第53話 ミルクの呪術結界
くのいちの弱点を巧みに突いて追撃をかわすミルク。これで脳みそがちゃんと頭に格納されていれば無敵だ!
尚も逃走を続ける二人。遥か後方からくのいちが近づいて来る。
「強君はこういうお店は初めて〜?」
「何の店だ? これ?」
二人は『同伴喫茶アモーレ』と書かれた店内に入る。
ナレーションが入る。
「説明しよう。同伴喫茶とはカップル専用の喫茶店である。作者が若い頃には結構存在したのであった。入った事無いけど。……っていうか高校時代友達の女子を誘ったら断わられた。のであった」
くのいち、同伴喫茶アモーレの前で立ちつくし小声で独白。
「同伴喫茶? 保護者と一緒じゃないと入れないの? ちくしょうめ!」
「保護者同伴でも入れません」
とのナレーションが流れる。
同伴喫茶店の裏側。トイレの小さな窓から、まずミルクが体をよじらせて出て来る。続いて強も窓から路地裏の屋外へ脱出する。
「プファ〜。窓が小さいからやっとだね〜」
「お前、胸のところでつかえてなかったか?」
「強君の下半身は〜何の抵抗もなく通過できたね〜」
強、半分泣きそうな表情になる。
「冗談よ〜。落ち込まないで〜」
二人は今度はランジェリーショップに入り、物陰に身を潜める。くのいちは店の前をそそくさと通り過ぎる。
「このお店には私が結界を張ってあるから敵は近づけないよ〜」
「結界か。ミルクって呪術も使えるんだ、凄えな」
と冗談混じりに笑う強。
店には『E〜Gカップ専門店』と書かれている。
「強君〜はちまきを貸して〜」
「いいけど何に使うんだ?」
ミルクははちまきを受け取り、目隠しをする様に自分の頭に巻き付ける。
「今度強君にも呪術を教えてあげるよ〜」
得意満面のミルク。
強が店を出ようとした時、『あいたたっ!』とミルクの声。
振り向くとミルクが目隠しをしたまま店の棚にぶつかって尻餅をついている。
「ミルク、大丈夫か?」
「私が見た大ヒットアニメだと〜、目隠ししていてもちゃんと見えるはずなのに〜」
「良い子は大ヒットアニメのマネなんかしちゃダメだ。目隠しを外せ」
「はにゃ〜」
この店の中ではミルクの脳みそは頭の中から自慢の胸に遠征をしてしまう様である。




