姫騎士とキャンピングカー
王宮の敷地内、子供達が遊んだトレーラーと横並びで止まっているキャンピングカー。
直人一行が勢揃いで、こたつを囲んでまったりしていた。
「じゃあ、明日にはここをでるんだ」
ティアが言った。こたつにはいって、背もたれに背中を預けてくつろいでいる。
「ああ、そろそろ次の所に行こうかなって」
「どこに行くのー?」
「北かな? というか北の方が寒いんだっけ」
ソフィアとティア、この世界の住人かつ知識が豊富な二人に聞く。
こたつの上に頬を載せて、だらっとしている姫騎士が答えた。
「その通り、北の方が大分寒いぞ」
「これから冬になるし、もうちょっと行けば雪も降ってきそうね」
ティアも直人の質問に答えた。
「じゃあやっぱり北だな。せっかくの冬、やっぱり寒いところにいかないと」
「冬かあ。ねえお兄ちゃん、冬って何が面白いの?」
ミミが瞳を輝かせながら直人に聞く。
「雪合戦とかスキーとかは当たり前だけど、雪だるまも作ってて楽しいぞ。ああ、坂道でそりを使うってすべるのも楽しいかもな」
「わお」
「室内だと、おでんとか、あえてアイスクリームもいいな。かき氷じゃなくてアイスクリームなのがみそだな」
「おでんというのはさっきも聞いたが」
ソフィアが顔をあげて言ってきた。
「難しいと言ってなかったか直人」
「ああ、そう考えるとアイスも難しいかもな。というかできる事の方が少ないんだ」
「すくないの?」
「そう、いろいろ楽しいことはあるけど、大半が再現不可能なんだよな。日本じゃないと難しい事とか」
「例えば?」
「例えば……これとか」
直人はテレビにつなぎっぱなしのゲーム機を指さした。
「これとかも、日本にいたらやれるゲームは無尽蔵にある。ああ、冬にミニ四駆もいいな」
「みによんく?」
「これくらいの小さいおもちゃの車で、電池で走る。直進しかできないけど、コースを作ってやればそのコースに沿って曲がれる。そのコースを雪で作るのがたのしいんだ」
「さっきわたしがやったみたいに?」
ティアが言った。窓の外にレールに乗っかったキャンピングトレーラーが見える。
「そんなもんだ。違うのは何台も一緒に走らせて、レースする事だ」
「わん!」
子犬がないた。
「お、わんこも勝負したいか?」
「わんわん」
「そかー。いっとくけどミニ四駆は速いぞ、おれのは特にモーターのコイルからまき直してるからな。冬じゃないとカバーが熱で溶けてしまう特殊仕様だ。はたしてわんこに追いつけるかな」
「くぅーん……わん!」
子犬が直人にじゃれついてきた。
その光景を、女達が温かい目で見守る。
「マスターも、かなりやんちゃしてたのですね」
「今までのやってきたことを考えれば想像はつく」
「しかし、ナオトの国って面白そうな所ね」
「機会があれば行ってみたいな」
夜が更けていき、世間話で盛り上がる。
直人が作ったジャガイモもポテトチップスと、これまた彼が作った天然炭酸のジュース
でわいわいやっている。
ティアのリクエストで茶葉から作ったお酒もあり、それも加わって、ますます盛り上がる。
「だれかいますの?」
車の外から声が聞こえてきた。
ナユタの声だ。
直人はこたつから出て、車の外に出た。
するとそこにナユタと、兵士達がいた。
兵士達は馬を何頭も従えてて、その馬はある物を引いていた。
銀色のボディー、あの使われなくなったキャンピングトレーラーだ。
「こんばんは」
「ああ、こんばんは。こんな時間にどうしたの?」
「これを届けに来ましたの」
「これって……このトレーラーをか」
「はいですの」
「……届けにって、どういう事」
「これをあなた方に差し上げようと思いまして」
「え?」
驚く直人。
騒ぎを聞きつけて、キャンピングカーの中から全員がぞろぞろ出てきた。
「それをくれるってのか?」
「はい」
「なんでだ?」
「お爺様から聞いた話ですが、実はこの車の持ち主、こんな言葉を残してましたの。もしもまた、キャンピングカーを理解し、キャンピングカー愛を持つものが現われたらこれを使ってほしい。ですの」
「そんな事を……」
驚く直人。
どこの誰かは知らない、おそらくは同じように、キャンピングカーにのって異世界に転移してきた人間。
その人がのこした言葉。
それは、直人の心にすっと入ってきた。
キャンピングカー愛。
その言葉を聞いて、引き受けない訳にはいかなかった。
「わかった、ありがたく使わせてもらうよ」
「はいですの」
直人は運転席に乗り込んで、キャンピングカーを動かして、トレーラーに連結させた。
ケーブルもつないで、トレーラーに電気を通す。
その間、ソフィア達は早速トレーラーに乗り込んでいた。
「この前も見たが、いい部屋だなここ」
「これをわたしたちが使って良いって事は、ねえ、ちょっと色々いじってみようか。配置かえたり、内装かえたり」
「さんせー!」
ソフィア、ミミ、ティアの三人は高いテンションでそんな事を言い合った。
「ナオト、図面を書いてくれ」
ソフィアに呼ばれた直人。
「図面? そんなにいじるのか?」
「当然だろ。これをこのまま使うなんてあり得ない」
「そうよ、これで旅する以上、わたしたちにあわせた作りに作り替えていくのが道理ってものね」
「お兄ちゃんが前に言ってたヤツだね」
ちょっと驚いたが、すぐに笑顔になった。
直人はナユタに振り向いて、もう一度言った。
「これ、ありがたくもらうよ」
さっきとはちがう、さっきよりも確信に満ちた口調で。
キャンピングカー愛のある者に渡す、という元の持ち主の願い。
それを、間違いなく叶える事ができそうだった。
直人が持ち込んだキャンピングカー愛は、三人に確実に渡っている。
何より。
「マスター」
トレーラーの中から、パトリシアが生えてきた。
ソフィア、ミミ、ティア、パトリシア。
四人が待っている所に、笑顔で向かっていく直人。
その晩はまったりするだけではなく、夢を語り合って、大いに盛り上がった。
夢を受け継ぎ、更に増幅させた。
そんなキャンピングカーの旅は、明日も続く。




