差し入れと、遭遇。
時間をちょっと巻き戻してみますん
................そっか、樹、休みなんだ................。
私は、見晴らしのいい目の前の席を眺める。................大丈夫、なのかな........................。
「なーなーまほろん。この後どうする?」
「あっ、八千流................この後は、................何も、考えて、ない................」
「そう?あたしはこの後先輩に焼肉に誘われてるけどさー、磨穂呂も来る?」
「い、いい................そんなに、お肉、食べない、から................」
「あっ、そうなんだー................いやー、先輩が張り切ってるんだよ。『あたしの座右の銘は【焼肉定食】だっ!!』................とか言って。」
「す、すごい................」
................その先輩も、そしてすぐに溶け込んだ八千流も。................あ、それは私達も同じ、か。
「それじゃーねー♪むふふ、やっきにっくやっきにっくじーんぎーすかっん♪」
................な、なにその歌................しかもその後はジンギスカンの歌になってるし................
........................いいや、とりあえず私も帰ろう........................。
トコトコと昇降口に降りて靴を履き替えると、柱の影から突然人が出てきて道を塞がれる。
「................な、なん、ですか................?」
脅えてるのがバレないように訊くと、
「おやぁー?なかなか可愛いじゃないの、君。................ねぇ、この後2人でげふっ!?」
................あ、後ろからどつかれた。
「まーーーたあんたはっ!!女の子引っ掛けて!!このマリバッカ!!」
続けて二度も三度もべしべしとカバンで殴られて、見てるこっちもなぜか同情しそうになって................って、今のうちに逃げないと................
「ああっ待って話だけでぼふっ!?」
................なんか後ろですごい音してたけど、そんなのお構い無しに逃げる。................ああ、怖かった。
ひと安心すると、私のお腹がきゅるると鳴く。................そういえば、もうお昼........................何か、おいしいものとか、無いかな?
お財布を持ってることを確かめてから、ニアマートの自動ドアをくぐる。ちょうどお昼時なせいか、店内はごった返してて。
(................早く決めないと、全部無くなっちゃうかも................。)
とりあえずペットボトルの焙じ茶とかけうどんだけ手に取って、レジの行列に並ぶ。お腹の虫が2回目の腹ぺこアピールをして、ちょっとだけ恥ずかしくなる。
(........................そう言えば、樹はちゃんとご飯食べてるのかな................。)
................一応寮のご飯は出るけど、それも喉を通ってるかどうか........................一応、樹への差し入れも買っとこうかな。
列を抜けて、おにぎりと飲むゼリーを探しに行く。おにぎりは................あ、体格のいい人が横から来て7個も持ってっちゃったし................すごく満足そう................。何個か残ってた中から5つだけ抱え込んで、次はゼリーを探しに行く。................あ、あった。
最後の一つだけ残ってたやつに手を伸ばして掴むと、横からも手が伸びてきて同時に掴み取る。
「あっ................」
「あら................」
腕をたどって目線を上げると、そこにはキツネみたいな目で私のことを睨む人が。
「................これ、私が欲しいんだけど。」
「あ、あの................私も、欲しくて................」
「................私が先だったから、私のもの。」
「あ、あの........................と、友達が、風邪、で................持ってって、あげたくて................その、................譲って、くだ、さい................」
頭を軽く下げると、キツネ目の人は小さなため息をつくと、ゼリーから手を離す。
「................早く行きなさい。待ってるんでしょ?」
「................あ、ありがとう、ござい、ます................」
「いいのよ。................これ、弓籠手はめたままでも飲みやすいから好きなんだけど................諦めておにぎりにするから。」
「あ、ありがとう、ございます................。あ、でも、おにぎりは、................さっき、背の高い人が、みんな持ってっちゃい、ました........................」
キツネ目の人は小さくため息をついて、
「................犯人は白峰さんね。................サンドイッチでも残ってないかしら。」
「あ、あの................だったら、これ................」
と、持っていたおにぎりの中から2つ、キツネ目の人に差し出す。
「................いいの?これ、持ってくものじゃないの?」
「................お礼、です。」
「................そう。ありがとね。」
そう言うと、キツネ目の人はスタスタとレジへと歩いていく。................さてと、私も急がないと。




