道理でおかしいと思ったよ。あんたは人間を恨みすぎてる。別に誰かに何かされたわけでもないはずなのにさ
『あんたを勝手にこの世に送り出したのは、他の誰でもないこの私だ。文句があるなら私が聞いてやる。だが、あんたの憂さ晴らしのために他人を傷付けるのは、絶対に許さん!!』
母親の剣幕に一瞬怯んだ主人公に、両親は顔を見合わせた後で言うんだよ。
「ねえ、もしかしたらあんたも、前世の記憶とかある?」
「…え?」
図星を突かれてぎょっとする主人公に、母親は続けるんだ。
「やっぱり……あんたも<転生者>だったんだね。道理でおかしいと思ったよ。あんたは人間を恨みすぎてる。別に誰かに何かされたわけでもないはずなのにさ。
最初は私達の接し方が悪いのかと思ってたんだけど、見てる限りはそこまででもなさそうだったしさ。
で、もしかしたらと思ったの。でも、確証もなかったし、変にそんなこと尋ねたら余計に意固地になるんじゃないかと思うと言えなくて……
だけど、その様子を見たらやっぱりそうなんだね? 前世でどんな目に遭ってきたらそうなるの?
よかったら話を聞かせて欲しいんだ」
そう言う母親に、
「な~…なに言ってんだ、お前。頭おかしいんじゃねーのか……?」
主人公は返すんだけど、両親はその反応に確信するんだよね。
『間違いない。この子も転生者だ……』
てさ。その上で、
「まあ、とにかく話を聞いてよ。実は私もお父さんも<転生者>なんだ。しかもどっちも捨て子でさ。それで同じ養親に拾われて育てられて。
その養親は、決して『優しい』って感じの人じゃなかったけど、それでも別に虐待まではされなかった。他にも何人も養子を育ててたから流石に一人一人まではちゃんと構ってられなかったんだろうね。
でも、そこで働いてたメイドさん達は優しくて。私達のこともちゃんと見てくれてさ。しかもいずれ自分で働いて生きていけるように、仕事も学ばせてくれて。お父さんもそこで鍛冶としての技術を学んだんだよ。
私は当然、家事の技術をね。正直、あんまり優秀じゃなかったから、メイドとしては役立たずだったけど、こうしてお父さんと結婚して家のことをする程度ならなんとかなってる。
まあこの辺は、お父さんが大目に見てくれてるからってのもあるけどさ」
確かに、彼女はちょっとおっちょこちょいな面があってよく失敗してたんだ。だけど何度失敗しても挫けなくて、明るくて、人付き合いが苦手な父親の代わりに近所の人から注文を取ってきてくれたりもする、父親にとっても、欠かせない存在で、
『彼女とでなきゃただの<ダメおやじ>』
っていう。
なのに主人公は、
「そんな話、俺には関係ねえ!」
って言って家を飛び出して、勝手に軍の施設に行っちゃうんだよね。




