブトムシの蛹も食べたよ。村の奴隷の子が食べてるの見てたから良かったよ」


 食えんの?食べ物だと認識していたら行けるのか。

 平気な顔でカレンちゃんが続ける。


「ナベ、オスとメスで味が違うの、知ってる?」


 知らない。そんな知識を使うこともないぞ。


「メスの方が美味しいんだよ」


 マジかよ。もう味覚がススメバチになっているんじゃないだろうな。


「そっか。でも、カレンちゃんに会えて良かったよ」


 すまん、カレンちゃん。山中でのお食事事情はこの辺で勘弁な。昆虫を生食とはさすがに想像してなかったからな。




「うむ、俺もカレンに会えて良かった。最初は喋らないからどうしたものかと思ったものだぞ」


 ダンが横から会話に入ってきてカレンちゃんの頭をガシガシしながら笑う。


「お腹空いてたし、知らないとこだし、奴隷になったばかりだったし、顔も変なのが広がってたり。死にたかったもん。あと、男の人に買われたし……」


 あぁ、奴隷商に連れていかれる最中にダンが買い取ったんだった。


「絶対に夜の召し使い目的だと思ったもん」


 おい!だから、そういった知識と表現は誰が与えたんだよ!


「ナベなんか、変な言い方するから誤解しちゃうし」


 そんな覚えはないぞ。自分では覚えてないけど他人の記憶にははっきりと残っているってヤツだな。相当カレンちゃんに悪いことを言ってしまっていたようだ。ごめんな。

 とりあえず肯定して答えておこう。


「確かにそうだったな。すまない。でも、まぁ、今はカレンちゃんが元気になって良かったよ」


「本当にそう!元気になれた!みんな、ありがとう」


 カレンちゃんは、俺たちの顔を見ながら礼を言う。


「私が最初に買われた時に銀貨三枚だったのはショックだったな。金貨じゃないんだって」


 そうだったな。俺も安過ぎて衝撃的だった。


 ただ、あっちの奴隷希望が大半の行列を見ると、安くなるのも分かる。

 この時間だけでも100人規模で並んでいるんだ。一日にしたら1000人を越えるんじゃないのか。ここの門だけでだぞ。

 そんなに与える仕事もないだろう。どこか別の場所に運ばれていくのかな。


「カレンちゃんは、奴隷がどんな生活なのか知っているのか?」


「村にいたから知ってるよ」


 カレンちゃんのお父さんは奴隷を管理する仕事みたいだったから、俺が考えるよりも奴隷は身近なのかもな。


「日が出てから月に変わるまで働くんだよ。ご飯はちょっとしか貰えなくて、ベッドも無し。……いつの間にかいなくなるし。……ナベ、この話、もう嫌」


 ごめんよ、カレンちゃん。奴隷生活を知った上でシャールに奴隷になりに来たのかなと思って。



 しばらくして俺たちはシャールの門前に近付く。

 衛兵がやって来てキラムで村人にサインして貰った入村の確認書を渡してから、積み荷を確認して貰った。

 鞄の中までは見られなかった。


 あとは、前に来た時と同じ様に武具の封印が行われた。馬車の中でな。

 ただね、収納魔法に諸々を入れたらノーチェックで中に入れちゃうんじゃないかな。無意味な儀式としか思えない。


 

 門を通過したところで前方に付いている小窓が開いて、じいさんの顔が見えた。


「宿屋に戻る前にギルド寄ったらいいんやな」


「そう、お願いするね」


 ティナが答える。


 馬車はきちんとした舗装された石畳の上を走る。昼間だし街道と違って人や他の馬車も多いしで、徐行に近い速度で進んでいく。

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