第61話 ヒッキーのユーキューブビデオ
eスポーツ部設立を目指し、ハンガーストライキや部員募集をしていたヒッキー。裏ではプロモーションビデオも制作してサイトに投稿していた。
「ヒッキーは校門のそばでeスポーツ部員を募集していたのは俺も知っているけど、プロモーションビデオも作っていたのか」
と強。
「僕もそのユーキューブビデオ見ました。面白かったので、チャンネル登録といいねボタンを押しちゃいました」
と琢磨。
「とにかく皆も動画を見てくれ。我が校の格好のプロモーションになったのか、ただの悪目立ちなのか評価が分かれるところだが……脚本を書いたのは二年の比企新斗君だ。撮影は税所千代子君だ」
校長はプロジェクターにビデオ映像を流す。
『ゔおいげ学園天文部 活動紹介……なーんちゃって』というタイトルが映し出される。
真夜中。人気の無い河川敷。川辺に天体望遠鏡をセットして星を観察している魚池高校の男子生徒。彼の名は兼尾貢。一応カノジョ持ちだが彼女の沢山くう子の餌付けに高額の食費を要し、バイトに追われながら赤貧に喘いでいる。以前鉄研の部室に連れ込まれ、部長にカツアゲされそうになりくのいちに助けられた事がある。
カノジョの沢山くう子は金の尽きかけた兼尾に一時は愛想を尽かし鉄研部員となり、そこで一日三回駅弁をたかっていた。ちょうど駅弁も食べ飽きてきた昨今、チョコからこの自主制作ビデオへの出演を打診され、兼尾と共に出演する事になったらしい。
兼尾は人造人間のコスプレをしている。片眼鏡で顔にロボットの様なメイクが施されており、左腕も機械の腕になっている。ロングコートを着ている。彼が腕時計を覗くと午前二時を指している。
そこに自転車に乗って沢山くう子が現れる。コスプレ同好会にも所属している彼女はセクシーな女船員のコスプレをしている。頭には船乗りの大きな帽子。露出度の高いビキニスタイル。
割と肉づきも良く、鉄研部長には、
『くう子が三万円ならくのいちは九百一円』
と評され、哀れ部長はくのいちの手裏剣の餌食となった経緯がある。
「銀河艦隊船員沢山くう子、ただ今到着致しました!」
と人造人間の兼尾貢に敬礼するくう子。
「うむ、待っておったぞ沢山部員」
「ごめん、待った? 親が寝静まるのを待ってたら遅くなっちゃって」
「ちょうどいいタイミングだ。沢山くう子部員。銀河艦隊の船員としてご両親との折り合いをつけるのも大切な任務と察する」
「兼尾部長のそのコスプレは何ですか?」
「吾輩は銀河艦隊で宇宙を旅して、この奇怪な体をリボ払いで手に入れてきたのだ」
兼尾はそう言うと左手の機械の腕をカチカチと鳴らす。
「奇怪な体? 機械のカラダをタダで手に入れたんじゃないんですか?」
「奇怪な体だ。しかもちゃんと料金はカードで払った。これだけ設定が違えば、銀河鉄道の著作権的には何の問題も無い。高校生はまだカードを作れないが、これはフィクションだから大丈夫だ」
「元ネタが一九七八年のアニメだから昔過ぎて誰もクレームをつけないんじゃないんですか、部長」
ちなみに銀河鉄道アニメの元ネタでは、主人公が『機械の体をタダでくれる星に行く』というストーリーだが、ここでは『奇怪な体をリボ払いで手に入れた』という似ても似つかない設定(笑)になっている。これなら槇原敬之さんの様に盗作疑惑をかけられ訴えられることも無いだろう。
「油断は禁物だ。最近リメイクとかあるから若い視聴者も気づいてしまうかも知れぬ」
沢山くう子のAIイラストアップしました。「みてみん」のサイトの「ガーディアンデビルズ」で検索していただけると幸いです。




