ダン VS ガイコツ
「カカカカカカ。今なら勝てる!今ならあの忌々しいスードワットに勝てるぞ!」
なんだよ、時間稼ぎとかさっきは言っていたのに結局は負けていたのかよ。
「さて、では、やろうか」
ダンが剣を中段に構える。
「ダン、もう殺して構わない。こいつは封印した奴を本当に知らない」
アンドーさん、どっかのタイミングでガイコツの記憶を読んだな。あれか、背骨を触った所か。
黄金に輝くガイコツが消える。と同時にアンドーさんの背後に現れた。
俺の目では捕らえきれないスピードで剣の突きを繰り出したようだ。ガイコツの体勢でそう判断した。突きで突風みたいなものが発生し、かなり離れた壁を貫通する。アンドーさんは既に転移していた。というか、王座に座っている。何やってんの。
「固いシート。その骨には具合が良いのか」
ちんちくりんなアンドーさんが偉そうにそんな事を言ってもコミカルなだけだな。
ダンが既にガイコツの背後に詰めていた。それに対して、ガイコツも振り向き様に剣を横に振るう。
ダンは勢いのあるそれを片手で持った剣だけで弾き、フリーな左腕でガイコツの胸を重厚そうな鎧ごとアッパー気味に殴る。
そのままガイコツは斜め上に吹き飛ばされ、高い天井に背中から激突してから、床に受け身無しで落下する。
んー、豪快。衝撃で天井の瓦礫とガイコツの骨が周辺に散らばる。
骨は散乱したままで、もう終わったのかもしれないと俺は一瞬思ったが、ダンが骨に話し掛ける。
「うむ、鋭い一撃であったが、もっとこうスピードが欲しいところだな」
すると、床に落ちていた頭蓋骨が横になったまま顎を開く。魔法陣も見えた。
「……化物が。我が地に伏せるなどあり得ぬ。しかも、この過去にない程の迸る魔力を以てしてぞ」
いや、簡単に今十分に伏せられてます。
ガイコツの頭蓋骨が空に浮く。そして、それに遅れて残りの骨が集まり、また、一体のガイコツが出来上がった。更に剣が装着される。
鎧は床に転がったままだ。ダンに殴られた部分が大きく凹んでいるから使えなくなったのか。
「さあ、もう一度だ」
ダンが正面からガイコツに突っ込む。それを中段突きで迎え撃つガイコツ。
その間合いを完全に見切ったダンは寸前で横にスライド、しかし、ガイコツの突きの軌道が変わり、ダンを追う。
ガイコツの腕の骨が外れて追尾してるのか。
速度はさっきの突きよりも格段に速くなっている。
ダンの顔に当たるかというところで、彼はそれを剣で払い上げる。
が、完全には払いきれず、ダンの髪を何本か切り落として、ガイコツの腕は元の主人の場所に戻る。
同時にガイコツからの漆黒の稲妻がダンを襲う。そちらも華麗なステップによるスライドでかわす。
「カカカ、人間共の動きとは違うのだよ。切り刻んでくれよう。良き声で泣き叫ぶのが楽しみだ」
「戦闘中に饒舌になる必要はない」
ダンがまた突っ込む。ガイコツは再度突きで迎撃する。
ダンは突きを突きで押し返す。ガイコツの剣の先端に自分の剣の先端を狂いなくぶつけた、のだと思う。
そして、瞬時に間合いを縮めて左腕で胸を殴る。今度は鎧がないために、ガイコツの肋を直だ。
途中、何回かガイコツから稲光の攻撃を受けていたが、すべて避けもせずに受け止めていた。腐ったりしないのか。
しかし、剣は武器として使わないんだな。ダンの攻撃スタイルなのか、余裕が有りすぎるためなのかは判断できない。
ガイコツは爆弾が炸裂したかのようにバラバラに吹き飛んだ。しかし、先程と同じ様に頭蓋骨を中心にして体を再構築する。
「……我が『腐敗の雷光』を受けて朽ち果てないとは、貴様もアンデッドか?」
「ガハハ、そうか、そうだな!言い当て妙だ。俺もアンデッドか、なかなか面白い」
本当に愉快そうにダンは答える。




