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この世界の人間じゃない僕がこうして

『今からやり直したいと思うんだ』


父親(主人公)にそんな風に言われて、娘は、


「そんなこと…いまさら……」


って反発するんだけど、


「そうだな…いまさらだとお父さんも思う」


父親(主人公)自身も苦笑い。


あるよね。他人にずっと嫌な思いさせてきた人間が改心して態度を改めたって言われても信じられないってこと。私だって、自分の両親や兄が心を入れ替えたところですぐには受け入れられないと思う。


だから父親(主人公)も、すぐに受け入れられるとは考えてない。


それこそ最初から、本当に最初からやり直すつもりで臨むんだ。赤ん坊の時から、ね。


もちろんその間にも、皮肉なくらいに赤ん坊は順調に育っていく。


ちなみに、人工妊娠中絶については、検討の余地なく可能な時期を過ぎてたから無理。娘が打ち明けられないうちに過ぎちゃってたんだよ。


父親(主人公)は、それに気付かなかった自分にも腹を立ててた。娘の様子をもっとちゃんと見ていれば、本人の様子が変わったことに気付けてたはずなのに、それまで見てなかったから、違いに気付かなかったんだよね。


私はさ、子供達が落ち込んでたり何か嫌なことがあって気分が優れなかったりすると分かっちゃうんだ。なにしろ、普段から見てるから。調子のいい時の様子もちゃんと見てるとさ、そうじゃない時の様子も分かるんだ。


レントゲン写真とかでも、正常な状態のを知ってるからこそ異常に気付けるっていうのあるらしいじゃん? たぶん、それと同じだよ。


部の顧問から強引に体の関係を迫られて、望んでもない初体験をさせられて落ち込んでる娘に気付かなかったんだ。


私なら、自分自身が許せないくらいの失態だよ。


『そんな有り様で、よく<親>だなんて言えるな!?』


って自分を罵ってしまいそう。


だからって、余所の親を罵るつもりはないけどさ。元々、他人の表情とかを読み取るのが苦手っていう人もいるだろうし。


でも、私は子供達の表情の違いとか分かっちゃうからね。なのに気付かなかったなんて、憤死ものって話。


あと、


『そんなクソ顧問の子とか、愛せるわけねーだろ!』


ってのもいるだろうけど、でもさ、主人公なんて、<この世界の人間>じゃないんだよ? 本当に寄る辺ない、まがうことなき<ストレンジャー(よそもの)>なんだ。なのに、そんな彼でも受け入れてくれる人達がいた。だからこそ、彼はこの世界で生きてこられたし、こうやって家庭を持つこともできた。


だったらさ、たとえ父親はロクデナシでも、<愛する自分の娘が生んだ子>だったら、その部分だけを見るなら受け止められてもおかしくないんじゃない?


って、言うか、主人公はそう思うんだよ。


『この世界の人間じゃない僕がこうして生きることを許されてるのに、この子が生きることを許されないなんて、おかしいよな』


ってさ。



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