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何が<罰>になるかって

で、


『不法な拉致監禁により、何の落ち度もない女性入所者に耐えがたい恐怖と苦痛を与えた行為は、いかな事情があろうとも許されるものではない』


ってことで、主人公は十年の<隔離刑>を受けることになった。


<隔離刑>ってのは、まあ、平たく言ったら<島流し>だね。本土から百キロ以上離れた絶海の孤島の施設に隔離されてそこで徹底的に人間としての在り方を再度学ぶっていう刑なんだ。


ただ、その判決が出たのも十数年ぶりで、主人公が送られた施設には他に受刑者はいなかった。だから主人公はただただそこでのんびり田舎暮らしを送ることになるんだよね。畑を耕し、家畜の世話をしながら。


とは言え、ネットもゲームもスマホもないそこでの生活は主人公にとっては退屈極まりない、ある意味では過酷なものだった。元々、転移した時点でそんなのはなかったけど、慣れない環境に置かれたことでそれどころじゃなくてそこまで気にならなかったのが、慣れてきたことで段々きつくなってきたと。


何が<罰>になるかっていうのも、人それぞれかもしれない。そして主人公にとっては、


<牧歌的すぎるスローライフ>


が逆に辛かったみたいだね。木や草を人間に見立てて罵って、鬱憤晴らしをするようになっていく。


こうして主人公は、十年の刑期を終えても今度は他の人間がたくさんいるところには帰りたくなくなり、本人の希望でその島に居着いて、実質的な引きこもり生活をするようになった。


それから二十年。主人公は五十になる前に認知症の症状が出始めて、それこそ大きな石に向かって延々と説教をする姿が見かけられるようになり、さらに数年後、自宅で病死してるのが発見されるんだ。




『他人を罵ったりしない』


たったそれだけのことを守れれば、その世界はものすごく優しいところだった。


誰も自分を傷付けようとはしてこないからね。


なのに主人公は、他人を罵って傷付けようとするのが当たり前っていう感覚を、最後まで捨てることができなかった。


それによって自分で自分を追い詰めてしまった。




こっちの世界でもさ、自分からは何もしなくても傷付けようとしてくる人は確かにいるよ。それは紛れもない事実だ。


だけどさ、これも何度も言うけど、だからって自分から誰かを傷付けようとすれば、


『何もしなくても傷付けようとする人がいる』


のに加えて、


『自分が誰かを傷付けようとしてことで反感を買って攻撃される』


ってのが加算されるんだ。


つまり、自分で自分が嫌な目に遭う原因を、余分に作ってるんだよ。


なんでそんなことをしようとするのか、私には分からない。分かりたくない。


そして子供達にはそうなってほしくないんだ。



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