私が＜躾＞という言葉を嫌うのは、それが結局、＜躾という言葉を使いたがる側の甘え＞でしかないからだよ。加えて、何より、『効果がない』からね

私が＜躾＞という言葉を嫌うのは、それが結局、

＜躾という言葉を使いたがる側の甘え＞

でしかないからだよ。加えて、何より、

『効果がない』

からね。

だってさあ、考えてもみなさいよ？　今よりずっと厳しい躾を受けてきたはずの世代の行状を。

つい先日も、六十代くらいの男性が、歩きタバコをしてた上に、吸殻を歩道にポイ捨てしたんだよ。今、市内は全面路上喫煙禁止になってるのにさ。

六十代くらいだよ？　今よりよっぽど＜厳しい躾＞を受けてたんじゃないの？　

それがなんで、

『決められたルールさえ守らない』

の？

しかも、喫煙に対して風当たりがきつくなるずっと以前から、

＜タバコのポイ捨て＞

って問題になってたんじゃないの？　私が通ってた小学校なんて、運動場の砂場にタバコの吸い殻がバカみたいに落ちてたんだよね。小学校だよ？　中学生とかが隠れてタバコ吸ってて捨てたとかじゃ、明らかにないよね？　職員室から丸見えの見晴らしのいい運動場の砂場なんだしさ。

そしてそれだけじゃなくて、小学校の敷地内でさえあちこちにタバコの吸い殻が落ちてたよ。

さらには、運動会の後なんか、本当に酷かったよね。ゴミが。食べ残しとかをそのまま放置してたり、酒の空き瓶や空き缶も転がってたり。もちろん、タバコの吸い殻なんて当たり前。

私が小学生だった頃の父兄って、それこそ今は六十代とか七十代とかになってるはずだよね。しかも祖父母世代も見に来たりしたよね？　当時の祖父母世代なんてまさしく戦前生まれで戦前の躾を受けてきた世代だよね？　それがなんで、自分の孫の小学校にゴミを放置するのがいるのを黙って見過ごしてたの？　

『他人に迷惑を掛けるな』と厳しく躾けられてたんじゃないの？

で、こうやってタバコの話を持ち出すと、

『喫煙者を目の敵にしてる！』

とか言って、話の本筋を無視したことを言い出したりする。私が言ってるのは、＜躾＞の話だよ。そしてそれは、喫煙者に限ったことじゃない。だから運動会での父兄のゴミ放置の話をしたんだ。にも拘わらず、喫煙者・嫌煙者双方がお互いを罵り出したりする。

そう。『罵る』んだ。お互いにね。ちゃんと躾けられた人間なら、そんな、

『＜躾のなってない犬＞がギャンギャン吠える』

みたいに相手を罵ったりしないでしょ？

なのに実際には、

『喫煙者だから躾がなってない』

んじゃなくて、

『喫煙者かどうかに関係なく躾がなってないのがいる』

ってことじゃん。そしてこれは、昔からそうだったでしょ？　セクハラ、パワハラ、ゴミのポイ捨て、信号無視、飲酒運転、酔って路上で嘔吐する、立小便、夜間の自転車の無灯火、etc.etc.……

『昔の人間の方が礼儀をわきまえてた』

とか、典型的な＜思い出補正＞＜記憶の美化＞じゃん。

そして、事実を事実として向き合わないのは、所詮、＜甘え＞だよね。