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世界は自分だけのために存在するんじゃない

『世界は自分だけのために存在するんじゃない』


それが分かってれば、


『自分が気に入らないというだけの理由で他人が楽しんでるものにケチをつける』


行為がいかに身勝手なものか分かりそうな気がするんだけどね。


私は、自分の子供達にそれを繰り返し諭してきた。


だけど、その代わり、私と夫だけは、子供達を特別扱いするんだよ。他の人は特別扱いしてくれないということを分かってもらうのと同時に、子供達をこの世に送り出した張本人である私と夫だけは、ね。


だからこそ、子供達も、


『世界は自分だけのために存在するんじゃない』


っていう事実を容認してくれるんだと思う。受け止めてくれるんだと思う。


自分が<特別な存在>である事実と、世界は自分だけのものじゃないという事実が同時に存在することをね。


本当に、自分に都合よく世界の方を変えてしまおうとするのは、危険だよ。


『そうなってくれればいいな』って考えるだけなら別にいいとしても、力尽くで変えてしまおうとするのはマズいと思う。


世界を変えようとするんじゃなくてさ、自分が好ましい自分であろうとするくらいに留めておけば、まあ、好きにすればいいことだと思うんだ。


私は、そうありたいと思ってる。私が作品の中であれこれ言ってることが伝わってくれる人も、一人とか二人とかで十分だよ。世の中が変わってしまうくらい受け入れられるなんて、むしろヤバいと思う。そんな状況、明らかにおかしいよ。


社会ってのはさ、いろんな考えの人がいて、いろんな価値観の人がいて、いろんな背景を持ってる人がいて、いろんな能力を持ってる人がいるからこそ<社会>って言うと思うんだ。


完全に一つの考え方や価値観を持ってる人しかいなくて、全員が一つの目的を目指して完璧に動くなんてのは、それはもう<社会>とは思えない。そういうのは、<装置>って言うんじゃないかな。


<装置>はさ、それぞれの<部品>が完璧にそれぞれの役目を果たしてくれないと機能しないけど、社会はそうじゃないじゃん。いろんな人がいて、それぞれが折り合いを付ければ、<理想の社会>とまではいかなくてもそれなりに機能して、生きていけるじゃん。


人間の歴史も、結局はそういうことだったんじゃないの?


いくつもの<文明>が生まれて<社会>が築かれて、どの文明でも社会でも時代でも、何だかんだと大変なことはあって、だけどそれでも人間は生きてきたじゃん。楽な生活はできなくても、それでも子供を生んで育てて、幸せを掴んだ人だってたくさんいたと思うよ?


自分がフィクションにケチつけたぐらいで社会がよくなるなら、もうとっくに誰かが完璧な理想の社会を作ってるんじゃないの?


これまでどれだけの人間が生きてきたと思ってんの? 自分はその人達と比べてそんなに優秀だとでも思ってんの?


さすがにそれは思い上がりが過ぎるってもんだと思うけど?



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