表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後宮の縁切り女官 ~悪縁を断つ救国の巫女は皇弟に溺愛される~  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/83

雪華、馬に乗る

 

 さて――以上で女官たちから聞いた話は、すべて朱翠影に報告し終わった。



「次は何を調査しますか?」


 朱翠影にそう尋ねられ、雪華は隣にいる彼の瞳を見返した。

 ありがとう朱翠影……気づきをくれたあなたに、私はお礼を言わなければならない。


「解決に至る道標みちしるべが見えました。あとはそれに従って進むだけです」


「おや、いつの間に?」


 闇の中、彼の声はなぜか楽しげに響いた。

 朱翠影は武官であり、本来は体を動かすのが得意なはずだが、知的な会話をしている時も、なんだか楽しそうにしている。

 彼が強い理由が、こういうところにも表れている気がした。武芸が達人の域に達している人は、思考も明朗である。


「先ほど朱殿が、助け舟を出してくださいましたので」


「私が、ですか?」


「あなたはおっしゃったでしょう――『消えた魏祥ぎしょう沶竟いけい出身だったことは、重要な情報だ』と」


 そして朱翠影はこうも言っていた――「過去、沶竟いけいで若い女性が何人か消えている件も、すべてが判明した時、綺麗に繋がるはずだ」と。

 今では雪華も同じことを確信している。

 話が通じたらしく、彼が同意してくれた。


「なるほど、それはおそらく最善の一手ですよ」


 ええ――我々は解決のため、そうする必要がある。


沶竟いけいに行きましょう。明日、ちます」


 * * *


 都・広安こうあんから東北部の沶竟いけいまでは、馬車で三日ほどの旅程である。

 今回は少しでも早く着きたかったので、雪華と朱翠影は一人ひとり乗馬して、身軽に移動することにした。

 とはいえ大仰な馬車移動と比べても、二、三刻ばかり短縮できるくらいだろうか。跳躍させる駆歩くほで移動すると、馬が疲れてしまって長時間の移動は無理なので、どのみちのんびりした常歩じょうほで進むことになるからだ。


 ちなみに雪華はひとりで馬に乗れる。こういったことも故郷で姐姐ジェジェに習わされたのだが、子供の頃に色々体験しておくと、いざという時に役に立つものだなと雪華はしみじみ思った。


 出発前に、


「――雪華殿、盤領袍ばんりょうほうがとても良く似合っています」


 朱翠影が端正な物腰でさらりと褒めてきたので、雪華は一瞬目を瞠った。


「そうですか? ありがとうございます」


 ……彼は非凡な人だからこそ、他人に対して寛容な気がするわ……雪華はこっそりとそんなことを考える。自身の劣等感をまぎららわすために相手をけなす必要がないので、言動がチクチクしていない。

 彼のように情緒が安定した人が相棒だと、すごく助かる。


「乗馬する時は、男装が一番ですね」


 雪華は自身の格好を見おろしてから、朱翠影に笑いかけた。

 盤領袍ばんりょうほうは元々、北に住む騎馬民族の衣装だった。丈長のしっかりした上衣に、下衣は脚が二股に分かれているを合わせ、実用的な長革靴を履く。身軽に動けるし、馬にもまたがりやすい。

 宿敵の騎馬民族が身に着けていた衣装であるが、良いものは良いということで、近年中央部にも爆発的に広まった。

 今では盤領袍ばんりょうほうが朝廷の官服にも採用されている。とはいえ少し前まではさすがに女性が着ることはなかった。けれど最近では性別関係なく、盤領袍ばんりょうほうを普段着にするのが流行している。

 女性が着る際は凹凸のある体型に合うように、襟を倒して着崩すことが多いようだ。馬に乗る時楽なので、雪華もそうした。


「では行きましょうか」


 雪華は白馬に乗り、朱翠影は黒馬に乗った。

 馬上で彼が、


「……あなたがいるだけで、日々が色あざやかだ」


 そんなふうにひとり呟きを漏らしたのだが、先を行く雪華がそれを聞くことはなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ