第67話 ヒッキーを倒す気満々なくのいち
前回のダイブではヒッキーを倒し損ねた。今度は逃さない。くのいちの目が怪しく光る。
『今回の出来事はあたしには関係が無さそう』と、話半分に聞いていたくのいちだったが、いきなり校長から自分の名前が出て少し驚く。
「あたしもこのちっちゃな男の子と戦うの? この前はあんたが邪魔したせいでぶった斬れなかったんだけど」
そう言って校長をちょっと睨むくのいち。ヒッキーをリサイタルに強制連行するのを邪魔されたのがそんなに悔しかったのか?
ダイブの世界でくのいちが操る剣はソードプリンシパル。実は校長がリアルの世界からその剣に指令を出しているのだ。前回のヒッキーとのダイブでのバトルで、くのいちがとどめを刺そうとしたら、ソードプリンシパルは肝心なところでバックれて飛んで行ってしまったのだ。
「まあいいんじゃないか、くのいち。ヒッキーはお前の獲物だ」
と強。
「くのいちの物はくのいちの物、ヒッキーの物はくのいちの物だよね」
とチョコ。
「放課後のリサイタル〜、全員強制参加だよね〜?」
とミルク。
「あんた達、あたしをなんだと思っているのよ!」
「○ャイアンよね」
「ジャ○イアンだろ」
「ジャイア〜○」
「著作権的に問題が無ければ、僕もジ○イアンに一票。あ、でも伏せ字の部分をみんなが変えちゃうと、みんなに分かっちゃいますよね」
と琢磨。
くのいち、突然大声で歌い出す。今回は結構上手に歌う。
「♫あ〜たしはくのいち〜、い〜じめっ子〜」
「……ってそんなわけないでしょーっ!」
突然、『♫パラリラパリラ、パラリラパリラ、パララパッパッパーン』とファミコンの安っぽいファンファーレが鳴り響く。
ナレーションが入る。
「くのいちのノリツッコミポイントがMAXに達し、ノリツッコミマスターの称号を獲得した!」
くす玉が割れ拍手とクラッカーの音。歓声が沸き上がり紙テープや鳩が舞う。強はスポットライトを浴びているくのいちに歩み寄り、花束を渡す。
「くのいち、ノリツッコミマスターへの昇格おめでとう。お前ならいつかやれると信じていたぞ」
ミルクもくのいちに花束を渡す。
「くのちゃんも〜これで立派な女の子だね〜。夕飯は〜お赤飯を炊いて〜お祝いしよ〜」
チョコは手作りの大きな手裏剣型のクッションをくのいちに渡す。
「くのいち、いじめっ子の歌上手になったね」
「ありがと。この日のために毎晩一人カラオケに通った甲斐があったわ」
琢磨はくのいちにマイクを渡す。
「ここで一言スピーチをお願いします」
くのいちはスポットライトを浴びながら満面の笑みを浮かべて周りに一礼する。
「あっ、あー。(キーン、とハウリングの音)……みんな、今日はあたしのために集まってくれてありがとう。あたしは北関東のちゅくば市民でお笑いのレベルは関西の高校生にはとても及ばないけど、このノリツッコミマスターの称号をきっかけに、より一層お笑いの道に精進していこうと思います。この一歩は私にとっては小さな一歩ですが、ちゅくば市民にとっては大きな一歩なのです!」
一同、拍手喝采。
「……っていつまでやらせるのよ〜!!」
再びファンファーレが鳴る。
「ノリツッコミの重ね技か。このスキルには栃木県民はもはやついてこられないだろうな」
と強。




