第65話 16文キックは現在の貨幣価値で500円
シャープ兄弟もブッチャーもタイガージェットシンもスタンハンセンも、いくら強くても雇い主には敵わないのだ。
16文キックはジャイアント馬場の不自然な必殺技。馬場の靴のサイズは32cmであったそう。16文だと38cm以上なので、かなり盛っていた。くのいちが38文(90cm)バストと言っている様なものですね。
満身創痍のくう子を見てジャイアントニオ比企が言う。
「分かったでござる。拙者が兼尾司令と闘えばいいのでござるな。……喰らえ、一万円キーック!」
彼はキックといっても左足を上げただけで足は兼尾指令には当たらない。
しかし兼尾指令は自分からジャイアントニオ比企の振り上げた足の裏に突進してぶつかり、倒れる。
「うわあーっ! 体が吸い込まれる様に一万円キックに当たってしまったあーっ! ばたんきゅう!」
「兼尾司令、大丈夫ですか!」
包帯姿のくう子がストレッチャーから降り、駆け寄る。
倒れた兼尾の右手には一万円札が握られている。これが一万円キックの威力である。
くう子はどさくさに紛れて、倒れている兼尾からその一万円札を奪い取るが、兼尾はすぐさまそれを取り返す。
「兼尾司令、ひとついいですか?」
「何だね、満身創痍で口もきけないくう子部員?」
「私の目には、司令がヒッキーの足に自分からぶつかって行った様に見えたのですが」
「……それはくう子部員の目の錯覚だ。でなければ単なる大人の事情だ」
「大人の情事?」
とビデオを観ていたミルクが呟く。
(教養の無駄遣いでミルクに対抗する琢磨)
校長はそれを聞こえないふりをする。ビデオは続く。
「ぶっちゃけ、我々はこのビデオ制作の為にヒッキーに雇われているのだ」
「でもヒッキーは日本人なら誰でも知っている強いプロレスラーなんでしょ? 普通に闘えば兼尾君に勝つはずよね?」
「私は雇い主であるヒッキーの一万円キックに全力で向かって行って、倒れたのだ」
「兼尾司令の物言いは何か奥歯に物が挟まっています」
「奥歯にカラスミが挟まっているのは君の方じゃないのか、くう子部員。君がさっき食べたおにぎりも、雇い主からの報酬が無ければただの塩結びになっていたのだぞ」
「なんか大人の世界って汚れていますね。私、大人の階段なんか登りたくありません」
「階段を登らずしてどうするのだ」
「階段を下って、下って、地下アイドルを目指します!」
「アポッ、アポッ、ダァーッ!」
と突然雄叫びをあげるヒッキー。
「大人の階段を下るのならば、天体観測などやっている場合ではないのでござる!」




