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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
115/164

115話 これがデートであることに気づいていない

「まあ魔法使いの祖に会えただけよかった的な」

「その割にはかなりの数を読むな」

「今まで経営よりだったからね。歴史は一からだよ」

「しかしこの量は……」

「あ、ディエゴ。あと王族の家系図詳しいの持ってきて」

「……」


 渋々彼は図書館の奥へ戻っていく。私は一席占領して両隣に高く本を積み上げている。建国史の中でも魔法使いの祖について詳しいのをディエゴにピックアップしてもらって。

 やっぱり知ってる人に来てもらったのは正解だった。本を選んでもらえるのは助かることこの上ない。


「ディエゴのおばあちゃんに報告という名のプレゼンが待ってるからな」

「しかしもう一族離散、呪いの脅威もないが」

「二度目行くと言ったからね」


 物証はないけど、最後の生き残り(仮)の発言はこっそり件の魔法で録音済み。祖であるあの老婆にはバレていただろうけどなにも言わないなら、それはよしということだ。


「ねえディエゴ」

「どうした?」

「ここ、民俗学の論文なんだけど」

「ああ、」


 この世界について最低限の知識しかない(しかも偏っている)私は基本的なものがない。なので片っ端から気になる所が出てくるわけなんだけど、そこをディエゴに訊いてみれば、それはもう丁寧に応えてくれる。

 そしてなんてことない様子で教えてくれるけど、今私が読んでる論文だの専門書籍だのはディエゴの年齢に見合っていない。こっちの世界で例えるなら、高校生が大学教授の研究を勉強してるようなもの。いや、そのぐらいならいけるかって思えなくもないけど、それにしたってディエゴも中々の規格外だ。


「その論文の内容なら、こちらも参考になる」

「はーい」

「伸ばすな」


 この博識ぶりは家柄的なものがあったのか、彼自身の意向なのかはわからないけど、今の私にはとても助かっているからよしだ。ひたすら必要なことを紙に書いて、後々家で纏めるとしよう。


「ディエゴは勉強好きなの?」

「いきなりどうした」

「雑談」


 隣で本を読むディエゴはちらりとこちらを見下ろした。

 さりげなく積み上げてた本をディエゴの方に置き直して私の隣を確保してる当たり、なかなか可愛い事してるよなと内心癒しを堪能する。顔に出てたら仕方ないけど、一応努力はしてる、うんしてる。たぶん大丈夫。


「嫌いではない」

「へえ」

「何故」

「よく知ってるなと思って」

「……そうか」


 再び書籍荒らしに没頭する。

 雑談してもいいけど、集中もしないといけない。今日一日のノルマは両側に積み上げた書籍の読破だ。手を止めるのは回避しないと。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


「チアキ」

「やだ、いらない」

「だめだ」


 お姑さんにご飯に強制連行された。昼ぐらい抜いたって大丈夫と言っても全く聞く耳を持たない。

 ディエゴったら図書館の職員さんに話をしにいって、本をそのまま短い時間なら外出してもいいという了承を得てきた。そしてこうして引きずられてご飯を食べに出ている。

 すごく集中してていい時だったから惜しかった。あれ完全にゾーン入ってた。そのぐらいノってた。そういう時は、ご飯ぐらい一・二食ぬいても大丈夫だよ。もしくは時間ずらす的な。


「君は向う見ずすぎる」

「いいとこだったんだよ」

「その身体はオリアーナのものだろう。少しは気を使え」

「は! そうだった……」


 オルネッラが私自身だったことがわかってから頭から抜けてたけど、私の身体は大事なオリアーナのものだ。無体を働くわけにはいかない。最善の健康生活を送って、健やかな身体を育まないと。


「食べる」

「ああ」


 王都は栄えているだけあって、食事をするところに困らない。適当な店に入れば、女子受けしそうな内装の軽食から重めまで扱う小さなカフェのような場所に辿り着いた。

 客層チェック、料理の価格チェックは欠かせない。流行はある程度把握すれば、事業に活かせるからだ。勿論、この店で一番人気のご飯を頼んで、そこから流行りも把握。うむ、美味しい。幸せ。


「どうした」

「美味しくて幸せ」

「さっきまでこの店を観察していたのに、どうした」


 変わり身早すぎということを言いたいらしい。

 しかし美味しいものを前にはそれは無理だよ。


「人は美味しさの前では完全屈服するしかないのです」

「平和だな」


 魔法使いの祖のおばあちゃんと同じこと言ってるけど気にしない。美味しく食べることはなにも悪くない。

 メインを終えてデザートまでついてくるセットで至れり尽くせり。一口サイズの丸っこいこれはフィナンシェに近いものかな。なるほど手軽感を出してテイクアウトも狙える。考えているな、この店。ああデザートまで美味しいとか神よ、勉強のご褒美ありがとうございます。


「チアキ」

「なに、んぐ」


口の中に何か放り込まれた。

食後のデザートを、ディエゴはそのまま自分の分を私に寄越してきた。


「食べないの?」

「……君が食べればいい」

「甘いものだめじゃないよね?」

「好きでも嫌いでもないが、今日は君にやる」

「ふうん? ありがと?」


 まあ前もチョコ食べたし、食べれるのだろうけど。メイン自体は男性にとって多くないだろうから、デザートまで食べた方がお腹持ちを考えればいいと思うのにな。


「君は抵抗ないんだな」

「何が?」

「いや、気にするな」


 何かもの言いたげなディエゴは言葉を飲み込んでいた。なんだ、食べたいの? 念の為きいたけど、そうじゃなかったらしい。


「一個だけがいいとか?」

「違う」


 一つ摘んで目の前に差し出しても全力で拒否された。

 このツンデレ、お昼ご飯はデレなしらしい。ツンだけでも充分私は楽しいから、何も問題はないけどね!

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