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お決まり





「──ねぇ、翔太。提案なんだけどさ、私と──」




     キスしてみない?





「へ?」



 キスってなんだっけ……えっと、あれ?


「スズキ目スズキ亜目キス科の……」


「それは(キス)


「じゃあ、普段俺たちが座ってる……」


「それは椅子」


「あっ!じゃあ、失敗した時の……」


「それはミス」


「てことは仮定未来の……」


「それはイフ」


「つまり募金箱に金を入れる……」


「それは寄付」


「好きな人に口付けをする……」


「それはーって、うん。それ」


「マジで言ってんの?なんで急に、そんな事……」


 ダメだ。どうするのが正解なんだ?

 これは……キス、しちゃっていいのか?

 

「お前……俺の事好きなの?」


「え?」


「キス、したいんだろ?」


「ちがっ!別にそう言う事じゃないよ!ただ翔太にとって特別な存在になるにはただの家族のままじゃダメだから、せめて女の子だって、意識してもらおうかなって……」


 リシアは左手で顔を覆うと、指の隙間から目を覗かせつつ、右手をブンブンと振り回す。


「いやいや!俺だって流石に意識ぐらいしてるわ!あんだけ可愛い子に毎日囲まれてて何も感じないほど俺も枯れてねぇよ?」


 だからこそ、学園で個室を得た時は大変だった。

 脱水症状になるかと思ったくらいだ。


「ふ、ふーん。じゃあしなくてもいいね。忘れて」


「何言ってんだよ。ここまで来て俺が逃がすと思ったのか?」


 否だ!

 俺はグイッと肩を抱くとリシアの頬に手を添える。


「待って翔太!ほら、みんな見てるから……」


「いいじゃん。見せつけてやろうぜ」


 こうなった俺はもう止まらない。

 俺はゆっくりと顔を近付けていき──




「盛ってんじゃねぇ、童貞が!!!!」


 光の勇者の空Nスマッシュアッパー。

 俺は空中で58回転捻りを繰り出し地面に倒れる。


「カヒュー、カヒュー」


「もっとムードとかあるでしょ?こんななし崩し的に奪える程、私の唇は安くないの!」


「くっ……何故だ?姉貴にやらされた乙女ゲーの蜜月コンディショナーを参考にしたのに……。三次元と二次元は違うということか?」


 なんだ、結局AVの知識も乙女ゲーの知識もクソほどの役にも立たねぇってことか!鵜呑みにして損したわ……。


「何か言い残すことは?」


「嗚呼、お前も口調崩れることあるんだ……な(がくり)」



──〇〇〇〇──


 気が付くと俺は島についていた。

 随分と長い間眠っていたようだ。

 

 既に日は沈みかけていて、真っ赤な夕日が遠い海の向こうへと落ちていく。


「綺麗だ……」


「そう?ありがとう」


 お前じゃねぇ。とは思ったものの、これ以上殴られるのも嫌なので黙っておく。


 俺たちはベンチに腰掛け海を眺める。

 しばらく沈黙が続いた後で、リシアはポツリと口を開いた。


「リヴァイアサンの話、したよね?さっき」


「したな」


「その時にね。私の面倒をずっと見てくれてた男の人が死んじゃったの」


 初恋の相手……とかかな?この流れだと。


「ふふっ。とても頑固なおじいちゃんだったなぁ」


「おじいちゃんが好きなの!?」


「ん?まぁ、おじいちゃんは好きだよ」


 そっかぁ……リシアって変わってるんだなぁ。


「でもね、そのおじいちゃんが死んじゃってから、やたらと男の人が寄ってくるようになったの。戦場に女性は少ないからね。欲を満たすためだったり政治に利用するためだったり、ね」


「じゃあ、リシアはそのおじいちゃんに守られてたってわけか」


「そうだね。それに気付くには少し時間が掛かっちゃったけれど。だから前も言ったように、男の人はちょっぴり苦手」


「そうか」


「だから、改めてありがとう。今日は助けてくれて嬉しかった。それとごめんね。翔太が私達のこと、女の子として見てくれてるってのは嬉しいはずなんだけどちょっと複雑で」


「なぁ、リシア──」


「うん?」


「お前、回想大好きだな」


「…………」


 冷たい風が吹く。


 あれ、なんか間違えたか?



「リシアの事、タクサンシレテウレシイヨ!」


「そう。私も知ってもらえてよかった」


「ああ」

 

 けど、今日一日でリシアの事はよくわかったと思う。

 今にして思えば、初めて会った時のキャラのブレ感というのは俺との距離を測りかねてのものだったのかもしれない。


 きっと彼女はもともと明るい性格だったのだろう。

 それがいつしか、己の心に蓋をしてしまっていたのかもしれない。


「そうかもね。ずっと独りぼっちだった。仲間のはずの人達でさえ、敵に見えた。けど、今はもう私の周りにはみんながいて、翔太がいる」


「ああ、そうだな。これからもずっとだ」


「うん!今日は翔太と一緒に海を見られてよかった。今度はみんなで来よう」


「そうだな。()()()()故郷の海に行こう」


「うっ。そうだね。次は切符買い間違えないようにするから……」

 


 まぁ、こんな感じで、夕日が沈みきった後、俺たちの名前も知らない冬国でのデートは幕を閉じた。




「ねぇねぇ、ミリィちゃんみて!しょーたの鼻!おもしろいよ!」


「ほんとだ!お兄ちゃんのお鼻ちん氷柱みたいに固まってる〜」


 南国装備で雪国とか、どんな拷問だよな……

ブックマーク、評価ありがとうございます!!!


この章もそろそろ終わるのですが……

次の章の内容どうしよう。

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