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おはよう

急展開です。

 

 いつも通り目覚めて日差しの差し込み具合から時刻を推測する。今は大体……7時ぐらいか。早起きだな。



「…………ッ」


 ベッドの上で身じろぎしたら変な違和感があった。


「なんか……痛かったような」


 おかしいと思い自分の手を見てみると血が出ていた。その血はシーツにも滲んでいてちょっと切り傷にしては多い出血量だ。


「これは………針か」


 手を見て原因を探る。おそらくはこの針が刺さり、そしてボクが動いた瞬間にズザァっと血が広がったぽい。


「でもなんか…‥熱い?」


 気づくと額には汗が浮かび息も荒くなっていた。ただの針ではなかったみたいだ。


「毒だとしたら……誰がどうやって」


 …………待てよ、ボクが今こんな状況っていうことはティアはどうなっているんだ?同じように襲撃されていたら……。


 急いで自室から出てティアの部屋に突撃する。


「ティア!」


 部屋に入って初めて思ったことは甘い匂いが充満していること。


 ティアの部屋はなんだかんだ初めて入った。けれど普通、こんな匂いはしないはずだ。


「毒か……。ティア…!」


 かなり強い毒であるため長時間部屋に滞在するのは望めなかった。特に確殺をいれるための毒だったとしたら。


「ティア!ティア!起きて!」


 何回もさすってティアを起こそうとする。けれどそれは意味を成さずティアは起きてくれなかった。


「まだ眠っているのか。それとも毒で…?いやそんなことはないはず。でもともかくボクが運ぶしか……」


 ティアの体の下に手を入れて部屋の外に運ぶ。この時点で体力を相当消費していたからもう限界だった。


「はぁ、はぁー。とりあえずは……外に……連れ出せた」


 案外ティアが重い。毒のせいで筋力が衰えているのもあるだろうがそれにしてもだな……。


「ちょっと……限界……だな………」


 それと共に、ボクの意識はプツリと途絶えてしまった。



※※※



「……ミア!ミア!」


 声が、聞こえる……。誰の……声だ?


「……?私は……なんだっけ」


「大丈夫?意識はあるの?」


「意識は……ある。けど……君は誰?」


「どんな冗談よ。ティア。ミーティアでしょ」


「冗談じゃないけど……君は?」


「嘘………。私だよ?ミーティア。ミアの親友だよ…?」


「ティア……。なんか……いたような気がするけど、私の記憶にはない気もする」


「ミア………。本当に覚えてないのね。本当に」


「う、うん」


「……ちょっと安静にしていて。そこから動かないで」


「分かりました」

 

「…………ッ!」


「なんで泣きそうなの?」


「いや、気にしないで。いいからそこで安静にしていて」



※※※



 私が起きると、隣には地面に横たわっているミアがいた。


「なんでこんな廊下で寝ていたんだろう。……ってうわ!なにこれ……血?」


 ミアの方から垂れてきていたのは赤い液体……すなわち血だ。ミアがこんな怪我しているのは珍しい。


「とりあえず起こさないと。ねえミア。起きてよ、朝だよ?」


「………」


 いくらさすっても、返事はなかった。


 不思議に思い、ミアの胸に耳を当てる。


ドクン、ドクンと、普段あるはずの音が聞こえてこなかった。


「脈が……止まっているの?」

 

 同じように手首に手を重ねるがここでも反応がなかった。


「まずい、まずいまずいよ!ミアの意識がない?一夜にして?あの魔王軍最強のミアが?」


「一体何が?」


 けど思考するより先に、体が動いていた。


「早く魔王城に運ばないと。ミアが……死んじゃう……!」


 気づくと、目には涙があった。初めて感じた、喪失感。何かを失ってしまったという。


 家から飛び出し背中に力を込めて羽を伸ばす。


 堕天使族特有の黒い羽。ミアが褒めてくれた、この羽を使ってミアを助ける。


「ミア……死なないで……。お願いだからさ……」


 空は、嫌なほどに明るかった。現在、ミアを抱えながら魔都の上空を飛んでおり、その視界には朝日が映る。


 綺麗な朝日だ。いつしかウーロンで見たような、綺麗な朝日。けれど、今は1人で見ている。一緒にみたもう1人の仲間は今、自分の腕の中で眠っていた。


 


 何分か飛び、魔王城の入り口に来た。


「ミーティア様!なぜあなた様が朝早く魔王城に?」


「いいから早く門を開けて!そうしないと、そうしないとミアが!」


 衛兵も私の腕の中にいる少女…ミアに気づいたのだろう。すぐに城門を開けてくれた。


「ありがとう。感謝するわ」


「いえ、早く医務室に……」


 門を開けてもらったため急いで魔王城の中へ入る。医務室は2階。すぐそこだ。



 

 なだれ込んだ医務室には、幸い誰もいなかった。病人も、看護士も。


「誰もいないのね……良くも悪くも」


 抱えていたミアをそっとベッドに横たわらせとりあえずは安心する。


「よかった……。とりあえずは運べた」


 ベッドで眠るミアは、いつものように眠っているような気がした。けれどその心臓は、動いていなかった。


「まずは人を呼ばないと……」


 そう言って目を離した時に、ミアが動いた。


「ミア!ミア!」


 よかった……意識が戻って…。


「……?私は……なんだっけ」


「大丈夫?意識はあるの?」


 優しく、いつもどおり声をかけた。


「意識は……ある。けど……君は誰?」


 けれど帰ってきた言葉の意味を、理解しかねていた。


「え?ミア、冗談でしょ?」


「冗談じゃないけど……君は?」


「嘘………。私だよ?ミーティア。ティアって呼んでたじゃん……!」


 自然と、胸に何かが込み上げてきた。


「ティア……。なんか……いたような気がするけど、私の記憶にはない気もする」


「ミア………。本当に覚えてないのね。本当に」


「う、うん」


「……ちょっと安静にしていて。そこから動かないで」


 まずは人を……。


「分かりました」

 

「…………ッ!」


 敬語……。分かりましただなんて…普段のミアなら使わないのに。


「なんで泣きそうなの?」


「いや、気にしないで。いいからそこで安静にしていて」


 そう言って、医務室を飛び出してしまった。胸に何か空虚なものを抱えながら。




前回の話の題名と、今回の話の題名は何か含みがありますよね。おやすみとおはよう。いつもの題名とあんまり変わらないように感じる方も居るとは思いますが、私からすればこの2話は違うように思います。

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