第56話 (ここより第2部本編) 天才ゲーマー&プログラマー、比企新斗
第2部本編の主役はヒッキーこと比企新斗。彼がガーディアンデビルズに戦いを挑む。
数日後の放課後。下駄箱と校門の間の道。下校途中の生徒が十人ほど歩いている。その傍で、
『eスポーツメンバー募集』
『ハンスト決行中』
と書かれたのぼりやポスターを掲げて立っている一人の生徒。のぼりの隣には電光掲示板に、
『50kg』
の数字。他の生徒達は彼をちょっと避ける様にして通り過ぎて行く。
彼の名前は比企新斗。通称ヒッキー。身長百五十八センチと小柄な体型。以前は小太りだったが補習室でのミルクとの特訓でシェイプアップして、ちょっと可愛らしい感じになった二年生。彼が下校中の学生達に向けて声を出す。
「諸君! 拙者は現在eスポーツ部設立を目指してメンバー募集中の二年の比企新人でござる。来たる北関東ブロック大会に向け、共に拙者と熱き青春の汗を分かつメンバーを募集したい。経験は問わない!」
ポスターには彼の自作のイラストが描かれている。格闘ゲームのイラストや彼自身の似顔絵。絵心は多少はありそうである。
演説中の彼の頭に上からボスンと学生カバンが叩きつけられる。男子生徒四人が彼を取り囲む。
「よう、比企。eスポに熱き青春の汗もへったくれもねえだろうが」
「お前達はeスポーツを悪用して世界征服を企む秘密結社でござるな! 今の頭上への一撃で拙者の身長が更に一センチ縮んだでござるぞ!」
「身長は前からじゃね? 前にも言ったけど、eスポの北関東大会、辞退してくんね? お前が出場するとオレ達が全国大会行けねえかもしれねえんだ」
「その様な脅しに屈服する拙者ではない!」
「なんだと?やるのか?」
「お前達には拙者の必殺技をお見舞いするしか無いようでござるな」
比企新人は右足を軸にして左足を九十度上げたまま回転させる。
「見よ! 奥義、グルグル回転蹴りキックでござる!」
比企は七、八回転したところで目が回って倒れる。呆れる男子生徒達。
「あ、勝手に自滅してコケた」
「貴様ら! 拙者にめまいの術をかけたな! 卑怯者め! 正々堂々と戦え! 騎士道精神という言葉を知らんのか!」
「なんかわかんねえけどデコピンしちゃえ!」
「じゃあ俺は背中にチョップ」
「俺は手首にしっぺしちゃうぞ」
「じゃあ俺は電気アンマをかけるしか方法がねえな」
男子生徒達四人から攻撃を受ける比企。
それを十メートルくらい離れた場所から携帯で撮影しているユニホーム姿のチョコ。傍には剛力強が立っていて成り行きを見守っている。
「そろそろ助けに行ってあげなくていいの?」
「えっ、これから比企君が次の必殺技を出すんじゃないのか?」
「その可能性もゼロじゃないけど、そしたらあんたの報酬がなくなるよ」
「変身ヒーローは最初痛めつけられてから必殺技を出して勝つんだよな。あ〜なんかワクワクしてきた。いけ、比企君!」
「もう必殺技奥義『グルグル回転蹴りキック』が出ちゃったじゃないの。ほら、あんたの出番よ」
チョコは携帯で『白鳥の湖』の音楽を流す。強はそれに合わせて自然にバレエを踊り出す。
「音楽が流れると勝手に体が動いてしまうダス〜」
「あんたは「いな○っぺ大将」かあっ!」
男子生徒達四人から攻撃を受けている比企の前にピルエット(バレエの回転)をしながら強が現れる。
クルクルとつま先で回転してピタッとポーズを決める強。足のポジションも綺麗に決まっている。
「比企君、君の『グルグル回転蹴りキック』には問題がある」
「ああ、そなたはガーディアンデビルズのくのいちじゃないほう! 助けが遅いから某スタンド使いのアニメかと思ったでござる。ちなみに拙者はヒッキーと呼んでいただきたい」
「『くのいちじゃないほう』って……くのいちがピン芸人になったら俺は失業しちまいそうだな」




