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夢の中

夢オチみたいなタイトルですが、そうではないです

 俺は寝ていたはずだ。

 でも、ここはどこだ?


 暗くて何も見えない。どの方向も漆黒の闇。

 足元もどうなっているのか不安で、屈んで床が有ることを手で確認した。


 しっかり床はある。しかも、スベスベして結構気持ちいい。

 気を付けないと転けるかもしれないな。


 そんなことを思いつつ、顔を上げると光が見えた。

 その光は俺に近付く。

 しかし、光にしてはおかしい。周囲を照らさない。

 遠近感もないから、この暗い空間においては、例えるなら、黒画用紙に描いた白い点が動いている様だ。


 何となく恐怖が沸いてくる。

 近づかないで欲しいと心で願う。額には汗も浮かぶ。



 その光の正体は、ティナだった。顔が識別できる距離になって、ようやく分かった。

 こっちの世界に着た時に見た、古代ローマのトーガみたいな服を身に付けている。



 俺はホッとした。そして、悪態を付く。


「何だよ。ビビらすなよ」


 ティナはゆっくり微笑む。でも、無言だ。



「ここはどこなんだ?」


 俺の何度目かの問いでようやく答えてくれた。


「夢の中よ、ナベ」


 夢の中? 俺の夢?


「あっ、明晰夢って意味じゃないわよ。だから、私に手を出したりしたら殺すわ」


 物騒な。マジ怖いっす。

 ティナさん、そんな感じでしたっけ。


「お疲れ様、ナベ。ご褒美に何でも答えてあげる。色々と聞きたいでしょ?」


 何でもいいんですか?


「ティナのおっぱいの形は?」


「あら? 死にたいの? でも、教えてあげる」


 俺の脳みそに直接イメージが湧く。ティナの全裸が。パーフェクトバディです。

 やば、これ、股間がダメ。



「ナベ、ここは私の領域。アンジェの白い空間と同じようなものよ。ナベが目覚めたら、ここでのあなたの記憶は消えるけど、私の記憶には残るの。下手なお願いはしないで欲しいわ。夢とは言っても現実の一部なんだから、お互いによろしくないわよ」


 はい。分かりました。

 よく分からないけど、ティナが真剣に言うなら、そうなんだろう。



「本当に俺が戻るのに二億年掛かるのか?」


「そうよ、そういう疑問に答えてご褒美としたかったの。ナベの性欲を満たすためではないの」


 いや、はっきり言うなよ。俺が凄く辛いだろ。


「二億年掛かるよ」


「なんで?」


「一つは異世界に行くのにエネルギー、魔力を溜める必要があること。もう一つは計算。ほら、ナベの世界は膨らんでいるでしょ? それに太陽系も銀河中心を回り、地球は太陽を回る上に自転している。位置調整と魔法発動のタイミングを完璧にしないと、転送位置がずれてナベが死んじゃうの。あなた、地下1mとかに埋まってもダメでしょ? 人では信じられないくらいの精密さがいるのよ」


 一気に喋ってくれた。

 うん、喋ったのか? 直接脳みそに入ってくるみたい。さっきの裸イメージと同じだな。



「なんで、俺だったんだ?」


「理由は知らない。アンジェが選んだから」


「二億年だと、俺の肉体がもたないんじゃないか?」


「そうかも。頑張りなさい」


 無茶言うなよ。


「嘘よ。時間もね、空間みたいに軸方向があるの。ぐにゃぐにゃと進む時間線と直線の時間線を想像しなさい」


 想像できません。


「ただの平面グラフでいいわ。横軸を時間だとして、曲線で進むより直線で進む方が効率的でしょ? そんな感じで現実世界の時間軸は曲がりくねっているんだけど、別空間で直線に近い時間軸に入ればタイムワープ出来るのよ。逆に時間の進行を遅くすることもできる。ただ、過去には戻れないけど」


 よく理解できません。ただ、何らかの方法で実質的には二億年を待たなくてよいってことだな。

 安心した。



「何故、俺と旅に出ているの?」


「私は暇潰しよ。そう言ったでしょ。他の神様には思惑があるかな」


「思惑?」


「これは私の想像。だから、名前は隠すよ。一人は滅びたがっている。一人は世界を変えたがっている。一人は自分を救おうとしている」


「三人いるじゃん。お前も入ってるのか?」


「あら、実は四人目がいるのよ」


 マジか。


「俺、見たことある?」


「ないわよ。だって、トンでもない量の力を貯めないといけないもの。二億年間、独りで別空間に閉じ籠もって、それを貯める役なの」


 引きこもりの天才だな。


「たまに自我を無くすから、こっちも様子を見に行くの」


 それ、滅びたがっているとか思ってるヤツだろ。閉じ込めているんじゃないだろうな。

 ちゃんと自分の判断でやっているんだろうな。

 

「他には質問ないの?」


「神様って何?」


「魔力が強過ぎて消滅できなくなった存在」


「ティナも人間だった?」


「……そうね」


 間が気になる。


「気にしなくていいわよ」


 もしかして、心を読んでる?


「えぇ、股間がヤバいとか」


 ……無になれ。俺の意識よ。



「やらしいわね。そんな想像もするわけ?」


 勘弁して下さい。

 無になれません。却って、焦ってトンでもなく、露な姿を想像したりします。ティナの。


「人間の性ね。分かったわ。じゃ、また明日ね。ナベは覚えてないでしょうけど」


 はい。さようなら。


「えぇ、明日からも楽しませてね。飽きたら帰らせてあげる」


 悪魔みたいに言うなよ。


「人間を弄んでいるんだから悪魔みたいなものよ。死なない悪魔よ」


 たち悪いな。


「気にしないで。記憶は消すから」


 あぁ、じゃ、またな。

キリがいいので、ここで完結です。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

新しく、本作から見て二年前のメリナを主人公に物語を始めました。

https://book1.adouzi.eu.org/n2335fa/

(私、竜の巫女の見習い! 今日もお仕事頑張りますっ!!)


パラレルワールドにならないよう書いていく予定です。

宜しければ、ブックマークなどをそちらにも入れて頂けると非常に幸甚ですm(__)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] >パラレルワールドにならないよう書いていく予定です。 [気になる点] 何らかの理由で<神は人間が到達する>との理解でメリナさん第三部を読んでも良いのかなと? [一言] 第三部の流れを考えま…
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