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君は真剣俺はおっぱい



「あれ?ペトラどこ行ったんだ?」


 翔太さんの声を聞いてはっとします。

 

 辺りを見渡しますが、ペトラさんは見当たりません。



「いませんね……」


 しばらく探しましたが、手掛かりは掴めず、遭遇するのは魔物ばかりです。


「おい!カロこれって……」


 突然翔太さんは立ち止まるとしゃがみ込みます。そこに落ちていたのはバナナの皮。

 はて、これが一体何の手掛かりになるのでしょうか。


「よく見てみろ。このバナナの皮、道になってるぞ。多分この先にペトラがいる」


 まさか、そんな事あるはずありま──いました。


「おいペトラ。バナナは一日3本までって言ったよな?」


「え?あれ!三房じゃなかったっけー?」


 ペトラさんは鳴りもしない下手くそな口笛を吹きました。


「それよりもしょーた!ここ、階層主の部屋だよ!」


 彼女の視線に釣られるように見上げたそこには大きな扉。

 この階段を上り扉をくぐった先にいるのが、今回私がテイムする魔物なのでしょう。


 深呼吸をして気を引き締めます。よし!


 私はその大きな扉を開き──


「馬鹿!伏せろ!」


「え!?」


 扉を開いた瞬間、目の前には業火が迫っていました。


 加速する思考。


 逃げなければ死ぬ。


 それがわかっていても、まるで地面に固定されたかのように、足が動きません。


「【無波】」


 業火が鼻先まで迫った時、後ろから迫った突風によって、その業火は散霧しました。


「あつっ!けほ、けほっ」


 ペトラさんは顔が煤だらけで、髪の毛がチリチリの状態です。ですが、もし私がこの攻撃を受けていたら溶けて跡形もなく消え去っていたでしょう。


「いいか?カロ。こういうのはお決まりってやつだ。扉向こうにいる強敵は大体不意打ちで一人殺してくる」


「す、すみません……」


 危うく死ぬところでした。

 もし彼がいなかったらと思うと震えが止まりません。


「ほら、行くぞ!」


 翔太さんは何事もなかったかのように先へと進んでいきます。


「だいじょーぶだよ!またしょーたが守ってくれるから!」


 ペトラさんはぶるんぶるんと胸を揺らしながら身震いして、煤を全て落とします。何故チリチリになったはずの髪の毛も蘇生しているのでしょうか。


 私はもう一度深呼吸をして、彼らに続きました。



──〇〇〇〇──



「けしからん!けしからんぞ!!!!」


 目の前にいたのは体長3m程のラミアだった。

 上半身が人間の女性、下半身が蛇の魔物だ。


 上半身裸。髪ブラ。実にえっちぃ。

 見えそうで見えないのが実にえっちぃ。


「なぁペトラ、ラミアは亜人じゃないのか?」


「うん!普通の人間と変わらないくらいの知性は持ってるんだけどね。でもラミアは神の眷族じゃないよ!」


 ああ、確か亜人は時空神によって造られたんだったっけ?

 この世界に来たばかりの時に本で読んだ。


 でも、人間と同じくらいの知力があるのなら、会話が出来るということだ。


「こんにちはー!」


「何用だ、人間」


「俺の名前は翔太。君の力を借りたくてここまで来た。俺達と来てくれないか?」


「何故妾が人間如きに力を貸さねばならぬ?妾にはここを守るという役割がある」


 妾系女子キター!!!

 是非とも仲間にして欲しい。


「お前はいつからここを守ってるんだ?」


「覚えておらぬ。ただ最後にここに人間が立ち入ったのは確か1000年前の話だ」


 想像もつかねぇな。


「薄暗い部屋で1000年も独りか。さぞかし楽しい人生だろうな?」


 ラミアは不機嫌そうに尻尾を叩きつけた。

 どうやら機嫌を損ねたらしい。まぁ、わざとだけど。


「貴様、何が言いたい?」


「お前は現れるかどうかもわからん敵を死ぬまで永遠と待ち続け、そしてこの薄暗い部屋で独り朽ちていく。誰からも愛されず、誰からも必要とされず、誰にも認められず。気まぐれに訪れた人間からは敵意を向けられて」


「そのように朽ちるのが妾の役目と賜った」


「誰にだ?お前はいつ、誰に求められてそこにいると決めた?」


「それは……覚えておらぬ」


 1000年も前の話だ。

 無理もない、か。

 しかし、つまりは彼女がここを守るのはただの惰性。つけ込む隙はある。


「しょーた性格悪い!かお怖い!むり!」


 ちょっと傷付くが今は無視。


「もう一度言う。俺達にはお前が必要だ。一緒に来てくれないか?」


「……っくくくく。実に面白い。妾の存在そのものを否定した上で、その手を取れば報われると言うのか。お主も大概、

()()奴よのぅ」


「だが、お前はそういうの好きだろ?」


「然り。だが好ましさで言えばそこな娘には劣るな」


 そう言って指さしたのはカロリーヌ。


「暗いも暗い。もはや穢れていると言ってもよい。ここまでの闇を育むなど並大抵の人生ではないのだろうな」


 カロリーヌか……。

 確かに不安定な奴ではある。


「こいつになら力を貸してくれるのか?」


「否、それとこれとはあくまで別の話よ。だが……そうだのう。ここは砦の番人らしく、力で証明せよ。とでも言おうかのう」


「本当にいいのか?それで?」


「良い。お主の言うことも間違いではないからのう。ずっと退屈だったのも事実。ただし、お主らは手出し厳禁。妾とそこな娘の戦いとさせてもらおう」


 なるほど一体一か……そこまで条件は悪くない。


「カロ、いけるか?」


「はい。やってみます」



 そして戦いが始まった。



 お互い、本気の殺し合い。

 俺は終始目が離せなかった。主にラミアの乳から。

 実力はほぼ互角。一進一退の攻防。


 そして──


「んぬ。お主の勝ちだ」


 剣を首元に添えられたラミアはあっさりと降参した。

 

 軽やかなステップと剣さばきで詠唱時間を割り出し、氷属性魔法で少しずつ敵の身体の自由を奪うという戦法。


 一見地味ではありそうだが、変温動物であるラミア相手にはかなり有効だった。


 だが── カロリーヌも無傷とはいかなかった。

 右腕から胸に掛けて黒紫に変色している。無論、ラミアの毒を受けたからだ。

 このままでは直に体が腐り出す。



「ペトラ、解毒魔法は使えるか?」


「ううん。ペトラ毒無効スキル持ってるから習得してない。どうしよう、王女死んじゃう?」


「おい、ラミア、お前の毒だろ?何とかできないのか?」


「妾にはどうする事もできん」


「命には替えられません……翔太さんお願いします」


「いいのか?」


「はい……」


 俺は確認をとってからカロリーヌの服を脱がす。

 俺が躊躇った理由はこれ。解毒をする為には患部に触れる必要があるからだ。

 俺はすぐさま上着をかけて、身体を隠させる。

 

 かつてはきのこ派一番の美女と呼ばれたカロリーヌの柔肌も、医療行為だと思うと無の眼で見る事ができた。


 当然脳内スクリーンショットは連写したが。


 


「終わりました……か?」


「ああ」


 彼女の中の毒は5分ほどで完全に消え、カロリーヌの肌の色は白く綺麗に戻った。真っ赤な顔を除いて。


「はい。それで……あの、翔太さん、私の胸から手を離して貰えませんか?」


「おっと!悪い!」


 人生初おっぱいに興奮してうっかり手を離し損ねてしまった。念の為、後30回くらい揉んどこう。



 ──ぽよんぽよんぽよんぽよんぽよーん

 

 結局、それは俺が殴られるまで続いた。



──〇〇〇〇──


 私はもうお嫁に行けなくなってしまいました。

 それでも、国を取り返すためのワンピースを今日手に入れたのは大きいでしょう。


「あなたの名前はサースト。私の従魔として共に戦ってください」


「任せよ。主様の闇は妾が喰らおう」



 こうしてダンジョン冒険は終わりました。

 失うものが多かった事も否めませんが。


「あれ?しょーたどこ行ったのー?」


「そういえば今日は街に用事があるそうです。宿に泊まるらしいので、帰りは朝らしいです」

 


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