ウィンウィン
「俺たちはお前らに言われたように草を集めたんだ!……でも、お頭から『あいつらに従うような奴はいらない』って、無理矢理こうされたんだ」
「草を集めたのはお前たちだけなのか?」
俺は尋ねた。
結構な量の草だぞ。それを4人だけで集めて持ってきたのか。一日の余裕があって群生地があれば無理でもないのかな。
カレンちゃんの村の傍にも生えてるとか言ってたしな。
「いや、他にもいたんだけど、ここに置いた後は山に戻ったと思う……」
「お前らは何故一緒に行かなかったんだ?」
俺は続けて質問する。
「……合わなかったんだ、盗賊の生活が。もう辞めたいんだ!」
村では酒飲んだりして楽しそうだったけどな。
ここにいる奴だったかは忘れたけど、ティナに斬りかかった時も下卑た笑いを浮かべていた奴もいた気もするし。
「このまま俺たちと村に行けば奴隷になるんだぞ?」
「あのお頭の下から逃げられるなら奴隷の方がマシなんだよ…」
「ナベ、疑うのはやめてやろう」
ダンはそう言うが、俺は信じていない。簡単に殺そうと出来る人間が負けたくらいで改心するはずがない。
が、俺の意思に関わらず、アンドーさんが指ぱっちんする。盗賊の立っている前に突然黒い円盤みたいなのが何個か現れる。何だ?話の流れからすると地雷か。
まぁ、ダンやアンドーさんが大丈夫と判断しているなら俺が心配する必要もないか。
「火薬は抜いている」
アンドーさんが言う。もう爆発はしないってことだな。
それを聞いて盗賊達はヘナヘナと座り込む。足を動かせば爆発するものだったらしいんで、同じ体勢を強要される極度の緊張から疲労困憊だったのかもしれない。
でもな、盗賊よ、今のがアンドーさんのブラフで、本当は除去されていなかったのなら死んでたぞ。
一人だけ立ったままの奴がいる。そいつは、助けて欲しいと泣き言を言わなかったし、俺と他の奴が問答している時はそっぽを向いていた。
俺たちに投降するのが不本意なんだろうな。
ティナは盗賊たちに水の入った皮袋を投げる。どっから出したのか分からないのはいつも通りだ。
水筒の方が飲みやすいんだけど、皮袋の方がこっちでは一般的なのかな。
座り込んだ盗賊たちがそれを代わる代わる飲む。
奪い取りあいをしないのは、その元気がないのか、それとも俺が思ってるほどガサツでないのか。
「この先にも爆薬を仕掛けてない?」
ティナが笑顔で盗賊に訊く。笑顔過ぎて怖いな。
ほら、ちょうど水を飲んでいた盗賊が噎せてるよ。
「……お頭ならやりかねない」
「そう?なら、この山を降りるまではあなた達に先導して歩いて貰うわね」
「……どういうことだ?」
「ほら、地雷があれば、あなた達が代わりに踏めばいいのよ。あなた達は盗賊を辞めれるし、私たちも爆薬の危険を避けられる。ウィンウィンよね」
絶対、ウィンウィンじゃないよね、それ。
盗賊どころか生きることを辞めかねないし。よくそんな発想が出来るよ、怖いよ、ティナさん。




