表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガーディアンデビルズ〜学園治安維持の会〜  作者: トミロン
第2部 天才ゲーマー&プログラマー比企新斗(ひきにいと)編
80/243

第80話 魔女裁判!

 浄化モードという名のミルクによる魔女裁判が始まる。

 ミルクがそう言った時、竹槍を持ったゴブリン一体が現れる。くのいちがソードプリンシパルを構える。

「まだいたの?」


挿絵(By みてみん)

「ゴブリン(コ)ス(プ)レイヤー、只今参上!」

 と背の高いゴブリンが言ってボロボロになったマスクを外す。


 中から琢磨の顔が現れる。防具に裂け目が目立ち、体にも傷が見られる。足取りもふらついている。

「琢磨さん!」

「琢磨! 大丈夫?」

「皆さんを探すのに苦労しました。このマスクで敵のゴブリンの大群に紛れて進み、やっと辿り着きました。携帯も繋がらなくて、最後はミルクちゃんの気配でここが分かりました」


「気配? 匂いじゃなくて?」

 と少し意地悪そうに言うくのいち。

 ミルクは内股で木の根元辺りに座りこんでいる。目には涙を浮かべている。それをチラッと見て琢磨が言う。

「失礼、ちょっとお水を飲ませて下さい。慌てて駆けつけたので、喉がカラカラで」

 琢磨はそう言って自分の水筒から水を飲み始める。彼は飲みながらさりげなくミルクに近づく。


「うわっと!」

 琢磨は手を滑らせて水筒をミルクの膝の上に落とす。ミルクは腰から下が水浸しになる。

「ごめんなさい、ミルクさん。手元がふらついてしまって。……僕は向こうに行っていますから装備を乾かして下さい」

「ありがとう、琢磨さん。嬉しい」


「強は大丈夫なの?」

 とくのいち。

「僕より少し遅れて到着します。ゴブリン達はあらかた退治したので無事だと思います」 

 琢磨はそう言うと、女性達が見えないところに姿を消す。


 くのいちは膝の辺りがびしょびしょになっているミルクを見て言う。

「あらーミルク、大丈夫〜? ま・る・で お漏らししちゃったみたいね?」

挿絵(By みてみん)

 ミルクが無表情になる。

「ヤバいぞお嬢」


 くのいちは地面に女の子座りしているミルクに近づき、頭を撫でようとする。しかし彼女の右手はミルクの頭を貫通してぐにゃりと埋まりこむ。

「謝っておけ、お嬢。手遅れかもしれないが」

「えっ?」

 ミルクは無表情のまま、低い声で唱える様に声を出す。

「Activate purification mode. ULTIMATE SORCERER!(浄化モード発動、アルティメットソーサラー究極の悪魔術師!)」


 くのいちはミルクの頭にめり込んだ右手を抜こうとするが更に手がジワジワとめり込むばかりである。今度は左手でミルクの肩を掴もうとするがやはり手応えが無く、底なし沼の様にめり込んでいく。


「この野郎!」

 くのいちは座り込んでいるミルクの顎をめがけて右の膝蹴りを出すが、やはり効果は無い。ミルクは無言、無表情のまま。両腕と右足の自由を失ったくのいちの表情に焦りと恐怖が窺える。


「くっ!」

 くのいちは左腰のソードプリンシパルの(つか)を口にくわえ、鞘から抜く。そのまま口にくわえた剣でミルクの顔面に斬りつける。しかし剣とくのいちの頭はミルクの体にめり込んでいく。


「お嬢、なかなかいい攻撃だ。だが諦めろ。上級魔女には逆らうな」

 くのいちはめり込んだミルクの体の中で剣を口から放し、必死に叫ぶ。

「ソードプリンシパル! 私も浄化モードにチェンジを!」

「ミルクの浄化モードが発動しちまった。お前の浄化モードへの変換はロックされている。第一、お前は今、浄化すべき対象を持ち合わせていない」


 ミルクの金のネックレスの十字架が生き物の様に浮かび上がり地面に突き刺さる。それは高さ二メートルくらいの金色の十字架に変型する。その(かたわら)でくのいちの体は全身がミルクの体に取り込まれて消失する。


 内股で座り込んでいたミルクはゆっくりと立ち上がる。そしてまるで恋人にでもするかの様に、十字架になまめかしく抱きつき脚と舌を絡める。


「(色っぽい声で)さあ、魔女裁判を始めましょう」

 十字架に抱きついていたミルクの体が霧のように消えていく。入れ替わりに十字架にはりつけにされたくのいちが霧から徐々に実体化する。

挿絵(By みてみん)

「えっ、どうしちゃったの、あたし?」


 (はりつけ)にされたくのいちの前に再び霧が舞い上がる。そこから徐々に実体化する姿。ミルクだ。露出の高いビキニの魔女的コスチュームをまとっている。最初にミルクが道具屋で琢磨に見せていたセクシー衣装だ。当然、全身には濡れた痕跡すら無くなっている。彼女は別人の様な低い声でくのいちに言う。


「あなたは人に命令や要求をすることは求められていない。求められるのは懺悔(ざんげ)。正直に心の内を告白なさい。『こう言った方が得だ』などと考えるのは重大な背徳行為とみなします」


 くのいちは自分の剣にすがりつく様に叫ぶ。

「ソードプリンシパル、何とかして!」

「お嬢、これはミルクの浄化モードだ。お前がミルクの指示に従っていれば傷つけられる事はない。目的はお前の魂の浄化だ」


ちなみに浄化モードは曲がった心をまっすぐに治す時にしか発動しない。第3部でチョコも浄化モードを試みたが、2回目は発動できなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ねじ曲がった心を浄化するには強制力しかないという人間の悲しい現実が、くのいちとミルクによって明らかとなる場面でした。強烈な反撃にくのいちがどうなってしまうのか。とても楽しみになる場面でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ