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姫騎士とキャンピングカー  作者: 三木なずな
第三章

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姫騎士と家族旅行のお父さん

 深夜、珍しく走っているキャンピングカー。

 ソフィアとミミが寝ていて、直人は運転席でハンドルを握っている。


「ふああああ」


 大きなあくびが出た。手で押さえて、目をこする。


「代わりましょうか」


 助手席に座っているティアが聞いてきた。

 長距離の夜間運転において代わりの運転手はありがたい事なのだが。


「あんた、運転なんて出来るのか?」

「出来ないわよ」


 ティアはあっさり言い放った。


「出来ないけど、浮かべて飛ばせばいいだけのことよ」

「却下だ」


 直人は即答した。


「キャンピングカーを浮かせて飛ばすなんて邪道だし、何より」

「何より?」

「ずっこけられたらかなわん」

「ず、ずっこけ――」


 顔を真っ赤にして反論しようとするティア。

 直人はシー、とジェスチャーして、そのまま頭上を指した。

 そこにはソフィア、何よりミミが寝ている。

 大声を出したら起こしてしまう、ティアはそれを理解して、不承不承ながらも口をつぐんだ。


「まあ大丈夫だ、結構昼寝したし、まわりに車とかがあるわけじゃないから」

「そう……あっ、すこし先に大きな岩があるわ。このままだと十秒後にぶつかるわ」

「うむ?」


 目を凝らして道の先をみる直人。ハイビームがうつしだす先は確かに大岩のような影がみえる。

 慎重に、車体を揺らさないようにハンドルを切って、岩を避けて更に進む。


「ありがとう」

「別にいいわ」

「そうだ、あそこの保温鍋の中に夜食を作っといたから」

「あら」


 ティアは目を輝かせて、キッチンに向かおうとした。


「ずっこけるなよ」

「うっ、わ、わかってるわ」


 ティアはそういって、ゆっくり、きわめてゆっくりと飛んでいった。

 ずっこけたら寝ている者達を起こしてしまう。そうしないために慎重に飛んでいる。

 直人はその姿に笑いをかみ殺す。

 まるで子供の枕元にプレゼントを置くお父さんサンタのような慎重さだ。

 助手席からキッチンまでの数メートル。その距離を実に三分くらいかけて往復した。

 戻ってきたティアはホッと一息ついて、それから目を輝かせる。

 持っているのはガラスのコップみたいな器、そこに鶏肉と椎茸をトッピングした茶碗蒸しがある。

 立ちこめる湯気とかぐわしい香り。

 魔人の顔が瞬時にほっこりした。


「頂きます」


 一緒に持ってきたスプーンを使い、茶碗蒸しを口に運ぶ。


「わぁ……優しい味」

「夜食にぴったりだろ」

「ええ、さすがナオトだわ。今からでもいいからわたしの料理人にならない? 世界の半分をあげるわよ」

「働きたくないでござる」


 ティアなら罠なしで、本当に世界の半分をくれそうだったが、直人は即答でそれを拒んだ。


「もうちょっとしたら道がでこぼこになるわよ」

「本当か? どれくらいなんだ?」

「とおれはするけど、かなり揺れるわね」

「どっちに迂回したらいい?」

「右の方がいいわ」


 深夜のキャンピングカー。ティアのナビで慎重に運転していった。

 キャンピングカーのナビが使えず、視界も極端に狭まる中、どういう理屈かわからないけど、離れた場所を見る(感じる?)事ができるティアにそれを頼んだのだ。


「かるてぃす」


 頭上から寝言が聞こえてくる。


「聞いたことある寝言だな」

「かるてぃす……だいほうかい」

「生ははじめてね。一体どんな夢を見てるのやら」

「案外ほのぼの系だったりして」

「どこかにつかまってわめき散らすのしか想像出来ないわ」

「中二病オークとかにか」

「カルティス大崩壊――くっ、殺せ!」


 ティアはソフィアの口調を真似ていった。

 意外と演技はな魔人である。「くっ、殺せ!」という台詞は大分気持ちが込められていた。

 そのおかしさに直人はくすくすと笑いをかみ殺した。

 ささやくような声で雑談しつつ、車体を揺らさないように慎重に走らせる。

 徐々に、東の空が白みはじめた。

 地平線から朝日が登って来る頃に、目的地に到着した。

 崖の上で、下は海。

 そんな場所だ。


「ついたぞー、ほら起きて」

「ふにゃ……」

「わーい!」


 相変わらずの寝起きの悪さを披露しているソフィアとは違って、ミミは最初からハイテンションで、半ば飛び降りるようにして降りてきた。


「なんだミミ、寝てなかったのか」

「途中からおきてた」

「なるほど」


 極力揺らさないようにしてたのにな、と直人は思ったが、子供のころ親の車に乗って深夜の高速を走ったときもこんな感じだった事を思い出す。

 深夜に出発して、寝て起きたら普段とは違う場所になっていた。到着までまだかかるが、興奮してとても寝てられなかった。

 そんな過去を思い出して、思わず口角に笑みが浮かぶ。


「じゃあおれは準備をするから、ミミはソフィアを起こして」

「うん!」


 大きく頷いて、ロフト部分に駆け上がった。


「お姉ちゃん! 起きて」

「ぐぇ!」


 上で何が起きてるのか気になったが、興奮してる子供のことだから大体の予想はつく。

 休日に起こされるお父さんのようなソフィアに同情しつつ、エンジンを止めて、キャンピングカーの貯蔵室に向かう。

 そこから釣り竿を取り出す。オークの村でもらってきた釣り竿だ。

 竿をチェックして、糸をチェックして、仕掛けをチェックする。

 それを、三本用意する。


「何が釣れるのかしら」

「鯛とかが釣れたらいいな。もし釣れたら今夜は鍋にしよう」

「鍋?」

「海鮮鍋の王様だ、鯛は。すごいうまいぞ」

「……ごくり」


 ティアは生唾を飲んだ。

 大した説明されていないのに、直人がいいと言っただけで生唾を飲む。

 もはやパプロフの犬の域だ。


「お兄ちゃん、お姉ちゃんが起きたよ」

「おはよう、ナオト」


 ソフィアがやってきた。鎧を身につけ、きりっとしている。


「じゃあ、はい」


 直人はそういって、ソフィア、ティア、ミミの三人に釣り竿を渡した。


「準備が出来たから、これで釣ってきて。つりあげたのを食材にするから、ボウズだったら切ない事になるからがんばれ」

「ナオトは釣らないのか?」


 三本の竿を見回しながら、ソフィアが聞く。


「おれは少し寝るわ。一晩中運転したから疲れた」

「そうか」

「お姉ちゃん、行こう!」


 ミミは釣り竿を持って、ソフィアの手を引っ張っていった。

 ティアも同じように釣り竿を持って、二人の後をついていく。

 岩場の端まで行った三人を確認してから、直人はキャンピングカーの中に入った。


「さて、もう一仕事」


 直人はすぐに布団に入らなかった。

 キッチンに立ち、料理をはじめる。

 昼くらいに差し入れするための料理を作った。


「わん」


 子犬も起き出して、直人の足元にやってきた。


「おはようわんこ、ほれ」


 野菜の切れ端を丁寧に水洗いして、子犬に与えた。

 子犬は大喜びでかぶりつく。


「うまいか、わんこ」

「わん!」

「そかそか」


 直人はしゃがんで、野菜を一生懸命にかじる子犬をなでなでした。

 無邪気に食べる姿、見ていてほっこりする。

 食べ終わった子犬が、物欲しそうに見上げてくる。


「朝はおしまい」

「くぅーん」


 子犬は一瞬切なげな顔をしたが、すぐにいつも通りにもどった。

 直人は立って、料理を作る。一通り下準備をすませて、和室の方に戻る。

 そこで座って、壁に背をもたせかける。

 昼間でちょっと仮眠しようか、と思って目を閉じる。

 感触がした。

 薄目を開ける。子犬がよじ登ってきて、腹の上に寝そべってきたのが見えた。

 だら、っとうつぶせで腹の上に寝そべる子犬。

 直人はクスリと笑って、また目を閉じた。

 子犬を優しく撫でる。外からミミのはしゃぐ声がうっすらと聞こえてくる。

 子犬のもふもふと、みんなの楽しそうな声に包まれながら。

 昼過ぎに合流するまで、直人は徹夜の運転の疲れをいやした。

連休になりました、おそらく世間のお父さん達は家族サービスに精を出されている頃でしょう。

長距離運転などなさった後は十分な休憩を取られて下さい。


新しい連載を始めました。

女神様とかお姫様とか、そういう高嶺の花を次々と奴隷にして、好き勝手に命令して従わせる話です。

こちらも良かったら是非よんでみて下さい


『異世界奴隷コレクター』

http://book1.adouzi.eu.org/n7200cw/

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