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バランスが取れてると

話を異世界のに戻そう。


異世界ということは、ルールも常識も別にこちらと同じである必要もないと思う。


そして、こちらと文化や文明の発達度がずれているなら、それこそこちらでは<悪習>として廃れたものがバリバリ現役だっておかしくないよね。


で、そこに転生したり転移したりした主人公が、仕方なくそういうのと折り合いをつけて生きていくのだって、ある意味じゃリアルな話でしょ?


こちらの価値観や常識や倫理観を押し付けてその世界を引っ掻き回すとか、傲慢以外の何物でもないんじゃないの?


主人公が自分の代だけで何もかもを変えてしまえるとか、ご都合主義にもほどがある。


典型的なのが、封建制度とか奴隷制度とかだと思う。


地球でもそれが大きく変化するまでにどれだけの時間が掛かったの?


それが大きく変化するまでどれだけの混乱が生じ、衝突が生じ、どれだけの血が流れて、どれだけの犠牲者が出たの?


近代ヨーロッパで奴隷廃止の流れが出始めてから実際に廃止されるまで何百年掛かったと思ってんの?


奴隷が出てくる異世界物で、登場人物が仕方なくそれと折り合おうとすると、


『奴隷制度を肯定してる!』


とか難癖付ける人達は、ちゃんと歴史を学び直したほうがいいんじゃないの?


奴隷制度ってのは、それが当たり前だった時にはそれ自体が社会基盤そのものだったんじゃないの? その社会基盤を一気に根こそぎ変えてしまおうとしたらどれだけの混乱が生じるか、考えてみたりはしないの?


これが、


<主人公が楽しむために用意されたアトラクションとしての異世界>


だったら、封建制度とか奴隷制度そのものがただの<風味付け>でしかなかったりするだろうから、都合よく解決したって別にいいと思う。


<そういう作品>


だったらね。


だけどさ、自分が暮らしていたのとはまったく異なる世界に飛ばされて、そこで自分がどうやって生きていけばいいのかに悩み、時には心を病んだりしてしまうようなタイプの作品で、そんなあっさりと奴隷制度をぶち壊せちゃったら、さすがに作品のテーマにそぐわないと思うんだけど?


『奴隷制度に嫌悪感を抱きつつも都合よく変えてしまえない現実に打ちのめされながら葛藤しながら、生きるために現実的な選択をする登場人物の姿を描く』


っていうのも、フィクションならではのことでしょうが。


たとえ、登場人物が物語の中で奴隷制度を賞賛してたとしても、それを快く思わない登場人物がいれば、それはそれでバランスが取れてると思うけど?


出てくる登場人物が、


<清廉潔白で高潔な正義の人>


しかダメだっていうんだったら、<ダークヒーロー物>なんてそれこそ描けないじゃん。



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