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戦い

「いよいよ明日が勇者討伐かー。ここまで長かったなー」


 今はティアとボクしか家にいないからぼやく。


「長かったね。もう魔王軍に入って何年って感じよ。でもこれで、ミアがやりたいことの半分ぐらいは達成されるんじゃない?」


「うーん、そうかも?」


 ボクがやりたいのは両親を殺すこと、妹を殺すこと、勇者を殺すこと、人類を絶滅させ平和を手にすること。その4つのうち1つは終わってる。けどなんか忘れてるような……。まあ思い出せないってことはそこまで重要なことではないのかもしれない。


「ティアはやりたいこととかあるの?」


「まあ…あるにはあるけど。今のミアにはあまり関係ないかなぁ」


「ふーん。ちょっと気になるけど今はいいや。あー、ほんっとうに勇者を殺すのが楽しみだよ。どうやって殺すかなー」


「ん、その顔。なんか持ってこうとしてるでしょ。いいけどそこまでかさばらないようにしてね」


「なんでわかるの。そんなに大きなものは持ってかないから大丈夫…なはず」


「そりゃあ何年も一緒に過ごしてたら顔を見れば何を考えてるかわかるよ。ミアだってそうじゃない?私が何考えてるかわかる時あるでしょ」


「確かに。経験則っていうのかな。やっぱり生き物って学ぶものなのか」


「それが進化につながってるわけだから。私たちがずっと戦争しているのもそう。元々は勇者なんてこの世界に存在しなかったらしいから」


「え、そうなの?」


「そうだよ。魔族と人族で境界線ができた時、その時に人間側が祭り上げた存在が勇者だもの。つまり人間が勝手に作った偶像。けどいつしか、この世界からその称号が与えられるようになって今に至るわ」


「じゃあ、その特別な存在を明日消すわけだ。明日のためにも、ボクはもう寝るね」


「わかった、おやすみ」



「はぁ、結局寝れなかったな」


 時刻は既に朝日が昇る直前。昨日は興奮のあまり寝る事ができなかった。いつぶりだろうか、この心踊る感覚は。


 というか急がないと戦場に勇者達が来てしまうので支度を素早くおわらせる。ボクはこういう時に限っては朝食を重めに食べないので適当に残り物を摘んでご飯は終わり。


「さてと、問題は持ち物か」


 服は…いつものでいいか。ボクのお気に入りである薄めの戦闘服を晒しを巻いた後に着る。やっぱこうじゃないと。


「まずフロレントでしょ?あとはこの幻覚魔法入りの瓶。あとは……これかな」


 そういってクローゼットの奥から取り出したのは鞭。


「まあこれは使うかわかんないけど勇者を痛めつける時に使えそうだし」


 他にもサブとしての短剣とか諸々。そんなに大荷物ではないから戦闘のときも大した邪魔にはならなさそう。


「よし。ボクは準備できた。ティアー」


「なにー?」


 あ、起きてるんだ。声的に既に着替えはできてるっぽい。


「ボクはもう行けるけどティアは準備できた?」


「できたよ。特別な任務とは言っても特別な持ち物があるわけじゃないから」


「おっけー。じゃあ行こっか」


 いつも通り鍵を閉めてミーナと待ち合わせているいつもの転移場所に向かった。




「ごめんね、ミーナ。待った?」


「いえ、私も今来たばかりです」


「よろしくね。ミーナちゃん。会うのはモンスーン以来かしら」


「そうですね。またご一緒させていただいて光栄です」


「まあそんなにここで話していてもなんだしもう移動しちゃおっか」



※※※



「ふぅ。ここが今回の戦場かぁ」


「聞いていた通り割と田舎の方だね」


「ですねー」

 

 村とかもあるにはあるけど結構山間の地域だ。勇者一行が現れるとしたらこっちの平原の方かなぁ。


 ぶっちゃけ見通しは場所によっては悪く、場所によっては良いみたいな感じ。位置取りが結構大事になりそうだね。まぁ、ボクがそんなに考えて戦闘ができるかわからないけど。


「時間的にはそろそろ来るはずよ。2人とも気を引き締めてね」


「はーい」


「わかりました」


 勇者達の狙いはおそらくはここらへん一帯の村を滅ぼすこと。根拠としてはこの地域で目ぼしいものといったらそれぐらいしかないし。あとはボクが人間側の村をたくさん滅ぼしたから?


「ああー、緊張してきました…」


「あはは、そんなに固くならなくていいよ。いつもの通りのパフォーマンスができれば勝てるから。ミーナ達に勇者のデバフがかからないようにボクも努力するし」


「が、頑張ります」


 ボクもそうは言ったものの割と緊張してる。というかどちらかというと早く痛めつけたくてしょうがない。どんな声で泣いてくれるかなぁ……!


ブワァァッ!


 ものすごい音と共に大きな魔力反応が8つ、この付近にいきなり現れた。そしてそれが表すことは1つ。


「……来たね」


 人間の最終兵器たる勇者がこの地に現れたことだ。


「よし。勇者達をお出迎えしようか、ボクら魔王軍の名にかけて」


「「了解」」


 そう言ってボクは幻覚魔法を自分自身にかけて勇者達の方へ赴いた。



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