神殿っぽいとこ
アンドーさんの呪文の所を飛ばして映像を再開する。岩の色が薄れ行き、後ろに大理石の柱みたいなのが現れた。たくさん並んでいて神殿っぽい。
「広そうだな」
俺は映像を見ての感想を伝える。
「東京のドームの10個分くらいだったな」
ダンが分かりにくい例えで答えてくれた。その東京の場所には行ったことないし、野球もしないから本当に分からないぞ。
面積はあるんだろうなってしか伝わってこない。
「地面の下なのに明るいんだな」
「あぁ、周囲も纏めて地中から転送したからな。画面の場所はナベがこっちの世界に来たときにいた場所と同じ所だ。そこに移してからアンジェが封印を解いた」
あぁ、あの白い空間か。あそこ、どこまで続くのか分からないくらいの広大な空間だったな。
しかし、簡単に言うが、ドーム10個分のものを転送させるなんて、どうなんだ。神様だからこその魔力だろうな。
そこまでできるなら、少し労力を出して、シャールの街全体、いや、国ごと転送できるんじゃないか。その上でカレンちゃんを普通の人にしてやれば万事解決な気がする。
いや、さすがにやりすぎなのか。やりすぎと判断されるレベルが分からなくなってくる。
映像の中の二人は、ドンドン進んでいく。たまに床が黒ずんでいたり、柱に鋭く抉られた傷があっりする場所があった。
「何か戦闘があったのかな?」
ティナがダンに訊く。
「だろうな。その直後か最中に封印されたようだ」
しばらく歩いて、映像の中のアンドーさんが言う。
「遠い」
それにダンが答える。
「歩くのも良かろうに。今頃、ナベも我慢しているだろうよ」
あぁ、たぶん、下山中だったと思う。カレンちゃんの横を滑り落ちたりしてたよ。頑張ったな、俺。
「ナベはナベだ」
アンドーさんが指ぱっちんしたところで、画面から二人が消えた。歩くのメンドーだから転移しやがったな。
その二人を探すように画面が周囲を映した後、猛スピードでカメラが動いていく。いや、これ、カメラなのか。
神殿の中を縦横無尽に走り、色んなものが画面を流れていく。
何かの爆発で出来た様な巨大な穴や瓦礫、人間や魔物の切断された屍があったようだが、速すぎてよく判別できない。
ただ迷っている感じではない。最初から向かうべきポイントを知っている動きで移動していく。
「アンジェが導いたの、これ?」
ティナがアンドーさんに尋ねる。
「そう。転移先を下僕に伝えさせた」
「そこまで映像に残したかったのか?」
俺はアンドーさんに確認する。
「ダンの奥さん、嫉妬深いの多い」
笑った。なかなか苦労しているようだな、ダン。
「いや、……あ、愛されている証拠だ」
歯切れが悪いですな。
しかし、500人も娶りながら何を言っているんだ、ダンも嫁さんも。本当に嫉妬深かったら事件が起きてるでしょ。
ダンとアンドーさんは、赤い絨毯の敷かれた、広間に立っていた。ちらっとアンドーさんがこっちを見る。カメラが追い付いたか確認したんだな。
「あの時、これを見ていたのか。何もないと思ったのだが」
ダンは呟く。もう拘るなよ。人間が小さいぞ。いや、人間じゃなかった、ごめん。




