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悪妻は退場しましたので  作者: 中村くらら


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22/22

22 ヒロインちゃんもあらわれた⁉

(リ……リリアナじゃないの!? うっわ、実物めちゃくちゃ可愛いんですけど~~~!)


 顔ちっちゃい! お目々ぱっちり! 唇ぷるぷる! お肌つるっつる! 髪の毛さらっさら!

 まさかのヒロインちゃん登場に、こんな状況にもかかわらず思わず目を輝かせてしまう。

 いやでもなんで、こんな所にリリアナが!?

 原作どおりなら、リリアナはアドルファスと同じ魔獣討伐部隊に所属しているはず。序盤は水魔法の使い手として、聖魔法に目覚めてからは聖女として、アドルファスと共に活躍するのだ。

 だけど原作には、リリアナがアドルファスと一緒に辺境に遠征する展開なんてなかったはずだけど……?


「リリアナ嬢……。彼女は聖女ロジー。先頃、聖魔法に目覚めたのだそうだ」

「まぁ、聖女……?」


 リリアナが両手で口を覆い、桃色の目を丸くする。


「本当のことなのですか? この方が聖魔法を使えるというのは……」

「にわかには信じられないのも無理はありません。ですが彼女は――」


 若様がアドルファスとリリアナに向けて説明を始めたその横で、私は別のことを考えていた。


(あー、そっか……考えてみたらアドルファスとリリアナって、ハッピーエンドを迎えたばかりの新婚夫婦なんだもんね……)


 何らかの事情で予定外にアドルファスがディウドに遠征することになり、片時も離れていたくない二人は遠征にも一緒にやって来た……そういうことなのだろう。

『黒狼将軍の最愛花』のアドルファスは、序盤は不器用でクールだが、ヒロインと両想いになってからは別人かと思うほどでろでろの甘々になるという、ギャップが美味しいキャラなのだ。ヒロインへの執着も激しかったから、遠征に連れて来るというのも全然不思議ではない。


(そっか、そっかぁ……)


 並んで立つアドルファスとリリアナをぼんやりと眺める。

 さすが原作カップル。誰がどう見てもお似合いの美男美女だ。

 関わりたくないと思っていたけど、推しカプをこの目で見られたのは眼福だったかもしれない。

 ツキンと胸が痛む気がするのは、原作カップルの麗しさに心臓を撃ち抜かれたからであって、他に理由なんて――。


「ロジー、聞いてる?」


 ハッと気づくと、若様が私の顔をのぞき込んでいた。


「あ、ごめんなさい、少しボーッとしてました……」


 へへ、と作り笑いを浮かべて見せたが、若様は心配そうに小さく眉を寄せた。


「聖魔法を実演して見せてほしいということなんだけど、明日の午前中の会議の時にお願いできるかな?」

「あ、はい。分かりました。……あの、若様。私、今日はもうこれで失礼してもいいでしょうか?」


 アドルファスに加えてリリアナまで登場してきて、さすがにキャパオーバーだ。一刻も早くリコリス亭に帰って、可愛いロウェルを抱っこして眠ってしまいたい。


「構わないよ、ロジー。元々そういう予定だったしね。うちの馬車で送らせよう」

「待ってくれ、もう少し――」

「申し訳ありません、デュアー将軍」


 アドルファスの言葉を遮ったのは若様だった。若様は私の腰を引き寄せ、アドルファスに笑顔で告げた。


「今日のところは彼女を帰してやってください。聖魔法を行使して疲れているし、それに、家で幼子が待っているものですから」

「子ども……?」


 アドルファスが目を見開く。

 じゃあ行こうかと言って、若様が私の腰を抱いたまま歩き出す。

 背中に痛いほどの視線を感じたけれど、私は振り返らなかった。




「強引に連れ出しちゃったけど、あれで良かったんだよね?」


 大広間から十分に離れ、周囲に人の気配がなくなってから、若様が口を開いた。


「はい、ありがとうございます」


 あれ以上あの場にいたら何かボロを出してしまいそうだったから、連れ出して貰えたのは正直助かった。

 腰に手を回す必要はなかったと思うけれど。

 あと、アドルファスの前で子どもの話題は出さないでほしかったですけどね!


「ロジー、これは質問ではなく確認なのだけど……ロウェルの父親はアドルファス・デュアー将軍だね?」


 私は小さく息をのむ。

 きっと若様は気づいただろうな、と思ってはいた。あれほど似ているのだ。否定したところで若様は信じないだろう。

 観念して頷くと、若様は「参ったなぁ」と苦笑いし、ぐしゃぐしゃと髪を乱した。


「貴族だろうとは思っていたけど、まさかこんな大物とはね……」

「あの、若様。このことは……」

「皆には秘密、だね?」

「……お願いします」

「それにあの反応を見るに、デュアー将軍は、ロウェルの存在を知らないんじゃないの?」

「その通りです」


 ふぅん、と呟き、若様はそれきり無言になる。

 しばらく何やら考えている様子だったが、やがて再び口を開いた。


「ロジー、言ってたよね。ずっとこのディウドの町で暮らしたいって。その気持ちに変わりはない?」

「それは、変わりませんけど……?」


 なぜ今、そんなことを尋ねるのだろう。

 私の答えを聞いた若様は、にっこりと笑みを浮かべた。


「前にも伝えたけど、ロジーの望みが叶うように協力するよ。こうなったからには計画を早めた方が良さそうだな。本当はもっと気長に待つつもりだったんだけど……どうやらそう悠長にはしていられないみたいだ」

「あの、計画って……?」


 何のことですかと尋ねると、若様は「近いうちにね」とだけ言ってウィンクした。

 ちょうど馬車乗り場に到着して話はそこまでとなり、私は男爵邸の馬車でリコリス邸に戻ったのだった。



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