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私も昔は<非出生主義>みたいなことを考えていた時期がある。だけど、当時も同じようにして何度も何度も繰り返して考えて検証してみたら、どう考えても間尺に合わない部分が出てきちゃって、その考えを貫くことが

私が同じようなことを何度も繰り返し言うのは、それを覆せるような道理が他にないかどうかを検証しているから。


私も昔は<非出生主義>みたいなことを考えていた時期がある。だけど、当時も同じようにして何度も何度も繰り返して考えて検証してみたら、どう考えても間尺に合わない部分が出てきちゃって、その考えを貫くことができなくなっちゃったんだよ。


だってさあ、


『人間として生まれるのは苦しいことばかりだから、人間として生まれることを否定する』


としたら、


『じゃあ人間以外の生き物に生まれるのはいいの?』


って話になるし、


『別に人間以外の生き物に生まれたってつらいことや苦しいことはあるよね』


って話になるし、


『つらいことや苦しいことが嫌だから』


ってことだと、それこそ<命>として生まれてくること自体を否定しなきゃならなくなる。


だけどこの宇宙には<生命>というものがすでに存在して、それ自体が摂理として機能している。


じゃあ、<命>として生まれてくることを否定しようと思えば、<生命という現象>そのものが節理として存在するこの宇宙自体を無くしてしまわない限り、<命>として生まれてくるのを回避することはできないじゃん。


そうなるとさ、


『自分が生まれてきたのが不幸だったから、この宇宙そのものをなかったことにする』


ってことにならない? いや、なにその<究極の八つ当たり>。


以前、非出生主義の人に、雑誌の企画でインタビューしたことがある。その人はさ、


「どうして今の両親の下に生まれてきたことを不幸だと思うんですか?」


と私が尋ねたら、


「いえ、私の両親は素晴らしい人達です。経済的にも苦労をさせられたことはないし、私に十分な教育と恵まれた環境を用意してくれました。だから心から感謝しています」


とは応えたんだけど、私にはそれがまったく腑に落ちなかったんだよね。だけど、自分が親になってなにが腑に落ちなかったのか、よく分かったよ。


『自分の子供が、自分が生まれてきたことを不幸だと考えていることについてどうして無頓着でいられるの?』


ってさ。


<そこまで思いつめていることを相談できない親>


って、なに? 私は自分の子供達がそんな風に思いつめてたら無茶苦茶悲しいんですけど? それを相談してもらえない自分を、


<子供に相談したいと思ってもらえない親である自分>


を、クソほど思いっきりぶん殴ってやりたいですけど? <素晴らしい親>だと言うのなら、なんで自分の子供がそこまで思いつめてることを放っておけると思うんだろうね?


そこがとにかく腑に落ちないんだよ。呑み込めないんだ。



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