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戦闘終了

「さて、再開だ」


 ダンは剣を構える。それから、瞬時にガイコツの前に現れた。


 ダンの剣が突かれる。狙いはガイコツの首だ。

 それをガイコツはバックステップで避ける。

 が、ダンの踏み込みは深い。突きはそのまま首に突き刺さるというところで、黄金色のガイコツの姿が消えた。微かな煌めきを残して。


 ダンは天井を見る。其所にいるのか。


 いた。ガイコツの両手がこちらを向いていて何か黒い塊がその先で大きくなりつつあった。たまに漆黒の稲妻がその表面を近くを走る。



「カカカ。油断したな。肉片も残さずに消え去るが良い」


 言い終えると同時に、その塊がダンに向かって凄い勢いで放たれた。これがガイコツの必殺技なんだろうな。



 が、ダンも既にガイコツの真横に転移していた。

 そして、両手を握り合わせて頭蓋骨に振り落とす。


 ガイコツは見えない速さで落下した。床に当たった音が響く。


 ダンが着地した時には背骨も含めてバラバラになった骨が周辺に広がっていた。

 あれだけの衝撃でも床に穴が開いてないんだ。でっかいクレーターが出来ていると思ったよ。

 ガイコツが放った黒い塊の方は床に着く前に消失していた。チラッと画面に写ったアンドーさんが指ぱっちんしていたから、彼女が消したんだろうな。



「喋るなと言っただろうに。自ら隙を作ってはいかんぞ。死にたいのか?」


 いや、そいつは常に死んでいるタイプの奴だぞ。



 ダンの声が室内に響き終わったところで、散乱した骨は集まって、またガイコツを形成する。

 そして、立ち上がると、遠くに落ちていた剣が浮き上がって手元に戻る。鎧は、うん、割れて転がってるな。



「……信じられぬ。何者だ?」


「知る必要はない」


 ダンはそう口にしながら、ガイコツとの間合いを詰める。

 ガイコツは突きでの迎撃をしない。消えた。



 カメラはアンドーさんの方をズームする。

 ガイコツはそこにいた。王座の横に転移したのだろう。

 アンドーさんの首もとに剣先を突き付けて立っていた。



「興醒めだ。人質のつもりか?」


 ダンは剣を納めてから、ガイコツに言い放つ。



「ダン、もういい?」


「そうだな」


 それを聞いて、アンドーさんは顔をガイコツに遣る。



「成仏させてやっても良い。感謝しろ」


「カカカ、状況を見ろ、魔法使い。お前が死ぬのだぞ」


 ガイコツは剣先を進める。が、アンドーさんはその剣を強く握って制止する。

 見てるだけで、自分の手のひらが痛くなる光景だ。アンドーさんはずいぶん分厚い手のひらと握力をお持ちなんですね。



「最初はスケルトンとしての本能のみ、破壊衝動しかなかった。お前は強かった」


 静かに、しかし、はっきりとアンドーさんは言葉を発する。


「目に入った生物を食べ続けている内に、気付けば、勝手に従属した魔物達が集り自分たちの国が出来ていた。自我はその辺りで現れた。自分が何者なのか、考え始めた」


 アンドーさんが喋るのをガイコツは黙って聞いている。

 もしかしたら、変わらず剣に力を込めてアンドーさんを殺そうとしているのかもしれない。

 アンドーさんは続ける。


「人間は魔物の国を認めず戦争になった。戦争では負けなかった。とはいえ、勝ったところで得るものはない。従属した魔物達も強大なお前の力で魔力を吸われ倒れ、孤独になってくる。お前が強くなればなるほど周りがいなくなる悪循環だ。そんな時に、特に尽くしてくれていた魔物が二体、人間に襲われ傷付き、また、暴走したお前自身に魔力を吸われ死んだ」


 アンドーさんはちょっと悲しそうな物語を紡ぐ。

 でも、ガイコツの表情は変わらない。だから彼の感情は伺い知れない。


「黙れ!」


 ガイコツは剣を動かそうとしたが、肩の骨がきしむだけで終わった。


 そうか、触れてほしくない過去であったか。

 アンドーさん、精神的に追い詰める気じゃないだろうな。

 それは、えげつないぞ。



「この広い宮殿の奥底でお前は佇む。しかし、魔力を吸い取る力はお前の意志を無視して周辺を侵食していく。国があった時にいた仲間は全て死に、残るはお前が作り出した喋れぬ道具の様な魔物のみ。美しかった大地も枯れ果て、仲間との少ない想い出も色褪せ、後悔が残り続ける。お前は自身の死を願ったが死ねない。魔力は尽きることがなく、却って強大になり続けた」


 アンドーさんは淡々と告げていく。


「そんな時、かつて自分の仲間を次々と仕留めていた聖竜スードワットとその騎士が現れる。魔王としてのプライドと本能である闘争心から迎え撃つ。しかし、破れて今に至る。『残念、もう少しで潰えた』、これがお前の封印前に思った事」


「いや、違うな。忌々しいスードワットを殺せなかった憎しみが全てだ」


「それは表層。深いところで、そう思った」



 ダンが横から口を挟む。


「本当に破壊衝動しかない奴はこんな棲み家を作らない。移動を繰り返して全てを破壊する」


 それから、彼は無防備に歩み近付く。


「そもそも、死にたくなった時点で自分の魔力を暴走させれば良かったのだ。周りも破壊するが自分も死ねる。被害もお前が存在し続けるよりマシだっただろう。それを抑えたお前は、骨のある奴だ。辛かっただろ、生き続けるのは。お前が生きないと、お前のために死んだ者が報われないものな」



 ダンよ、アンデッドに対しても死ぬとか生きるとかいう言葉を使って良いのか。いや、意味は分かるし、その方が分かりやすいがな。

 なんか、骨に拘ったセリフもあったが、そっちは無視な。



「……愚者に何が分かる!」


 対して、アンドーさんがガイコツの剣を粉々に握り砕いて言う。


「私が分かる必要はない。お前が分かれば良い」


「もしも、まだその意志や自我を保ちたい、生きたいのであれば、俺の元で働くのも有りだぞ」


 えっ、何を言ってんの。



「フン、何故かお主らには効かぬが、我が存在することで周囲は腐り朽ちて行くのだぞ」


「与えられた力に溺れて気付いてないのか。アンジェがお前に力を存分に与えた。それ以上の魔力は吸収できないぞ。現に今は吸収が止まっている」



 ガイコツはそれを聞いて、折れた剣を落とす。それから、骨の手で全身を確かめるように触る。


「……これは」


「感じている通りだ。で、どうする?成仏するか、しばらくは生きていたいか」


 俺が拘りすぎなんだと思うが、ガイコツに生きたいのかと聞くのはどうなんだろう。もう死んでるだろ。



「……全てを破壊したい」


「あぁ、破壊しても良い。お前に全てを破壊する力はないがな」


「そう。ダンの様に太陽を地に墜としてから言え」


 おい、今、飛んでもないことを聞いたぞ!ダン、本当にそんなことしたのかよ!

 想像を絶する広範囲の地上が死滅するというか、気化とプラズマ化するだろ!!この世界で現在進行形の悲劇じゃないだろうな!!

 恐ろしすぎるぞ。



「……墜とせるのか、太陽を?」


「それはいいだろ。で、どっちだ。選べ」


 どっちでも良くないぞ。怖くて聞けないから、今、画面の中で告白しろ。

 なんで平気な顔なんだよ。もっと苦悩しろよ。


 ダンが答えた後、ガイコツは直立したまま、しばらく動かない。


 それを見詰める、ダンとアンドーさん。

 アンドーさん、椅子に座ったままだけど、床に足が着いてないからプラプラさせている。


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