竜との会話
血が止まったところで、光に包まれてドラゴンは復活する。
「舐めた口」
アンドーさんがとても冷たく放つ。
すみません、無駄にこちらも緊張します。
『お主は魔王にも匹敵する者だ。我がこの地の守護でなければ早々に陥落しておったであろうな。それで、狙いは何だ?』
そんなに魔王は強いのか、そんな疑問を持ってしまったぞ。
それに、まだ話すのか。
またアンドーさんに首チョンパされるぞ。
「まだ教えられんよ」
ダンが答える。
『あの獣人はどこにやった?我が確認できる領域から消え去った。隠したところで、別の者を獣化させるだけのことであるぞ』
その別の者は俺って意味じゃないだろうな。
「そうだよね。でも、それはいいのよ。私たちはあなたが喧嘩を売ったことに怒っているのよ」
ティナが言う。
そういうことだよな。こいつら三人が正義感みたいなもので動いているとは思えない。いや、正義感みたいなものを持ち合わせているが、こんな焦れったいことをしなくても、一瞬でカレンちゃんの獣化も、ドラゴンの息の根を止めることもできるはずだ。
神様特有の手続きってヤツが本当に大切なのか、遊んでいるだけかだろう。
そもそもな、俺が思う正義感で動いているなら、この世界に俺を連れてこないわ。俺を拐うなんて選択肢がおかしいもん。
『キラムでは何をした?』
たぶん、これが竜の一番聞きたいこと。
最初に聞かなかったのは交渉術の基本だろうか。
「何もしてない」
アンドーさんが答えるが、バレバレの嘘だ。
『祠の下に太古の王の墓があったはずだ。封印が解かれていた』
あぁ、ガイコツのいた神殿っぽい所な。あそこが太古の王の墓か。そこを拠点としていたのか、あのガイコツは。
ガイコツが太古の王って訳ではないよな。
「そうだった」
アンドーさんがそのまま答える。まだ惚ける気か。
『封印が解除されたのを察した時には、あのダマラカナがいなくなっていた』
ガイコツのことか、ダマラカナって。
そう言えば、名乗ってなかったから知らなかったぞ。
「知らない」
『2000年ほど前にこの世界を蹂躙した、大魔王だ。全ての生気を吸い取り、枯らす大いなる驚異』
その脅威は、今、ここにいるダンの子供の養育係に任命されているけどな。下手したら、甲斐甲斐しくおしめを替えているかもしれないぞ。
『お前たちであろう。あのガイコツを解き放ったのは!今すぐに話せ!!今なら奴も魔力が弱いはず。もう一度封印する』
「話してもいいけど、それならそうと言いなさいよ。手を出されてから言われても、こっちは退けないわよ」
だよな。なら、コンタクトを取って来いって思うよな。
怒鳴るくらい焦ってるんだから、巫女長にでも伝えさせろよ。
何だよ、大事なものが無くなったって。
んなもんで、『ガイコツの行方はどこですか?』って伝わるはずないだろ。
『フン、魔族風情が。ダマラカナが何者かも知らずに復活させおって。前回は世界が滅亡の危機となったのだぞ。失敗した時の重圧を考慮すると巫女に伝える訳にもいくまい』
いや、もっと工夫しろよ。
『骨が欲しい』とか『骨がなくなった』とか言えば、こっちも理解できるし、やり方があった。生気を吸うのも、もう収まっているらしいが、例え、吸うのであっても対処して渡せたか見せたと思うぞ。こいつらなら。
『我の予測では、そこの少年の体にダマラカナを乗り移させた』
俺か?的外れも良いことだな。
「どうしてよ?何も意味無いじゃない」
ねぇ、ティナさん。
……俺、少し不安になってますから、ちゃんと反駁して。
『我の変形が効かなかった。魔族であれば、それ以上の獣化が起きないのを知っている』
あぁ、宿屋で聞こえた声か。三人には弱すぎたらしくて感知もしてなかったぞ。
『そして、その少年だけは全く魔力を感じない。体内に潜むダマラカナに吸われているのであろう』
んー、強引。
だけど、魔力のない生物自体がいないんだから、そう思うものなのか。
「ふーん、あなたがそう思うなら、そういう事にしてあげようかしら」
いや、ティナさん、否定して下さい。




