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合体経験

「では戻るか」


 ダンが言う。しかし、


「ダンシュリード様、お待ちください」


と、スーサが止める。



「何だ?」


「私にも威厳と申しますか、かの竜との関係が御座います。戻りましたら、それなりの立ち振舞い、言葉遣いとさせて頂いてもよろしいでしょうか」


 さすがにあの竜の前で土下座したり、アンドーさんに蹴られて悦ぶなんて出来んわな。


「それなりだな」


 アンドーさんはニヤリとしながら言った。これはよろしくない兆候だ。

 スーサも身を震わせてるぞ。いや、あれは悦んでる気がする。お前こそ、戻ったら大丈夫だろうな。



「なんで、あいつはアンドーさんに苛められて楽しいんだ?」


 俺はティナに訊く。


「んー、アンジェは魂の証明をした神様なのよ。たくさんの神様が尊敬してるんじゃないのかな」


「魂の証明?」


「そう。ほら、転移とかでさ、移動するじゃない。転移魔法も色々あってね、空間を切り取って移す方法の他に、自分のコピーをどこかに作って元の体を消すっていうのも有るの」


 こわ。それって自殺じゃないのか。


「その時、そのコピー先は自分であって自分でない気がしない?」


「うん。転移の度にクローンが作られている気がする」


「アンジェはそのコピー先の体にも元の魂が入ることを実証したのよ。だから、色んな神様に尊敬されてる」


「どうやって実証したんだよ」


「難しいからまたの機会にね。簡単に言うと、魂が違うと同じ体でもリアクションが少し変わるのを利用したのよ」


 分からないけど、凄いインパクトを神様連中に与えたんだろうな。


「で、なんで、スーサは蹴られて喜んでるんだ」


「さあね。そういう性癖?」


 ティナが答えた後に、スーサがダンに向かってしゃべる。


「僭越ながら、そこの下劣なる従者を魂含めて消滅してもよろしいでしょうか。雄の方で御座います」


 よろしくないだろっ!僭越って意味分かってるのか!


「構わんが、ただな、そいつは従者ではないぞ。どうするつもりだ?」


 いいのかよ!どうするって、明らかに俺が瞬殺されるだろ!!


 不味いぞ、これ。アンドーさんが竜にした首チョンパよりもひどいコースそうじゃん。

 そうだ、このアンドー印の青い筒の出番か。効くのか、神に。



 ダンの返答を貰って、スーサは俺に目を向ける。

 やられるのか。


「ナベに何かした場合、我らが完全に敵となろう。髪一本切ってもな」


 ダンよ、そういうのは止めてくれ。

 落として上げるなんて、別の美少女にしてやれ。俺はティナにして貰いたい。いや、して欲しくないな。


「大変失礼ながら、そこまでの者とは思えませんが」


「うむ、こう伝えれば分かるか。その人間は、人間の身でありながらアンジェと、俗な言い方であれば、経験済みだ。もっと俗に言うと、合体経験有りだ」


「「「なっ」」」


 俺だけでなく、アンドーさん、スーサが驚愕の声を上げる。



 バカか、ダン!思いっきり誤解される言い方しやがって!!

 アンドーさんが俺をこっちの世界に連れてきた時の事を言ってるとは思うが、伝わるはずないだろ!!


 掌を結合させてたのは、確かに合体だわな!!でも、明らかにミスリードを誘うための言葉遣いだろ。どうなるんだ、俺。



 見ろよ、スーサがわなわな震えているだろ。さっきまで悦びで震えていたのが、まだ可愛らしいよ。怒りで震える奴なんて人間でさえ見たことがないのに、ましてや、神ってやばすぎるだろ!


 震える続けるスーサが口を開く。


「……ナベ様とおっしゃったでしょうか、先輩と先生、どちらでお呼びさせていただきましょうか」


 スーサは予想外に下手であった。どういうつもりだ?


「アンジェディール様と結ばれたとは。もうそれだけで、ナベ先輩は現人神でおられる。その上で、ジン生、神が生きると書いて神生ですが、その神生においてナベ先輩は私よりも一歩先を行く先輩で御座います」


 アホだろ、こいつ。

 アンドーさんが憤怒のお顔で御座る中、何を言ってるんだ。


「先輩は止めてくれ。アンドーさんとはそういうのではない」


「アンジェディール様を呼ぶ名まで違うとは、このスーサ感動致しました。私めも早くアンジェディール様と乳繰り合いたいと考えております」


 本人の前ではっきり言いやがった。



 ドゴッ!!


 アンドーさん、スーサの顔面に両足でロケットキックだよ。しかし、それは彼にとってはご褒美なんだよ。



「では、行きましょう。私があのトカゲの側までお連れいたします」


 ひどっ。自分を慕う竜をトカゲ呼ばわりまでしやがった。あくまで謙譲表現であって欲しい。

 顔にアンドーさんの足跡を付けたまま、スーサは何やら呪文を唱える。魔方陣が足元に現れて、俺たちはまた、あの竜の前にいる。

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