1.追放理由に心当たりがありすぎる件
「リーセ、お前をこのパーティから追放する」
開口一番、椅子の上で寛ぐ僕に対して、冒険者パーティのリーダーであるルアード・トルネートは宣言した。
彼の見た目は一見する強面だが、パーティのまとめ役をこなすしっかりとした男だ。僕がこのパーティに誘われて入ったのは、ほんの一月前の話。
強面の彼とは違い、中性的な顔立ちをしていて、正直言ってしまえば冒険者としては頼りない見た目をしているかもしれない。それでも彼が僕を誘ったのは、きっと実力を評価してのことだったのだろう。
僕は決意に満ちた奴の表情を見ながら、小さく嘆息をする。
「どうしたんだい、突然。理由を聞いてもいいかな?」
「理由? 理由が分からないというのか?」
「あー、あれかな。この間の報酬、僕が多めに取ったことでも怒っている、とか?」
僕は一先ず、思いついたことを口走る。怒るとすれば、その件がバレたのだろう、と。
だが、それを聞いたルアードの反応は、僕の思っていたものと違った。
「なんだ、その話は……?」
「あっ」
――しまった、口を滑らせたようだ。見ると、ルアードの表情はみるみる険しくなっていく。
僕は笑いながら、手をひらひらと動かして誤魔化す。
「ごめんごめん、今のは冗談だよ、忘れてほしい。えーっと……あれかな? 君の防具売ったこと怒っているんだろう?」
「……それも初耳だが」
「えっ、本当? 気付いてなかったのか。じゃあ……すまないけれど、どの件のことかな?」
お金絡みの件については、心当たりがありすぎる。
報酬を多めにもらうなんてことはよくやっているし、パーティで共有管理しているお金を使わせてもらうことだってよくあった。
そのいずれも気付いていなかったのだとしたら――うん、正直、理由を聞かれても上げていくだけ墓穴を掘る気がしてきた。
そう思っていると、心底軽蔑するような目で、ルアードが言う。
「俺はただ、お前のパーティメンバーを顧みない戦い方について話したかっただけだ。注意しても改善されないから……それなのに、今の話はどういうことなんだ?」
――どうやら、僕の思い当たる節とは全く異なる話だったらしい。完全に、墓穴を掘ってしまったのは僕だった。
……こうなっては仕方ないか。
「ははっ、まあ気にすることはないよ。僕の戦い方が問題、だっけ? じゃあ、君の言う通りパーティから出ていくことにするよ」
「ちょ、ちょっと待て! 話を――」
「それじゃあね!」
僕は立ち上がり、勢いよく窓から飛び出していく。三階建ての建物から飛び降りるくらい楽勝だ。
パラパラと降り注ぐガラスと共に着地すると、宿泊客達が何事か、と言った様子で僕のことを見てくる。
「宿屋のおじさんに伝えておいてくれるかな。僕の宿泊代はルアードが払うって!」
僕はそう一言残して、その場から走り出した。
「おい、待て! リーセ! 勝手に使った金を返せー!」
「ははっ、そんなこと今さら言われてもね」
壊れた窓からルアードが僕を呼ぶ声が耳に届いたが――振り返ることはしない。
……これで、パーティを抜け出したのは何度目だろうか。
一人で活動していると、必ず僕の実力を見込んでパーティに勧誘してくる奴らがいる。
それはそうだ――僕自身、魔法については誰より優れているという自負がある。
少なくとも、そこらの生半可な冒険者よりは圧倒的に実力が上なのは事実だろう。
だが、そういう奴らに限って僕の本質は見ようとしない。
僕はただ、僕の実力に見合った報酬をもらっているだけだ。足りない分は、勝手に補わせてもらう――それが、僕がこの世界で生きるための考え方だった。
思い立ったので新作書き始めました。
追放されるのに思い当たる節が多いネタです。
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