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ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第2部 天才ゲーマー&プログラマー比企新斗(ひきにいと)編
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第97話 ガリ、お酢、トロ、のお寿司屋さんの慣例

 シェフと機械メイドに自由を奪われ身動きの取れないミルク。このまま無理やりヒッキーと結婚させられてしまうのか? 映画「卒業」や「ルパン三世カリオストロの城」では、式の最中に主人公が花嫁を奪いに来るシーンが有名だが、ともに40年以上前の作品。読者はついていけるのか? カリオストロのヒロインであるクラリスは結婚式の間じゅう、薬を盛られていて喋る事が出来ずに、「花嫁の沈黙を以て婚姻に同意する意思あり」とみなされてしまった。コミュ力の高いおしゃべりなミルクなら大丈夫なはずだ!

 強が慌てて口を挟む。

「な、なあみんな、ミルクを探すのが先決だ。(さや)の事は忘れようぜ」

 彼は鞘の話題には余り触れたくないのか?


 場面再び結婚式場。式の進行を務めるシスターと新郎新婦役のミルク&ヒッキー。その二人をガードするシェフと機械メイド。背後に十字架が高く飾られ、祭壇には聖書を片手にしたシスターが立ち、ヒッキーとミルクは祭壇前の祈りを捧げる台の上に並んでいる。


「立会人、参列者の方々には先程全館放送にて告知したよ。もうすぐ来るだろう」

 と宿の受付の老婆ことシスター。

「(よしっ! これで徐々に仲間が助けに来てくれるわ〜!)」


 ミルクの願いなどお構いなしにナレーションが入る。

「徐々(ジョジョ)では仲間の助けが間に合わない事も結構あるのであった」

「(泣きそうな顔で) そんなぁ〜私、電気スタンド使いなのに〜」


 シスターが式を進める。

「新郎、比企新斗。汝は神の御名に於いて、新婦森野ミルクを妻とし、健やかな時も病める時も、富める時も貧しき時も、喜びの時も悲しみの時も、妻を愛し、助け合い、死が二人を分かつまで誠実に人生を送る事を誓いますか?」

 離婚歴のある作者はこのシスターの言葉には思わず苦笑い。


 一方のヒッキーはシスターの言葉にすっかり舞い上がっている。

「待って下さいシスター。『富める時も貧しき時も』とおっしゃいましたが、僕に『貧しき時』なんて存在しない。これからeスポーツで勝って勝って勝ちまくってミルクさんと楽しい人生を歩んでいくんだ! 実家のゲームアプリ会社も僕が中心に盛り上げていけば、ダウンロードランキング一位なんて楽勝だ。僕は人生の勝ち組を歩んでいく男なんだ! いける、僕なら必ずいける! 絶対大丈夫だ! そう信じるしか無い!」


挿絵(By みてみん)

 ミルクはこれを聞いて唖然とする。

「(何なの、この根拠のない自信は〜? ウルトラ厨二病〜? 私、クッキーをあげ過ぎちゃった〜?)」

「続いて新婦、森野ミルク。汝は以下同文誓いますか?」

 ミルクは呆気に取られていて声も出ず、『以下同文』という言葉を聞き流す。すかさずシスターが畳み掛ける。


「ガリ、お酢、トロのお寿司屋さんの慣例に従い、今の沈黙を以って合意といたします」

「(えっ、以下同文って何よ! 卒業証書じゃないんだから! ヒッキーの余りに厨二病な発言に呆気に取られて、誓いの言葉をスルーしちゃったわ! がり、おす、とろのお寿司屋さんの慣例って何よ! これはオマージュなの? 元ネタが一九七九年のアニメ映画だから今の若い人にはわけがわからないわよ! 私が活躍する回ってパロディーやオマージュや仲間の助けが来ないとかお決まりのパターンが多過ぎない? 仲間(くのいち)の助けが来なくて失禁。仲間(弁護士節操)に見放されて竹槍で串刺し。……でもこの辺で結婚の誓いに異議を唱える琢磨さんが颯爽(さっそう)と助けに現れるはず。早く来て! 来るのよ! いつか来る、きっと来る! 来〜い!)」


 ミルクは神にすがる思いで念じる。……しかし何も起こらない。祈る神様を間違えているのか?

「(やっぱダメか。自分で何とかするしかないのね)」

 

「それではここで新郎新婦による誓いの口付けを」

 ミルクが挙手する。

「しつも〜ん」

「はい、森野ミルクさん。何ですか?」

「キスって唇と唇にするんですか〜?」

「キスにはたった今交わした誓いの言葉を永遠に封じ込める意味があるんだよ。唇を重ねなくては意味が無いのさ」


「私お腹すいた〜。ウェディングケーキ食べた〜い」

「この後誓いのキス、結婚誓約書のサイン、指輪の交換、賛美歌の合唱、などが済んだら、写真撮影の後でケーキなどを配って歓談してもらう段取りなんだけどね」

「先にケーキを食べようよ〜。誓いのキスは甘いクリームとイチゴの香りできっと素敵なものになるよ〜」


 ミルクのこの提案にヒッキーが惹かれる。

「いい余興ですね。それではウェディングケーキを!」

「やれやれ、人使いの荒いマスターだね」

 シスターはそう言って『staff only 』と書かれたドアから姿を消す。

 

 やがて隣室から二メートルはあろうかというウェディングケーキが台車に乗せられ運ばれてくる。運んでいるのはシスター。


「(うわ、大きくて美味しそうなケーキ! この世界でゲームオーバーになる前にせめてケーキをお腹いっぱいに食べて元をとってやるわ。とにかく時間を稼ぐのよ、森野ミルク。諦めちゃダメ!)」


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― 新着の感想 ―
ミルクちゃんがケーキでポヨンてなる未来が想像される幕引きでした。経済的な自信と気迫は大したものです。根拠なくともお金でパートナーを困らせたくない願望は男なら皆ありますものね。今回もとても面白かったです…
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