たとえ疲れてても虫の居所が悪くても
でも、
<妹をレイプした奴に復讐しようとして同姓同名なだけでまったく無関係な人間を狙ってしまった加害者>
に殺されて異世界転生した主人公の両親は、そうじゃなかったんだよね。
他人のことはおろか、自分の子供さえ敬ってなかった。
<自分とは違う、一個の独立した人格を持った存在>
として扱ってこなかった。
しかも、転生した先の両親や周囲の大人達も同じ。
だって、無自覚にそういうことをしてる大人って、むちゃくちゃ多いじゃん? もう、それが<普通>って言われるくらいには。
『子供なんて動物と同じ』
『動物と同じだから躾けて人間にするんだ』
って言葉が当たり前に使われるくらいだしさ。
『子供なんて動物と同じ』と言うのは、完全に敬う気がないからこそ、完全に自分より下に見てるからこそ、それどころか、言ってしまえば、
『人間扱いしてない』
からこそ使われる言葉だよね? つまり、子供を人間として扱わないのがごくごく普通にこの世界には当たり前にいるってことじゃん。
こんな風に言われるのって、私は本当に情けない気分になる。
だって、私が生んだ子供を、
『人間じゃない』
って言われてるのと同じなんだよ? 他人の子供を『動物と同じ』だとか平然と言えるとか、『相手を敬う』って姿勢を持ってる人がすること?
私には、到底、そうは思えないんだけど?
私が生んだのは、
<人間以外の動物>
じゃないよ。
だから私は、生まれたその瞬間から、
<私とは違う、独立した一個の人格を持った存在>
として敬ってきたんだよ。敬ってるから頭ごなしに怒鳴ったりしないし、強圧的に命令もしない。
小児検診の待合室でがさがさしそうだなってなったら、
『じっとしなさい!』
みたいに命令するんじゃなくて、膝に抱いて目を見ながらいっぱい話をしたよ。携帯電話とかいじったりせずにさ。
そしたらさ、たくさん話し掛けてくれたよ。ほとんど人間が理解できる言葉にはなってなかった頃でも、私がちゃんと耳を傾ける姿勢を示してたら、懸命に自分の思ってることを伝えようとしてくれたよ。
それで感じたんだ。
子供が騒ぐのは、親の気を引きたいからっていうのもあるんだって。親がすぐに意識を向けて話を聞く姿勢を見せないから、子供の方も、だんだん声が大きくなっていくんだって。感情的になっていくんだって。
だとしたら、最初から話を聞く姿勢を見せてれば、子供の方だって親の気を引こうとして大きな声を出す必要もなくなるじゃん。
小児科の待合室とかで、他の子供の様子を見てたら感じるよ。やたらと大きな声で感情的に喚く子の親は、最初、子供が話し掛けてても無視してるんだ。で、子供がだんだん大きな声でしつこくし始めてようやく、
『煩いな!』
と言わんばかりに苛々した感じでやっと反応する。
私が、たとえ疲れてても虫の居所が悪くてもやらない対応をやってるんだよね。




