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カレンちゃんの修業結果

 約束を反故にされそうで焦りがはっきり分かる盗賊を前にティナが言う。


「神に誓えるかしら?」


 お前、さっき『神様とか宗教とか分かんなーい』って言ったばかりだろ。舐めてんのか。


 しかし、盗賊たちは今の状況を改善するために、それどころじゃないらしい。

 有無を言わずに何回も頷いている。

 さっきから堂々としている、立ってる奴も一度だけ深く首を縦に振った。


「誓ったわよね。約束を破る人は嫌いなの。ゆっくり殺してあげるからね」


 もう笑顔で言うなって。本当にするつもりなのは伝わりました。

 ゆっくり殺すっていう抽象的な言い方が、妙に恐怖を覚えるわ。


 俺ははっと気付いて、ティナに小声で訊く。


「……何か呪い的なものを掛けたのか?」


 こいつなら、それくらいし兼ねない。人殺しをトリガーに発動して、命を奪うみたいな。


「どうでしょう?」


 だから、なんで全力で笑顔なんだよ。



 ティナが言い終えてからアンドーさんが続ける。


「どこにいても無駄。こんな感じ」


 指ぱっちんと同時に、盗賊のお頭が現れた。

 椅子にでも座っていた体勢から、そのまま尻を地に打つ。



 突然移動したのに対して、呆気に取られるお頭。


「どこにいても見ているから」


 抑揚のない口調でアンドーさんが盗賊達に告げる。



 盗賊のお頭は一瞬で立ち上がる。そして、カレンちゃんに飛び掛かる。

 それが最適解と思ったんだろうな。判断力と行動力が半端ない。盗賊の頭をしているだけのことはある。

 なんて考えている場合じゃない!


 ヤバッ!

 一番弱いのを人質にして窮地を脱出する気か。

 カレンちゃんの傍にいた御者のじいさんの動き出しが遅いのもあるけど、このお頭さん、なかなか身体能力が高いぞ。

 追い付けない!!



 が、カレンちゃんの木の棒が素早く繰り出されて、お頭をぶっ倒した。


 すげーよ、カレンちゃん。

 腹と胸を一回ずつ鋭く突いてた。胸に軽く、腹に深く一発だ。最後の腹への一撃はなんか棒に回転も加わっていたぞ。

 最初に動きを止めて狙いを定め易くした上で、渾身の攻撃を喰らわせたって感じかな



 体格の良い盗賊のお頭が吹き飛んで身動きしない。対するカレンちゃんも両足を前後にして、棒を突き出したポーズから動いてない。

 両方とも静かだけど、光景としては正反対だな。俺も含めて周りの人間は呆気に取られている。強すぎ。


 カレンちゃんの体重で当たり負けしてないなんて有り得ないぞ。これも魔力の仕業なのか。



「カレン、よーやったわ」


じいさんが倒れた男を縄で縛る。


「毎日、頑張った甲斐があったな」


 ダンも誉めてやっていた。カレンちゃんもまんざらでない様子でにっこり笑っていた。


 正直、俺は感心と共に、カレンちゃんに追い抜かれた焦りみたいなものを感じた。いや、マジで修業みたいなものをしないといけないんじゃないかな。

 カレンちゃんに師匠になってもらってもいいなのか、いや、しかし、俺の年長者としての威厳も大事だ。

 俗っぽく言えば、兄より優れた妹などなんたらだ。


「……信じられない。お頭が、あんな小さいガキに……」


「いや、あいつら、無詠唱で転送だぞ……。宮廷魔術師級の奴らに喧嘩売ってるのを忘れてたのか」


「だから、何もせずに逃げようって言ったんだよ……」



 縛り上げた盗賊のお頭をダンが肩に担いで、馬車の上に置いた。落ちないように更に縄で馬車に固定したようだ。


 残りの四人はどうするのかと見ていたら、一番しっかりと対応していた、あの自爆テロ未遂野郎一人だけ馬車の上に載せた。

 ダンも見張りとして上に乗る。


 後の三人は歩いて、俺たちを獲物と盗賊達が見定めた村、チャールカに来るようにティナが伝えていた。

 こいつらは、かなり怯えていたから素直に来ると踏んだのかな。来なくてもどうでもよいと判断した可能性もある。

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