そこは<異世界>じゃなかった?
最初に彼女がここが殖民惑星の一つだと推測したのは、国王のバイタルサインから読み取れた反応。明らかに<ロボット>という存在を知っている者のそれ。
たぶん、王族には代々、科学文明のことについて口伝という形で伝わってたんだろう。だけど、それについて国王に<問い詰める>ということは彼女はできない。ロボットだから。
だとしたら国王から聞き出すよりも、この惑星そのものを調査した方が早いし確実。何より、どれくらいの時間が経過しているかは分からないものの、伝わっている情報自体、変質している可能性も高い。
ちなみに、最初は天測で推定しようとしたんだけど、惑星<ホーリィブライト>の情報は、入植者達の意向によって多くが秘匿されてて、実は正確な位置情報さえ残ってなかった。あったのは、入植時に撮られた衛星写真だけ。
でも、衛星写真なら、逆に、海岸線とかについてはかなり正確だからね。
天測の方は、惑星<ホーリィブライト>の元々の位置情報が正確でない上に、大まかに予測される天体の位置自体がずれていて確認できなかった。ただ、そこから、彼女が製造されてから少なく見積もっても数千年が経過してるとは推測できてたけど。
ルビアート周辺の地形についてはそれこそ人間自身による開発で大きく地形が変わっていてあてにならない。
海岸線についてもさすがにそれだけの時間が経過してたら大きく変化してた可能性もあったものの、こちらについては惑星<ホーリィブライト>自体が元々非常に安定した惑星で、海そのものも、テラフォーミングによって作られた人工のそれだったから、小さいんだよね。地球の海に比べると十分の一程度の大きさしかない。要するに、馬鹿でかいだけの人工のプールみたいなもの。
その<人工の海>からそう遠くない位置に作られたのがルビアートだったと。
海の近くにも人間が暮らしてた痕跡はあったものの、<エンディガ>の襲撃によって壊滅したか放棄されたかして完全に無人だった。
彼女は、<決死隊>の人間達には自分が気付いた内容については伝えなかった。伝えたところで彼らの与り知らない話だし。
それよりは、今後の、<未来>のことだ。
加えて、
『どうしてエンディガなんて存在が発生したのか?』
という謎がある。惑星<ホーリィブライト>は、本来、極めて原始的なバクテリアしか存在しなかった岩石の惑星。それをテラフォーミングで人間が住めるように改造しただけ。そこにどうしてこんな強大な敵対生物が?
だから今度は彼女は、エンディガの生態について詳細に調べ始めた。それまでも当然のようにデータを集めてたけど、さらに、ね。




