臨機応変
今日は忙しいです。
終電で帰れたらいいなぁ( ;∀;)
威風堂々としたスーサが口を開く。
「敗けを認めるがよい、魔族ども。初めて見る神の力、思い知ったであろう」
初めて見たのは神の土下座ですよ。
しかし、なんと高飛車な態度。これは、きっとアンドーさん、激オコですよ。
「ほう、それがそれなり」
アンドーさんが近づく。一歩も後ろに下がらないスーサ。
あのプレッシャーに耐えるとは、さすが神だ、スーサ凄いぞ。
今日が神の死んだ日になるかもしれないが。
「さすが、神ね。あのスーサフォビットを騙っているのではなかったなんて。あそこまで実力に差があるなんて信じれなかったわ。これは、私たちの完敗ね」
ティナが言う。少し説明がくどい気もするが、優しいな。
それに、スーサの顔が気色ばんだのがキモいぞ。
「命までは取らぬ。この地に居つくのも良いが、私の目は誤魔化せぬぞ。よいか、二度目はないことを肝に刻むが良い」
スーサは魔方陣を出して、いそいそとその中心に入っていた。そして、竜に向かい言う。
「スードワットよ。この魔族どもには呪いを掛けた。何があろうとも私の許可した範疇であり、私を召喚する必要はない。分かったか。降臨召喚する必要はない、ここが一番大事だからな」
うまいな、このまま逃げ切る気か。
しかし、スーサさん、なかなか転移して去らないな。魔方陣が消えたのに、まだ言い足りないのか。
スーサは普通の顔で、もう一度魔方陣を出した。
「ではな、スードワットよ、日頃から精進しているようで、我は嬉しいぞ」
魔方陣は消えるがスーサはそのままだ。早く行けよ。
あっ、アンドーさんの仕業か!?ニヤニヤしてやがった!
「最後にスードワットよ、伝えておきたい。絶対に何があっても召喚しないことだ。彼らが何をしようと、それは私の意思である」
スーサ、三度目の魔方陣も消えたため諦めて歩き出した。出口から普通に出る気だな。
「お待ちください、スーサフォビット様。あの獣人は我々のものとしてよろしいのでしょうか?」
少し足早のスーサの後ろからティナが語りかける。
「無論だ。しかしながら、何を企もうと私の管理下にあることを努々忘れることなきよう」
スーサが答え終え、ゆったりと歩いて出口に向かう。
しかし、
『我が主よ、それで良いものだろうか。秩序を守ることの出来ない魔族どもに何をさせようとお考えか。ダマラカナが復活しておるのですぞ』
スーサはそれを聞いてダンに向かって言う。
「ダマラカナはどこにやった?」
「俺の部下にした」
ちょっとスーサが吹き出したのを俺は見逃さない。竜も今のは見えたかな。
「……そうか。一応聞いておこう。何に利用する気だ?」
ダンの子の世話です。おしめとか変えます。きっと哺乳瓶とかも人肌で用意します。
肌ないけど。
「子守り役だ。嫁に探すように言われていた」
ダンさん、お前、嫁に殺されないか。っていうか喧嘩を売っているのか。
子守り役がガイコツで、元大魔王なんて嫌すぎるだろ。
「……」
ほら、スーサも呆れて言葉が出ないぞ。
『主よ、我らを愚弄する彼奴らに罰を』
そのまま無言で去ろうとするスーサに竜が声を掛けた。
「スードワットよ、臨機応変だ。私はお前に感謝しているぞ。久々に心踊った」
確かにアンドーさんに蹴られて嬌声をあげてたな。
『だが、――』
「臨機応変だよ」
スーサは竜の言葉を聞かずに繰り返す、便利な言葉、臨機応変を。
そして、また歩み始めた。
「スードワットだっけ?これでいいかな?」
ティナが強引に場を締めようとした。
『魔族が我と対等に口を聞こうなど千年早いわ』
アンドーさんに何回も切断されていてよく言う。
あれ?アンドーさんがいない。俺は周囲を探す。
いた。スーサの横だ。転移したのか。
何やら喋っているが俺には聞こえない。
二人は並んで戻ってくる。
スーサの顔が少し歪んでいる。
何を言ったんだ、アンドーさん。録でもないことは想像できる。
「スードワットよ、お前の憂慮は理解した。だが、私は彼らを認めている。そこで、お前にも分かるように、この者達へ友好の証を与えたいと思う。そうだな、このナベ先輩をお前の補佐にしよう」
おい!ドラゴンの補佐って何なんだよ。
いや、違う!ここで俺に先輩を付けるな、スーサ!!
『……先輩?』
ほら、ドラゴンもそっちだけに疑問を持ったじゃないか!
『我が主が先輩と呼ぶ?……あり得ない……』
戸惑うドラゴン。当たり前だ。
助けを求めた、昔から知っている男に、襲ってきたヤツの後輩だと言い放たれた訳だからな。訳分からんわな。
『まさか、その人間は神なのか!?我が主以外に神がいると言うのか!』
俺じゃないけど、いっぱいいるらしいぞ。少なくともここに4人いるけどな。
あっ、神だから4柱か。でも、人間っぽいから人でいいよね。
『いや、しかし、我が主に対して魔族どもが知己である様子であった……。もしや、あの魔族どもも神なのか。シルフォルとは何なのだ』
気付いたか、ドラゴンよ。なかなか鋭いぞ。
俺もシルフォルはよく知らんが、アンドーさん曰くの「やらしいオバサン」の情報が強すぎる。
どっち方向でやらしいのかが気になるな。




