結局、前世では、『狡い奴が得をする』という仕組みが根源的にあって、ただただ真面目なだけでそういう<狡さ>を持たなかった主人公はいいように使われるだけだったのが、こっちでは
そうして集落の外れに魔獣と一緒に住み始めた主人公なんだけど、魔獣の存在を盾にして横柄に振る舞うようになるとかもなくて、普通に畑を耕して汗を流すっていう暮らしを続けるんだ。
結局、前世では、
『狡い奴が得をする』
という仕組みが根源的にあって、ただただ真面目なだけでそういう<狡さ>を持たなかった主人公はいいように使われるだけだったのが、こっちではその『真面目なだけ』というのがむしろハマったんだよ。こっちの世界ではまだまだ<狡さ>よりも<真面目さ>が必要とされてたから。
要するに<適性>の問題。その社会に合った適性を持ってるかどうかで上手く行ったりいかなかったりするという部分があるのも事実。ほら、
<ネットで有名になる人の傾向>
みたいなものってあるじゃん? そういうことだよ。
だからさ、『真面目で誠実なだけ』っていう主人公の性格も、こっちの世界では価値があるわけ。
『異世界に転生したからってダメ人間はダメ人間だろwww』
とか言ってるのもいるけどさ。それぞれの世界においてそれぞれ価値観も違うなら、転生前の世界じゃ認められなかった部分が認められる世界だってあるんじゃないの?
そんなわけで、主人公は集落に暮らす女の子とも普通に親しくなれて、女の子の方も、
『魔獣を従えてるのにそれを笠に着たりせずに真面目に畑仕事をする』
主人公の人柄に惹かれていくんだよね。
こうして主人公と女の子は結婚して子供も生まれて、ただただ穏やかに幸せに一生を過ごすことができたんだ。
『前の世界じゃ不遇だった主人公が異世界に転移や転生してそこで認められる』
ってのは、転移や転生した先で求められているものを持ってるってのがちゃんと表現されてたら説得力も出るんじゃないかな。前の世界ではどうしようもないクズだった人間でさえ、転移や転生した先の環境に合致すれば英雄にだってなれるかも知れないよ?
ほら、別に異世界に転移とか転生とかしなくたって、時代によって求められる人材の質って違うじゃん。乱世では英雄とされた人も、平和な時代じゃただの悪漢だったりするでしょ?
確かに現代知識を持ってるだけじゃ、異世界じゃ再現できないものがほとんどだったりするだろうから、そうそう上手くいかないかもだけどさ。
まあそれで言うと、この主人公が上手くやれたのも、
『魔獣を手懐けられた』
というのが大きいんだけどね。
『得体のしれない余所者だが、敵に回すのは危険だし、利用できる限りは利用させてもらおう』
って現地の人らに考えさせられたのは大きいってのは事実だと思う。




