第70話 バトル前日のガイダンス。「やっぱお金」
明日のバトルの賞金を聞いて色めき立つくのいち、強、ミルク、琢磨。金は人の心を変えてしまうのか?
その日の放課後。ガーディアンデビルズの部室に集まって雑談をしている強、琢磨、ミルク、くのいちの四人。そこにヒッキーが入ってくる。
「わざわざお集まりいただいて申し訳ない、皆様方。明日のダイブについて説明をさせていただきたいのでござる」
「あたしのリサイタルのイベントは無いの? 結構練習したんだけど」
とくのいち。
「明日のダイブはロールプレイイング形式でござる。途中でモンスターを倒したりミッションをクリアしたりで、最後にラスボスを倒せばそなた達四人の勝利でござるよ」
「ヒッキーがラスボスなの〜?」
「僭越ながら拙者がラスボスでござる。正体は途中まで明かさない故、気を付けて進んで欲しいでござる」
「校長は報酬の詳細についてはお茶を濁していたけど、あたしの取り分はどうなってるの?」
「今回のクエストの報酬の総額は三百万円でござる」
「えっ、本当ですか比企君?」
「ヒッキーすご〜い」
「鴨がネギを背負って来たの?」
と一様に驚愕する琢磨、ミルク、くのいち。
一方の強は、
『チョコの裸の方が明日のダイブの三百万円よりも価値がある、っていう意味だったんだな。あくまでチョコの見解だが』
と妙に納得顔。
「って事はあたしが百五十万、残りの三人が五十万ずつね」
自分の取り分に関する計算は速い久野ジャイ子。
「報酬はクエストに最後まで残った人達で山分けにされては如何か?」
「僕はそれで異存ないですよ」
「私も〜」
「俺もそれでいいぜ」
「あたしが最後に一人でクリアすれば三百万円ね、わかったわ」
「ゲームバランスはどうなっているのですか? ザコキャラやラスボスの力配分とかは?」
「クエストは二つのパートから構成されているでござる。最初はフィールドでのクエストでござる。登場するのはザコキャラのみで、能力値の合計はそなた達四人の合計の五分の一くらいでござる。通常の装備ならばここでゲームオーバーになる事は無いでござるよ」
「二つ目のクエストはどうなんだ、ヒッキー?」
「二つ目のクエストは屋内が舞台で、拙者と三人の中ボスが相手をするでござる。能力値の合計はそなた達四人の合計の五分の三くらいでござる」
「それじゃあ楽勝じゃない?」
とくのいち。一方の琢磨はそこまで楽天家ではない。
「チートや特殊能力は無いのですか?」
「そなた達にダメージを与える様な特殊能力はござらん。チートも、そなた達が用いなければ拙者も使わない、それでよろしいか?」
「俺はそれで構わないぜ」
と強。
琢磨はまだ少し疑っている。
「でも比企君、君はこれだけ僕達に有利な条件を提示して、三百万円もの報酬を与えようとしている。君にとって何のメリットがあるのですか?」
「今回のダイブは拙者のゲーム構成能力も試されているのでござるよ。それがeスポーツ部設立の可否に関わってくるのでござる。それをクリアするあなた方にもしかるべき作法でのクリアを目指して欲しいのでござる」
「無理ゲーの設定でヒッキーが勝っても〜意味が無いって事だよね〜」
「騎士道精神ってわけだな。気に入ったぜ」
と強。
「最後に笑うのはあたし」
とくのいち。騎士道精神よりもクリアを最優先させる意図が見え隠れする。
「ダイブは明日の朝十時から最長二時間でござる。ダイブの世界では最長七十二時間に感じられるので皆さん、よろしくお願い申し上げる」
深々と頭を下げるヒッキー。それに軽く挨拶をして部室を出る強、琢磨、くのいち。
かたやミルクとヒッキーは部室にしばし残る。
「明日はちゃんと上手くやってくれるよね〜?」
とヒッキーに囁くミルク。
「勿論でござるよミルク殿。ミルク殿がピンチになった時に琢磨殿が助けに向かう様なセッティングをすればいいのでござるな。心配は無用でござる。貴女が危ない目に遭う事も無く、ドラマチックなシーンになる様に用意しておくでござるよ」
ミルクは琢磨がこの頃何となくそっけない感じになっている事に不満を抱いていた。それで強にそれとなく粉をかけるような態度を取っていたのだ。琢磨がやきもちでも焼いてくれないかと。明日のダイブで琢磨との関係が一層深まる事をミルクは期待していた。
チョコは第3部で一肌脱いでくれるはずだ!
ミルクに勝つには露出で勝負するしか無い!




