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姫騎士とキャンピングカー  作者: 三木なずな
第三章

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姫騎士とキャンピングカー

 王宮の敷地内、子供達が遊んだトレーラーと横並びで止まっているキャンピングカー。


 直人一行が勢揃いで、こたつを囲んでまったりしていた。


「じゃあ、明日にはここをでるんだ」


 ティアが言った。こたつにはいって、背もたれに背中を預けてくつろいでいる。


「ああ、そろそろ次の所に行こうかなって」


「どこに行くのー?」


「北かな? というか北の方が寒いんだっけ」


 ソフィアとティア、この世界の住人かつ知識が豊富な二人に聞く。


 こたつの上に頬を載せて、だらっとしている姫騎士が答えた。


「その通り、北の方が大分寒いぞ」


「これから冬になるし、もうちょっと行けば雪も降ってきそうね」


 ティアも直人の質問に答えた。


「じゃあやっぱり北だな。せっかくの冬、やっぱり寒いところにいかないと」


「冬かあ。ねえお兄ちゃん、冬って何が面白いの?」


 ミミが瞳を輝かせながら直人に聞く。


「雪合戦とかスキーとかは当たり前だけど、雪だるまも作ってて楽しいぞ。ああ、坂道でそりを使うってすべるのも楽しいかもな」


「わお」


「室内だと、おでんとか、あえてアイスクリームもいいな。かき氷じゃなくてアイスクリームなのがみそだな」


「おでんというのはさっきも聞いたが」


 ソフィアが顔をあげて言ってきた。


「難しいと言ってなかったか直人」


「ああ、そう考えるとアイスも難しいかもな。というかできる事の方が少ないんだ」


「すくないの?」


「そう、いろいろ楽しいことはあるけど、大半が再現不可能なんだよな。日本じゃないと難しい事とか」


「例えば?」


「例えば……これとか」


 直人はテレビにつなぎっぱなしのゲーム機を指さした。


「これとかも、日本にいたらやれるゲームは無尽蔵にある。ああ、冬にミニ四駆もいいな」


「みによんく?」


「これくらいの小さいおもちゃの車で、電池で走る。直進しかできないけど、コースを作ってやればそのコースに沿って曲がれる。そのコースを雪で作るのがたのしいんだ」


「さっきわたしがやったみたいに?」


 ティアが言った。窓の外にレールに乗っかったキャンピングトレーラーが見える。


「そんなもんだ。違うのは何台も一緒に走らせて、レースする事だ」


「わん!」


 子犬がないた。


「お、わんこも勝負したいか?」


「わんわん」


「そかー。いっとくけどミニ四駆は速いぞ、おれのは特にモーターのコイルからまき直してるからな。冬じゃないとカバーが熱で溶けてしまう特殊仕様だ。はたしてわんこに追いつけるかな」


「くぅーん……わん!」


 子犬が直人にじゃれついてきた。


 その光景を、女達が温かい目で見守る。


「マスターも、かなりやんちゃしてたのですね」


「今までのやってきたことを考えれば想像はつく」


「しかし、ナオトの国って面白そうな所ね」


「機会があれば行ってみたいな」


 夜が更けていき、世間話で盛り上がる。


 直人が作ったジャガイモもポテトチップスと、これまた彼が作った天然炭酸のジュース

でわいわいやっている。


 ティアのリクエストで茶葉から作ったお酒もあり、それも加わって、ますます盛り上がる。


「だれかいますの?」


 車の外から声が聞こえてきた。


 ナユタの声だ。


 直人はこたつから出て、車の外に出た。


 するとそこにナユタと、兵士達がいた。


 兵士達は馬を何頭も従えてて、その馬はある物を引いていた。


 銀色のボディー、あの使われなくなったキャンピングトレーラーだ。


「こんばんは」


「ああ、こんばんは。こんな時間にどうしたの?」


「これを届けに来ましたの」


「これって……このトレーラーをか」


「はいですの」


「……届けにって、どういう事」


「これをあなた方に差し上げようと思いまして」


「え?」


 驚く直人。


 騒ぎを聞きつけて、キャンピングカーの中から全員がぞろぞろ出てきた。


「それをくれるってのか?」


「はい」


「なんでだ?」


「お爺様から聞いた話ですが、実はこの車の持ち主、こんな言葉を残してましたの。もしもまた、キャンピングカーを理解し、キャンピングカー愛を持つものが現われたらこれを使ってほしい。ですの」


「そんな事を……」


 驚く直人。


 どこの誰かは知らない、おそらくは同じように、キャンピングカーにのって異世界に転移してきた人間。


 その人がのこした言葉。


 それは、直人の心にすっと入ってきた。


 キャンピングカー愛。


 その言葉を聞いて、引き受けない訳にはいかなかった。


「わかった、ありがたく使わせてもらうよ」


「はいですの」


 直人は運転席に乗り込んで、キャンピングカーを動かして、トレーラーに連結させた。


 ケーブルもつないで、トレーラーに電気を通す。


 その間、ソフィア達は早速トレーラーに乗り込んでいた。


「この前も見たが、いい部屋だなここ」


「これをわたしたちが使って良いって事は、ねえ、ちょっと色々いじってみようか。配置かえたり、内装かえたり」


「さんせー!」


 ソフィア、ミミ、ティアの三人は高いテンションでそんな事を言い合った。


「ナオト、図面を書いてくれ」


 ソフィアに呼ばれた直人。


「図面? そんなにいじるのか?」


「当然だろ。これをこのまま使うなんてあり得ない」


「そうよ、これで旅する以上、わたしたちにあわせた作りに作り替えていくのが道理ってものね」


「お兄ちゃんが前に言ってたヤツだね」


 ちょっと驚いたが、すぐに笑顔になった。


 直人はナユタに振り向いて、もう一度言った。


「これ、ありがたくもらうよ」


 さっきとはちがう、さっきよりも確信に満ちた口調で。


 キャンピングカー愛のある者に渡す、という元の持ち主の願い。


 それを、間違いなく叶える事ができそうだった。


 直人が持ち込んだキャンピングカー愛は、三人に確実に渡っている。


 何より。


「マスター」


 トレーラーの中から、パトリシアが生えてきた。


 ソフィア、ミミ、ティア、パトリシア。


 四人が待っている所に、笑顔で向かっていく直人。


 その晩はまったりするだけではなく、夢を語り合って、大いに盛り上がった。


 夢を受け継ぎ、更に増幅させた。


 そんなキャンピングカーの旅は、明日も続く。

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