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姫騎士とキャンピングカー  作者: 三木なずな
第二章

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姫騎士とスイカ割り

 街が見えて、キャンピングカーが止まった。

 そこは以前に立ち寄った事のある街、子供達にたこ焼きを振る舞ったタルゴの街だ。


「そういえば、同じ街に二度来るのははじめてか?」

「ナオトと出会ってからだと……確かにそうだ」


 助手席に座るソフィアがうなずき、同意してくれた。

 これまでの旅はのんびりとしていながらも、先へ先へと進んでいた。来た道を引き返す、というのは初めての事だ。

 だから同じ街を二度訪れたのは、これがはじめてと言うことになる。

 それに一番興奮したのは、幼いミミだった。


「あー、ココちゃんとルークくんの街だ」


 六畳間和室から身を乗り出してきたミミがハイテンションで言った。目はきらきらしてて、とても興奮している様子だ。


「ココちゃんとルークくんって、前に一緒に遊んだ子?」

「うん!」

「そっか、じゃあみんなの所で遊んできなー。今日の移動はこれで終わりだから」

「うん、いってくる! わんちゃん、おいで」

「ワン!」


 ミミが子犬とともにキャンピングカーから駆け出した。

 微笑ましい光景だが、直後、更に微笑ましく感じる。

 フロントガラスの向こうに、前回、ミミと一緒に遊んだ子供達が村の方から駆け出してくるのが見えたからだ。

 子供達は互いに駆け寄って、ハイタッチをかわす。そのまわりを子犬がぐるぐる回っている。


「子供の頃さ」

「うん?」

「田舎にいるいとこたちと会うのが楽しみだったんだよな、すっごい仲良くて一緒に遊んでて楽しいんだけど、夏休みか冬休み、大体年に二回しかあえないんだ」

「ふむ」

「あの頃は携帯はおろか、メールとかもなかった時代だからなあ」

「けーたいもめえるもよくわからないが、わたくしも隣国にいるいとこと会うのは年に一度かだから、久しぶりに会えたときのその気持ちはわかる」

「隣国のいとこ?」

「そう、そっちの王室に叔母が嫁いでいて、だからあまりあえなかったのだ」

「あんたのはいちいちスケールが大きいんだよな」


 そう言いながらも、直人は微笑んだ。スケールは大きいけど、きっとソフィアが自分で言うとおり、同じ気持ちなんだろうと思った。


 彼らが話していると、ミミがトタタタと戻ってきて、運転席を見上げて聞いてきた。


「お兄ちゃん、なんか面白い遊びない?」

「面白い遊びか」

「うん! お兄ちゃんならいっぱい知ってるよね、楽しい遊び!」

「作り出すこともできるしな」


 ソフィアとミミがそんな事を言った。そこにあるのは他意のない純粋な信頼のみで、直人はくすぐったく感じながらも、心地よさを感じていた。


「そうだな……夏だし、シンプルにスイカ割りでもしようか」


 直人は運転席から六畳間和室に入った。

 そこに秘書のごとく控えているパトリシアがいて、パトリシアは既にスイカを用意していた。

 バスケットボール大の、ずっしりと実ったスイカ。

 直人はそれを受け取って、聞いた。


「まだあるのか?」

「はい、まだまだあります」

「そうか、それも用意しといて。人数的にこれ一個じゃ足りないだろうから」

「わかりました」


 パトリシアはそう言って、すぅ、と不思議空間の中に引っ込んでいった。

 直人はスイカを抱えて、表に出た。

 そこに子供達、女の子のココと男の子のルーク、そしてミミが集まってきた。

 更にキャンピングカーの中からソフィアが出てきて、屋根の上からティアがにょき、と顔をだしたきた。


「こんにちは! お兄ちゃん」

「この前の焼きたこは美味しかったです、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」


 ココとルーク、二人はぺこりと頭を下げた。子供らしい最後の「ます」にアクセントをつけた言い方に直人は和んだ。


「どういたしました。ちなみに焼きたこじゃなくたこ焼きだからね。焼きたこはまた違うから、今度また来た時につくってあげる」

「わーい!」

「ありがとー」

「お兄ちゃん、そのスイカをどうするの? 食べるの?」


 ミミが興味津々な目で聞いてきた。もちろんそれだけじゃないよね、という期待が見え隠れしている。

 直人は微笑んで、スイカを離れた所の地面に置いて、それから戻ってきた。

 そして、いつも通り準備のいいパトリシアから目隠しと木の棒を受け取って、目隠しをつけた。


「お兄ちゃん? どうして目を隠すの?」

「見てな、まず目隠してした人がぐるぐる回って……よし。みんな、スイカはどこだ? 上手く言葉でおれを誘導して」

「お兄ちゃんの左だよ」

「そこから二十歩先だ」

「行きすぎ、ちょっと戻って!」


 ソフィアと子供達の指示に従って、直人は目隠しした状態のままスイカに向かっていく。


「よーし、ココだな! ふん!」


 そして、思いっきり棒を振り下ろした。

 手応えはあった――ただし、スイカではない。

 手がしびれる、目隠しを取ると、棒は思いっきり石を打ち付けているのが見えた。

 スイカは真横に、二メートルも離れた所にあった。


「お兄ちゃんそこじゃないよ」

「へたくそだな、ナオト」

「はは、こんな風にスイカを割って楽しむゲーム。やってみるかミミ」

「うん!」


 直人はミミに目隠しと棒を渡した。

 ミミと子供達は飲み込みが早く、一回やって見せただけですぐに遊び方を理解した。

 子供達は順に目隠しをして、わいわい言い合って、スイカを割ろうとする。

 大いに盛り上がったが、スイカにかすりすらしなかった。


「みんな、だめね」


 ティアがそう言って、屋根から飛び降りた。

 ふわりと着地して、浮いてる彼女の顔は自信に満ちあふれていた。


「あんたもやってみるか?」

「ええ、一発で割ってみせるわ」

「はい、ティアちゃん」


 ミミは目隠しと棒をティアに渡した。

 ティアは目隠しをつけて、ぐるぐるとその場で回った。

 浮いてるためスムーズに回転するその姿に、直人はコマを連想した。

 しばらくして、回転を止めたティアはまっすぐスイカの方を向いていた。


「あとは、このまますすめば……」


 魔人故の超感覚だろうか、目隠しされててもティアははっきりとスイカの場所を認識していた。

 なんかずるいけど、まあそれなら割れるだろう――と直人が思った瞬間。


 ――ピターン!


 と、ティアは転んでしまった。盛大に、頭から地面に突っ込んでいった。

 瞬間、場の空気が固まってしまう。


「……」

「ち、ちがうの! これは目隠しされてるからなの」

「わかってるからずっこけ魔人」

「ずっこけ魔人じゃない!」

「ふっ、こんなことも出来ないとは。貸してみろ、わたくしがやる」

「ふん!」


 ティアは不機嫌そうに鼻を鳴らして、目隠しをソフィアに渡した。ソフィアは目隠しをして、ぐるぐると回って、止まった。

 ティアとは違って、スイカとは逆方向、キャンピングカーの方を向いていた。


「ソフィア、これ棒」

「大丈夫だナオト、わたしはこっちを使う」


 ソフィアは棒を受け取らず、炎髪をきらめかせて炎の槍を作り出した。

 そして、投擲の構えをとる。


「おいおい」

「割れればいいのだろう? 大丈夫、先端はつぶしてあるから、あたればちゃんと割れる」

「われればいいってもんじゃないけど……まいっか」


 直人は苦笑いするも、言葉とおりまあいっかとおもった。

 炎髪きらめかせる彼女に、子供達が目を輝かせているのが見えたからだ。


「すげえ、あのお姉ちゃんかっこいい!」

「でんせつの、ひめきし、って感じだね」

「うん! お姉ちゃんはすごい人だよ」


 ココとルークが目を輝かせ、ミミが誇らしげに胸を張った。

 それを見ていると、ソフィアを止めるという選択肢はなかった。

 子供達は大喜びでソフィアを応援した。


「がんばれお姉ちゃん」

「がんばれー」

「オゴオゴ♪」


 それがいけなかった。

 ミミの鳴き声にソフィアが「ひぃ」と反応して、炎の槍を投げてしまった。

 うねりをあげて飛んでいく炎の槍。それはキャンピングカーをかすめていった。

 車体すれすれ、1cmも離れていないそばを飛んでいった。

 ソフィアは目隠しととって、弁明する。


「す、すまんナオト、それにパトリシア。わざとじゃないんだ」

「ぷっ、無様ね」

「お前だけには言われたくないずっこけ魔人」

「ずっこけいうな! ふふん、目隠しを貸しなさい、今度はちゃんとできるわ」

「どうするんだ?」

「物をなげてもいいのでしょう、ならこれを投げつければ――」


 そう言って、ティアは手をかざして、ブラックホールのような物を出した。


「それだめ! ずっこけてキャンピングカーに投げつけるつもりだろあんた」

「むぅ、そんな事しないわよ。あっちに投げたらこたつまで巻き込むじゃないの」

「ずっこけるのが問題なんだ、とにかくダメ」


 直人はティアから目隠しを取り上げた。

 ティアはふてくされたが、無視する。


 そのあと、棒を使うとい大前提で直人がルールを設定し直して、全員でわいわい、スイカ割りを楽しんだのだった。

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