『我慢ができるようになった』というのが、大きな変化だった。
軍に入った主人公は、真面目に訓練を受けた。
上官の横柄さ横暴さには内心キレ倒しつつ、それでも世界に復讐するための力を得るために我慢はするんだよ。
でも、実は、その、
『我慢ができるようになった』
というのが、大きな変化だった。
それまでは実際にキレ倒してたのにさ。
だけど、主人公自身は、自分のその変化に気付かない。自分のことって自分では案外見えないからね。
単に、
『目的のために我慢する』
って思ってるだけでさ。
『目的のために我慢することができるようになった』
のが大変な変化なのに。
一方、両親の方も、勝手に出て行ったとはいえ、自分の子が取り返しのつかないことをやらかしたら一大事と、主人公が来てないか軍の施設を訪ね歩いて、そして主人公がいるところに辿り着くんだよ。
でも、真面目に訓練を受けてると聞いて、
「もし、何か他人様を困らせるようなことをした時にはすぐに報せてください」
とだけ告げて、しばらく様子を見ることにするんだ。しかも母親は、その軍の施設がある町の商店で働き始めてさ。主人公のことがすぐに分かるように。
『他人様を傷付けるような人間のままで世の中に放り出すわけにはいかない』
からね。
『なんで親だからってそこまでしなきゃなんねーんだ!?』
って?
いやいや、それを言うなら、
『親以外の誰にそれをしなきゃならない理由があんの?』
ってのをまず考えなきゃ。
『雇った軍に監督責任がある』
にしたって、勤務時間外のプライベートな時間まで管理監督する義務はないと思うけど? ましてや、もし、軍を辞めてからことを起こしたとしたら、それこそ何の責任もないじゃん。
んでもってそう言うと今度は、
『他人に迷惑をかけるくらいなら、一人で死ね!』
とか言うのも出てくるんだけど、あのね、その考え方は、そもそも前提からして成立してない。だって、
『他人に迷惑をかけないように一人で死のう』
なんて冷静に考えられるうちは、事件なんか起こさないんだからさ。
『他人がどうなろうと、もうどうでもいい』
って思うからこそ事件を起こすんだよ? それどころかむしろ、
『それほどキレるくらいの<嫌がらせ>になるんなら、狙い通り』
とか思うんじゃないの?
やらかす側は、
『他人に被害を与えたい』
わけだから。
ましてや、加害者が死んじゃってたら、それこそ何を言っても本人には届かない。責任も取らせられない。
つまり、事が起こってからじゃ何もかも手遅れなんだよ。後からいくら<たられば>を言ったところで起こってしまったことは消えてなくならない。
何より大切なのは、
『事件を起こさせない』
ことなんだ。
そのためにできることをしようとしてるだけじゃん。
私も、実際の子育てでそれをしてるだけなんだよね。




