他人様を傷付けるような人間のままで世の中に放り出すわけにはいかない
こちらの世界での両親が考えてるのは、結局、それ。
自分がこの世に送り出した子を、他人を傷付けるような人間のままで放り出すわけにはいかないってことなんだ。
だってそうでしょ? 他人が勝手に作った子供が自分達を傷付けるとか、被害を与えるとか、誰が納得してくれんの? しかも親は、それについて、ついつい、
『自分は悪くない! 子供が勝手にやったことだ!』
って思いたいみたいだけど、そのために、
『親の所為にするな!』
って言いたいみたいだけど、だからそれが<逃げ>だって私は思うし、親のそういう姿勢を見てるから子供も自分の責任から目を背けるんだろうなとしか思わないんだよ。
私の子供達を見てて。
こっちの世界の主人公の両親は、逃げなかった。自分が勝手にこの世に送り出した子供が他人様を傷付けるような人間のままで放っておいて、
『自分は悪くない!』
と被害者面をする気はなかったんだ。
だいたい、相手は<子供>だよ? 自分の子供。
親の方が、力も強い。知識も豊富。経験も積んでる。生活力もある。
ありとあらゆる面で子供を圧倒してるんだよ? それでなんで自分の子供に遅れを取るの?
おかしいでしょ。
仕事でもそうじゃん。結果が出せないのは、結局、自分のやり方がマズいから。努力の方向性を間違っているから。適切じゃないから。
なのに、
『自分は悪くない!』
って思い込みたいからその事実と向き合おうとしないで目を背けて、挙句、
『子供が勝手にやったことだ!!』
とか、
<自分以外の誰かの所為>
にしようとする。
ねえ、仕事でそれが通用するの? 私が、
『私の作品が理解されないのは、読者の頭が悪い所為だ!! 編集がヘボだからだ!!』
みたいに言ってて、納得してくれるの? しないでしょ?
仕事は<自分以外の誰かの所為>にしてても許されないのに、なんで育児は<自分以外の誰かの所為>にしてて許されるの?
おかしいでしょ。
少なくとも私はおかしいと思うから、自分以外の誰かの所為にするつもりなんてないんだよ。
こっちの世界の主人公の両親もそれだけの話なんだよ。
いいとこ、人間の三歳とか四歳とかの幼児並の知能しかないと言われてるはずの犬でさえ、適切な接し方を心掛ければ他人に迷惑を掛けなくなるんだよ? そして、そうならないのは、接し方が適切じゃないから。
今じゃ常識じゃん。
それを思えば、<自分の子供>は少なくとも人間じゃん。それとも何? 犬にも劣る獣でも生んだの? 人間が獣を生むはずないんだから、つまり自分も<犬にも劣る獣>ってこと?
違うでしょ? そうじゃないでしょ? 人間なんでしょ?
だったら、
『自分の接し方が適切じゃなかった』
って事実と向き合おうよ。人間なら。大人なら。




